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花鳴り【モノカキワークス】
2020年7月29日 13:28
私は書斎で本に埋もれていた。茶色く艶々した床張りのそこに四肢を投げ出して。かび臭いにおいと埃っぽさと紙に染み込んだたくさんの想いたちが私をぐうっと包んでいて、それはそれでありなのかもしれないけれど、すこしだけ視界は霞みがかっているように感じた。電気のついていない薄暗く狭いこの洋間が最後に窓をあけられたのはいつだったっけとふと思考を巡らせる。ぼんやりと卓上のすずらん型のランプに目を留め、それから視