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小学生の頃は分からなかった映画「タイタニック 」の醍醐味① ー史実と創作を絶妙に織り成した圧倒的考証力とシナリオ力ー

◾️目次
vol.1 醍醐味①  史実と創作を絶妙に織り成した圧倒的考証力とシナリオ力
vol.2  醍醐味②   ジャックとローズの物語に見るキリスト教的犠牲感
vol.3  醍醐味③  圧倒的スケールを生む特撮、普遍的感情を揺り動かす情景描写  

言わずと知れた映画史に名を残す不朽の名作「タイタニック」。1998年 アカデミー賞を11部門受賞し、同監督の「アバター」に抜かれるまでの12年間、興行収入の世界最高記録を守り続けていた。

そんな20年以上前の語り尽くされた名作を、どうして今語り直そうとしているのか?
それは、私と同世代(20代前半)は名作「タイタニック」の醍醐味を味わいそびれているんじゃないかと気づいたから。

「タイタニック」の上映当時、私はおしめも取れていない赤ちゃんで、その後何度もTV放送を見たものの、幼い私に愛だの恋だのが分かるはずもなく・・・。
ジャックとローズの悲恋はそっちのけで、自分だったらこの状況でどうやって生き残るかばかり必死で考えていた。

実際、船が沈む瞬間からローズが浮上するまでの間、TVの前で一緒になって息を止め「よかった。私は生き残れる。大丈夫」などと安堵することに必死。
(「千と千尋の神隠し」「海猿」「名探偵コナン 14番目の標的」で同じようなことをしたのはきっと私だけではないはず)

 若き恋人たちの恋の行方も、その他乗客や乗組員たちのヒューマンドラマも情緒的に噛み締める余裕などまるでなかった。

むしろ、ローズが大人しくボートに乗っていればジャックはあの板に乗って助かったんじゃないの?とか、
なんで救命胴衣着てるローズが板の上で着ていないジャックが水の中なの?とか、
二人一緒に板の上は本当に無理だったの?
一緒に助かれる選択肢はあったんじゃないの?
てか、この女の人なんかわがままじゃない? 
なんて、恋をまだ知らず、生き残ることだけを再重要視していた小学生の私の目はローズに厳しかった記憶が・・・。

そんな思い出深い(?)映画「タイタニック」だが、ここ数年、地上波ではめっきり放送されなくなったように思う。
昔はあんなに頻繁に放送されていたのに…。

ということは、私と同じように愛だの恋だのが分からない頃にTV放送を観て何となく満足し、映画「タイタニック」の真髄に触れることなく大人になってしまった人は私以外にもたくさんいるんじゃないだろうか?

先日、10年以上の月日を経て再鑑賞した映画「タイタニック」があまりにも名作すぎて今更ながら衝撃を受けた。今回は再鑑賞したからこそ気づいた、名作が名作たる所以を3つのポイントに分け説明したい。

==史実と創作を絶妙に織り成した圧倒的考証力とシナリオ力===

本作の素晴らしい点として、大半の主要登場人物は実在の人物であり、事故の過程も、彼らの取った行動も史実に基づいている点が挙げられる。

沈没の寸前まで演奏を続けた楽士たち
船と運命を共にした船長と設計者
自分だけ真っ先に逃げ出した船主
救命ボートの定員や安全性を把握していなかった二等兵
人命救助に戻った唯一の救命ボートの五等兵・・・

なんと沈みゆくベッドの上で身を寄せ合っていたあの老夫婦も実在の夫婦がモデルとなっている。

この老夫婦に関しては非常に興味深い記事があるので是非とも読んでほしい。

https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/movie-tv/a168009/lcu-titanic-cuddling-couple-true-story-171222-hns/

危機的状況においてこれら実在の人物がどのような選択を下したのか。
そのリアリティある緊迫感故に、観ているこちらも人ごとだとは思えなくなってくる。

自分だったらどんな決断をするだろうか・・・。

そしてこの史実に基づくドキュメンタリーの縦糸に、ジャックとローズという架空の登場人物の愛の物語という横糸がごく自然と織り込まれ、このふたりへの感情移入をより強くさせている。
事故が起きる前からふたりが自然と交流している大半の人物(特に一等船室の客)も実在の人物なのだ。

この史実と創作を絶妙に織り交ぜた魔力的な考証力とシナリオ力がこの作品の第一の醍醐味である。
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次回、vol.2では、ついに主役のジャックとローズの創作について深掘り!


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