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江戸の風

はじめに

こんにちは、dZERO新人のHKです。今回は、談志師匠が気管切開によって声を失う直前、2011年1月~2月に撮影された映像が初めて書籍化された作品である『江戸の風』を紹介させていただきます。こちらは動画付きです。

談志師匠の語る「談志哲学」江戸の風とは何か。

概要

談志師匠が揮毫した「日めくりのつもり」百枚分が収載され、こちらは揮毫と声のメッセージを組み合わせた動画が「談志市場」で配信されています。ギャグの奉公人ではいやだという談志哲学、落語のリアリズム、風が違うからと故郷には帰れないと語る談志師匠のいうところの江戸の風、芸談が語られています。

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著者紹介

著者は落語家であり、落語立川流家元の立川談志師匠。談志師匠は16歳で五代目柳家小さんに入門、前座名「小よし」を経て、18歳で二つ目となり、27歳で真打ちに昇進し、「五代目立川談志」を襲名されています。また、1971年、参議院議員選挙に出馬し、全国区で当選、1977年まで国会議員をつとめられました。1983年、真打ち制度などをめぐって落語協会と対立し、脱会され、落語立川流を創設し、家元となられました。


この作品のポイントと名言

”ワーッと笑わせて帰せばそれでいいじゃないか、興行的に十分に間に合うじゃないか、結構なこっちゃないか”と。ところが、芸人は厄介なことに、ただの”ギャグの奉公人・運搬人”じゃ嫌になってくるんだ。(落語のリアリズム、p17)

つまり美談ではなく、”何だかわからない”という演り方。それは「ナンセンス」ではダメ。ナンセンスはナンセンスでいくらもあります。ナンセンスでない、”人間の不確かなところ”を語っていくリアリズム。これが難しいんですね。(落語のリアリズム、p22)

これ聞いて、あきれけえってね。東北八景のトップが由利徹の実家なんだってさ。わかるよな。これこそリアリティ、ありそうじゃないですか。そういう”ありそうなこと”を落語の中にいかにちりばめていくか。(落語のリアリズム、p25)

嘘でいいんですよ。嘘で固まってる世の中だから。その嘘を見破って落語を演じるんです。とくに談志落語はね。(落語のリアリズム、p32)

落語におけるリアリズム。本当のリアリズムを演っているだけでは落語にならない。そこに入れるセンス。センスの後に、そのセンスにつながるリアリズムを演者本人が持ってるか、それを生かせるか、というところが勝負だと思います。(落語のリアリズム、p34)

サンマは目黒に限る。結構目黒に住んでたんだよ、長いことね。懐かしいとこです、はい。(日めくりのつもり、p39)

今日は何を喰おうかね。こういう楽しみがあるうちはいいです、ええ。俺、何にも喰いたいもん、ないもんね。何かないかね、喰うもの。クジラなんか丸かじりしてみるか。(日めくりのつもり、p42)

雪よ、降ってくれ。去年は降らなかったねェ。全然降らないんだもん、ええ。今年の夏でも降ってもらいたいね。ゆーきやこんこ、あられやこんこ。はい。(日めくりのつもり、p44)

花見だ、花見だ、花見だ。夜逃げだ、夜逃げだ、夜逃げだ。何? 落語じゃねえ? いや、ほんとにあるんですよ。新宿の俺の家の下の一階で。一晩でもってね、スーパーがなくなっちゃった。ほんとう。(日めくりのつもり、p46)

正月や今年もあるぞクリスマス。クリスマスどころやないよ。下手ァするてえと、来年のクリスマスも一緒に来るかもしれない。何しろ早いもんなァ。夏ごろから言ってんだもん。(日めくりのつもり、p50)

嘘ォつけェー! この言葉、大事な言葉ですよ。世の中ほとんど嘘つきなんだから。その嘘に気が付いてないだけ始末が悪い。嘘の皮を引っ剥がす。楽しいですよ。(日めくりのつもり、p64)

「談志が死んだ」「旦那がなんだ」「私負けましたわ」「きつつきが鳴くぞのぞくなかきつづき」、これ回文っていうの。上から読んでも下から読んでも同んなじね。こんなのやってるとね、夜寝るのにいいよ。頭の体操に。はい、やってごらん。(日めくりのつもり、p74)

歯が悪いと屁が出ない。ほんとだよ。俺は歯がいいからブーブー屁が出る。屁が出るようでなきゃダメだ。なんぞってえと、ブーッと一発。勝小吉を見習え。いい屁が出なきゃダメ。(日めくりのつもり、p75)

ネオンは焼けないから身体にいい。これは俺の作った名言。陽にあたるから、体が焼けちゃうんですから。あれ一番、体に毒ですよ。ネオンは焼けないよ。ネオンはいいよ。ネオンほどいいものはない!(日めくりのつもり、p78)

「江戸の風」についてしゃべれって言うんだけどね。まあ一口に言やァ、「江戸に吹いている風」だろうね。江戸に吹いている風、”そうでない風があるのか”って言ったら、あるんだよ。(日めくりのつもり、p122)

いったん落語家になった以上、風が違うからといって国へ帰ることはできない。「男児志を立てて郷関を出ず」というような気持ちになった。しょうがないから、春日部の風でもいい”紙切り”。あまりものを言いませんから、そういう家業になった。(江戸の風、p124)

現に吹いてる風は、「江戸の風」なんですかね。ビルとビルの間を吹いてくる風。「江戸の風」なんですかね。冬の風、春の風、夏の風はあって、それぞれ匂うけども、「江戸の風」と。(江戸の風、p128)

落語家に憧れるってのも、落語の持つ「江戸の風」、江戸風、江戸の味、すべてを含めた、”江戸の昔から在るところ”に住んでいるから。”江戸っ子でえ、べらぼうめ”と。(江戸の風、p133)

dZERO新人HKのひとこと

 談志師匠の芸談がとても分かりやすく語られています。「日めくりのつもり」からも伝わる「談志哲学」がいたるところに散りばめられており、なるほど談志師匠の落語とはこうなのかと、腑に落ちました。談志師匠の語り口を見ていると、言語化できない曖昧な「江戸の風」がどこかから吹いてくるような、不思議な感覚を味わえます。私は談志師匠のにわかファンなので、師匠の上級のファンの方々が読まれれば、私の感じた江戸の風とはまた違う風を感じられるのでしょうね。
 本書購入者は全巻視聴可能な動画作品「日めくりのつもり」は必見です。まさに一日一笑・一日一談志を感じられます。談志師匠が揮毫した短冊は本書にも収載されており、師匠のお茶目さがにじみ出ています。ぜひ、配信動画とあわせて談志哲学をたっぷりと感じられてください。

おまけ


談志市場 伝説の高座映像や激レアのプライベート映像、病床でも書き続けた直筆短冊や声を失う直前の肉声などを動画でお届け。ここでしか見られないオリジナルの「立川談志」コンテンツ!


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