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ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」第4部とエピローグを読んで

カラマーゾフの兄弟を読み始めてから2か月以上が経過しましたが、ようやく読み終わりました。
学生時代に読んだときは、朝から晩まで集中して読み続けていましたのでもっと短時間でしたが、ほとんど記憶に残っていません。
今回再読して、改めてこの小説の凄さをいろいろな局面で感じました。
哲学的や宗教的な面の内容の深さはもちろんですが、ロシア的な精神というかドストエフスキーの精神でしょうか、登場人物の性格や感情の激しさに圧倒されてしまいます。

今回は、第4部とエピローグについて記していこうと思います。

第4部では、第12編「誤審」でミーチャが有罪となってしまうまでの検事と弁護士との攻防がドラマティックに表現されており読みごたえがあります。
裁判傍聴人の雰囲気では無罪の判決に傾いていましたが、結局ミーチャは有罪となってしまいます。

エピローグでは、3「 イリューシャの葬儀。石のそばの挨拶」が感動的です。
この小説の最終章ですが、第4部の内容の激しさとは対象的に静謐さが漂う章となっています。
父親スネギリョフを侮辱したことに怒ったイリューシャと喧嘩した子どもたちが仲直りして、病床のイリューシャの死に立ち会い、アリョーシャとともに悲しみにくれます。
アリョーシャは、子どもたちに話しかけます。
以下にその内容を引用します。
(ドストエフスキー. カラマーゾフの兄弟5~エピローグ別巻~ (光文社古典新訳文庫) (p.44). 光文社. Kindle 版. より引用)

  少年 たち は ぐるり と 彼 を 囲み、 すぐさま、 じっと 待ちかまえる よう な 視線 を 彼 に 注い だ。 「みんな、 ぼく ら は まもなく 別れ別れ になり ます。 ぼく が 二人 の 兄 と いる のも、 もう少し の あいだ だけで、 一人 は 流刑 地 に 向かい ます、 別 の 兄 は 死 の 床 に あり ます。 です が、 ぼく は、 近い うち に この 町 を 出 て 行く つもり で い ます。 もしか し たら、 とても 長い 期間 に なる かも しれ ない。 みんな、 ぼく ら は 別れ別れ に なるなる ん です。 でも、 この イリューシャ の 石 の 前 で、 第一 に、 イリューシャ の こと を、 第二 に、 お た がい の こと を けっして 忘れ ない と 誓い ましょ う。 ぼく たち、 これから の 人生 に、 たとえ どんな こと が あっ ても、 これから さき 二十年、 おたがいに 会う こと が でき なく ても、 やっぱり、 ぼく ら が あの かわいそう な 少年 を 葬っ た こと を、 忘れ ない よう に し ましょ う。


この小説の最後は、以下で終わります。
(ドストエフスキー. カラマーゾフの兄弟5~エピローグ別巻~ (光文社古典新訳文庫) (p.49). 光文社. Kindle 版. より引用))


「永遠 に、 死ぬ まで、 こうして 手 を とりあっ て 生き て いき ましょ う!   カラマーゾフ 万歳!」   コーリャ が もう いちど 感激 し て 叫ぶ と、 少年 たち は みな、 ふたたび その 叫び に 声 を 合わせ た。

このカラマーゾフ万歳は、謎めいています。
特に、コーリャがはじめに叫んだとの記述は、おそらく予定していたが実現されなかったこの小説の続編の内容を示唆しているように感じました。

この小説では、様々な感慨を持ちました。
文学以前になってしまいますが、第4部、第12編「誤審」の検事の言葉が印象に残りましたので、以下に引用して5回に及んだ「カラマーゾフの兄弟」の読書感想の筆をおくこととします。
(ドストエフスキー. カラマーゾフの兄弟4 (光文社古典新訳文庫) (Kindle の位置No.7517-7522). 光文社. Kindle 版. より引用)

つまり、 ロシア の 裁判 とは、 たんに 罰する ため だけの もの で なく、 破滅 し た 者 を 救い あげる ため の もの でも ある という こと を!   ほか の 国 の 人々 に 律法 と 刑罰 が ある の なら、 わたし たち の ロシア には 魂 と 知恵 を そなえ ましょ う。 破滅 し た 者 たち は 救わ れ、 ふたたび 生まれ変わる の です。 そして、 もしも それ が できる なら、 ロシア と ロシア の 裁き が ほんとう に そんな ふう で ある なら、 ロシア は 前進 し て いく でしょ う。 どう か、 脅さ ない で いただき たい、 あらゆる 国民 が いやいや 道 を 譲る という、 くるっ た よう な ロシア の トロイカ で 脅し を かける のは、 やめ て いただき たい!


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