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加藤シゲアキ『オルタネート』
この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2022.09.03 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/
NEWSの加藤シゲアキさんが小説を書かれていることは知っていましたが、これまで全く縁がないままでした。第164回直木賞の候補となり、2021年本屋大賞にノミネートされた『オルタネート』が、『ダ・ヴィンチ』BOOK OF THE YEAR 2021 小説ランキング1位・第8回高校生直木賞受賞・第42回吉川英治文学新人賞受賞の3冠を達成した作品であると知り手に取ってみました。
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった高校生活を舞台に、様々なコンプレックスやトラウマを抱える登場人物達が交差していく青春小説です。オルタネートというアプリを使う者、使わない者、使えない者、それぞれが背負う背景が丁寧に書き込まれていて、中心となる3人の人物の物語が別々に進行していくので、ストーリーも重層的となり、面白く読み進めました。何よりも驚いたのは、クライマックスにむかうボルテージの上がり方で、後半はページをめくる手が止まりませんでした。
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一元的でないストーリー展開はもちろん、高校生の「可能性」をキーワードに、見なければならないものを見、何らかの選択をしていく彼らの姿が描かれているところを面白く読みました。そしてまた、彼らが自ら選択していく中で、図らずもそれぞれの「オルタネート」と関わり方が反対の方向に動いていくという展開も興味深く感じました。
「敵か味方か分からないオルタネート」というアプリの不安定さは、「一緒に育てると良い影響を与える組み合わせの植物」同士のような関係を見いだそうとする青春時代そのものであり、それゆえに、彼らのまっすぐな純粋さが際立ってきて、高校時代という限られた時間を眩しく懐かしく感じた小説でした。