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名作「UNTOUCHABLE~最強の二人~」

見れば見るほど面白さが分かってくる。車中ではつねにこの作品を鑑賞しており、BGMのようにセリフまでしっかり頭に入ってしまった。なかなかこのような映画に出会えることが無いので個人的な印象をまとめてみました。あくまでも私見です。

 もしこの映画の特徴を端的に述べよと言われたら「対比」と「融合」の表現だと答えます。

1つ目の「対比」。

「白人」と「黒人」、「貧困」と「富裕」、「暴力性」と「穏やかさ」、「秩序」と「混沌」、「男性」と「女性」、「健常者」と「障がい者」などなど、社会問題とも深い関連性を持たせながら両者の対立を描きます。

 対比を見事に描き出すのが主人公のドリスとフィリップ。フィリップは多くの使用人を抱えながら生活する肢体不自由の大富豪。病気の妻を亡くし、「人への愛」を知る一方で、大切な人を失ったことで人生にどこか諦めややるせなさを感じながら生きている。

 もう一人の主役であるドリスは低所得層の集まる団地暮らし。夜もふらふらと仲間とつるんで親・兄妹を顧みない生活をしていた。刹那的な楽しさや快楽を求めるが、豊かな感情表現とストレートな物言いで人の本質をつく、常識にとらわれない人物。フィリップとはまさに対照的なのです。

 実話をもとにした作品ですが、作品では出演者が白人と黒人になっているので、「白人」と「黒人」の対比は映画独自の設定です。

 ポイントの2つ目である「融合」。この映画の中でも随所にちりばめられています。

 家族を失い、孤独を知るフィリップは大切な人を失うことの悲しさと辛さを知っています。一方、複雑な家庭事情を持つドリスは、自分の居場所のなさや疎ましさを感じながら生活していました。それがフィリップと関わる中で態度に徐々に変化が見られるようになるのです。

 この環境や立場があまりにも対照的な二人が出会い、衝突し、互いに感化されていく。それがこの映画の展開です。私たちが普段何気なくとらわれてしまっている価値観や感性、人生の楽しみとは何なのかを改めて教えてくれる作品でしょう。

 この映画を観た後にはいつも思います。「本来交わることのないと考えられている2つの項目の間には本当に壁があるのか」「育った環境の違いは価値観の違いを埋めることができないのか」「世間と自分とは」「大切なものとそうでないものとは」など、世の中に溢れる「他との違いとは何か」ということの本質に気づかせてくれるのです。

 人とケチャップを比較しろと言われてもできないように、巷で二項対立として描かれるものには必ず共通点があります。その共通点を前提として比較・優劣・競合があふれています。しかし最も大切なものというのは本質的な共通点に留意しながら、両者の考えをどの水準までお互いに高め合っていけるかということです。いかに両者が歩み寄るかということです。

 論破とか一方の主張だけが罷り通るといった場面に遭遇することが多くなりました。自分としては全てを飲み込むのではなく、一歩踏み込んで相手を理解し、自分を知ってもらうというスタンスは大切にしなければならないと思っています。そして同いことを周りの人にも配慮願いたいと思っています。

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