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ものづくりの理想郷

はじめに

こんにちは、dZERO新人のHKです。今回は、平和酒造代表取締役専務、山本典正氏の初の著書『ものづくりの理想郷』を紹介させていただきます。

なぜ、和歌山の片田舎に「ものづくり」志向の若者が全国から集まるのか?

概要

平和酒造には「ものづくり」志向の若者が全国各地から集まります。斜陽産業である日本酒の製造業をなぜ、国立大学を卒業した若者が志すのでしょうか。杜氏を頂点にした蔵というブラックボックスを解体し、全員が一丸となった酒造りをするという新しいタイプの酒蔵を山本さんは経営されています。それゆえに平和酒造は独自色を持ち、それが魅力となって有能な人材が集まるのです。規模が小さいからこそ、「伝統」と「ものづくり」にこだわった酒造りが実現し、蔵人全員が酒造りをしたいという強い情熱を持っているのです。

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著者紹介

著者は日本酒ブームの立役者であり、平和酒造代表取締役の山本典正氏。山本氏は、日本酒試飲会「若手の夜明け」を立ち上げ、2011年から代表をつとめられています。平和酒造の代表的な銘柄は「紀土」と「鶴梅」であり、「紀土 無量山 純米吟醸」はIWC(インターナショナルワインチャレンジ)2020で「SAKE部門(清酒部門)」の最高賞「Champion Sake(チャンピオン・サケ)」を受賞いたしました。また「The International Beer Cup2017」で同酒造のクラフトビール「平和クラフトINDIAN PALE ALE(インディアンペールエール、IPA)」が金賞を受賞されています。


この作品のポイントと名言

日本酒業界がどれほど斜陽かというと四十年以上も右肩下がりを続けていて、ピーク時の1973年に比べると、その市場は三分の一に縮小している。(まえがき、p2)

大企業が取りこぼしているものや、「古い」「採算が合わない」という理由から打ち捨てられているもののなかに、宝の山が眠っているかもしれない。たとえば自然や地域の環境をベースにしたものづくりであり、その中の一つが日本酒造りである。(まえがき、p3)

斜陽産業の多くで、実は魅力的な商品が生み出されているのに、それを消費者に届ける努力がなされないということが起きている。(序章、p16)

縮小する市場に大企業からの新規参入もあり得ないし、既存の大企業も縮小する市場に思い切った先行投資をすることもない。競争相手が少ない市場はチャンスに満ちている。いわゆるブルーオーシャンだ。(序章、p20)

高度経済成長期以降の日本社会では、大企業主義や発展主義、経済至上主義がもてはやされ、これらの対極に位置するように見える伝統(文化)やものづくりが軽視されてきたからだ。(第一章、p29)

酒造技術を獲得したことによって、日本人は「生存するためだけに食べる」ことをやめた。「文化的に生きる」ことを選択したのだ。(第一章、p32)

年収の上限が五百万円とわかっていても、目をキラキラと輝かせてものづくりに喜びを見出す働き方をあえて選ぶ生き方があってもいい。(第一章、p38)

平和酒造の理念は、日本酒造りを通した伝統や文化の発信だが、それを支える蔵人たちに私が提供したいのが「ものづくりの理想郷」なのだ。(第一章、p38)

「働かされている」と「好んで働いている」の違いである。「ものづくり」の魅力の一つは、後者の働き方を実現しやすいということだ。(第一章、p41)

大企業も中小企業も効率や合理性、目先の損得のみを必要以上に追及していく。その結果、どの企業も独自性のある尖った商品開発を行わなくなり、所属社員をただのコストとして見なすようになってしまう。(第一章、p46)

中小企業は大企業が表現できない価値を表現することが必要だ。法律上や道義上の拘束が多くあり、安定志向の人材が多く入ってくる大企業には生み出せないことがある。それは独自色だ。(第一章、p46)

本来なら、大企業には大企業の、中小企業には中小企業のよさがあるはずなのに、中小企業も大企業と同じ尺度(規模の大小、売り上げの大小)でしか評価されようとしない。(第一章、p50)

中小企業は大企業にはできないことをやればいい。日本という国に新しい活力を吹き込むことが中小企業の存在意義でもあり、自分たちが生き残る道でもある。(第一章、p52)

私たちが世界に見せなくてはならないのは、「日本は素晴らしい独自の文化を育んできた」ということだ。(第一章、p56)

酒蔵はどこも特徴的な強みを持っているのに、それを生かしきれていない。それぞれの蔵やそこで造られる日本酒には明確な個性があって、一軒たりとも同じ蔵や銘柄はない。(第二章、p60)

小売店は、一緒に日本酒を売る大切なパートナーだ。だから私は、平和酒造の商品をゆだねる小売店を選ぶとき、その代表者と何度も会い、「この人と一生付き合えると思えるかどうか」を基準にしている。(第二章、p76)

これまでにないネーミングを考えたり、販売チャンネルを変えたりと、どちらかというと革新的なやり方をしているが、それができるのは、伝統という幹はしっかりと守っているという自覚があるからだ。(第二章、p81)

人というのは本来的に手間がかかるものだ。それを惜しんでは組織がぼろぼろになる。だからこそ、重要な酒造りの現場を派遣社員などの非正規雇用ですませたくないと考え、蔵人はすべて直接雇用する形に切り替えた。(第三章、p96)

二〇〇七年四月、大卒の新卒採用第一号が、平和酒造に入社してきた。以来、ほぼ毎年、同様の採用を行っているが、結果を見れば、北海道大学、東北大学、三重大学、宮崎大学など、地方の国立大学出身者が多くなった。(第三章、p111)

残念ながら、平和酒造は、和歌山が好きな若者を採用したいわけではない。酒造りに人生をかける若者を探しているのだ。共に「ものづくりの理想郷」を目指す仲間を。(第三章、p112)

ものづくりに「職人気質」は欠かせない。そこには、「何があっても責任を持っていいものをつくる」という誇りがある。しかし、「だから他のことなど知ったことではない」となってしまったら、単なる「職人バカ」「ものづくりバカ」である。(第四章、p138)

人間性は、外部と接触する営業部門だけに必要なわけではない。お互いを尊重する気持ちや基本的な礼節に欠けていれば、知識や技術があってもまともな酒造りはできない。どんな仕事でもまず必要とされるのは人間性であり、それがあってこその知識や技術なのだ。(第四章、p153)


dZERO新人HKのひとこと

 この作品には筆者の経験に裏打ちされた、「ものづくり」への情熱があますところなく語られています。日本酒業界だけでなく、すべての「ものづくり」業界に応用できる原理原則が語られているなと思いました。日本酒造りの伝統を守りつつも、メリットのない古い習慣は捨て、蔵人全員で成功例を共有し、より味本位のお酒を造られているところに、本当に情熱と信念を持たれているのだなと強い感銘を受けました。また、どんなに苦労しても、めげずに次に活かそうと努力を続けておられる山本さんを尊敬します。
 私はお酒が強くなく、あまり飲酒をしないので、日本酒もワインも同じお酒として一括りにしていました。味の違いもほとんど分かりません。たまにお勧めの銘柄のお酒を飲ませてもらって「おいしい」と感じる程度です。しかしこの作品を読み、山本さんの日本酒造りにかける強い情熱を受けて、平和酒造のこだわりの銘柄である「紀土」と「鶴梅」を味わってみたいなと思いました。ここまで徹底して味と品質にこだわった日本酒なら、あまり舌のよくない私でもおいしいと感じるだろうなと。読み終わるころには日本酒を飲みたくなっている作品です!


おまけ

山本さんが開発された平和酒造の代表銘柄「紀土」

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