結局ビジネスモデルって何なのさ?
「ビジネスモデル」って言葉、みなさんご存知だと思います。だけど、世界的に合意が取れた定義って存在してないんです。
ネットで検索して出てくる定義とか、教科書に書かれている定義とか、基本的にはそれを書いた人独自の解釈なんです。あるいは何かをコピペしたか。
だから他人の定義を聞いて理解するんじゃなくて、最終的には自分自身が腹落ちする定義を見つけなきゃいけないんです。でも、ほとんどの人にとってそれは難しいのも事実。
ということで、ここでは私自身がビジネスモデルの研究を通じて理解していることをお伝えします。
適切な「ビジネスモデルの定義」の判断方法
まずは、巷にあふれる様々なビジネスモデルの定義。その定義が「適切か」どうかを見分ける条件を2つお伝えします。
その定義が他のビジネス用語には一切当てはまらない
収益モデルについての説明が中心ではない
この2つを満たす定義なら、それはおそらくちゃんと「ビジネスモデルの定義」です。
①その定義が他のビジネス用語には一切当てはまらない
1つ目は、その定義が他のビジネス用語の定義としても使えそうならアウト。例えば、以下のようなものは怪しい定義です。
この定義を「事業戦略」や「統合マーケティング」の定義だと言われても、何となくそんな気がしませんか? 少なくとも完全に否定はできない。
実際に「誰に(Who)、何を(What)、どうやって(How)」は「事業ドメイン」のことですし、「付加価値を提供し、収益を得るのかが盛り込まれたビジネスの仕組み」は「収益モデル」のことです。事業ドメインを定めて、儲け方を考えるのは、事業戦略でもマーケティングでも行うこと。
つまり、その定義で他の用語も説明できるなら、それはビジネスモデルの定義ではないということなります。
②収益モデルについての説明が中心ではない
2つ目は、収益モデルの定義をビジネスモデルの定義として取り扱っている場合。これは世間一般では狭義のビジネスモデルの意味として伝わります。
だけど「収益モデル」って名前がすでに付いているので、「収益モデル」の定義なんです。ビジネスモデルの定義ではない。「利益方程式」みたいな用語も同様。
収益モデルはビジネスモデルの構成要素の1つではありますが、あくまで一部です。イコールではないし、本質でもない。
…ということで、上記の2つのポイントをクリアして、且つ、ビジネスモデル特有の要素を含む定義があれば、それはきっと「適切な」定義です。
世の中のビジネスモデル図解のほとんどはCVCA(顧客価値連鎖分析)の亜種
ビジネスモデルについて語る上で外せないのが「図解」です。「モデル(原型、雛形)」という言葉がくっついているだけあって、昔からビジネスモデルの「形」を視覚的に表現しようという試みがされています。
しかし! そのほとんどがCVCA(顧客価値連鎖分析)の亜種です。
まずは本家本元、2006年の石井教授のCVCAがこちら。
次に、2010年登場の板橋氏のピクト図解がこちら。
続いて、2017年登場の近藤氏のビジネスモデル図解。
最後に、いつ登場したかは不明ですが、銀行や役所に提出する事業計画書で定番のビジネスモデル俯瞰図(商流俯瞰図)がこちら。
みんなだいたい一緒。要素同士を物やお金の流れでつなぐのが基本です。
でも結局、CVCA(顧客価値連鎖分析)はスタンフォード大学で開発された、製品設計のためのツールなんですよね。
だからこのツールの特性として、ビジネスモデルの図解はそんなに得意じゃないんです。もちろん、ビジネスモデルの一部を切り取って表現できていることは否定しませんけど。
例えば、CVCAでは、ビジネスモデルを遂行するために必要な人材の採用や育成活動、競争力を保つための技術開発、法や規制を有利な方向に緩和させるためのロビー活動など、ビジネスモデルを成立させる重要な各種活動を表現する方法が無いんです。
だから、どんなに工夫してもCVCAはビジネスモデルの図解に使えない、と私は思ってます。
ちなみに私は、ビジネスモデルを図解するために、システム・ダイナミクスで使われているループ図という手法を使います。
ループ図ならCVCAで表現できなかったことも表現可能になる。自分自身の修士論文の研究内容がベースになっています。
ビジネスモデル・キャンバスは図解じゃなくてフレームワーク
あとビジネスモデル図解としてよく紹介されるのが、オスターワルダー教授の「ビジネスモデル・キャンバス」です。
これは図解じゃなくて、フレームワークです。SWOT分析などと同じで、決められた枠の中を埋めていくスタイル。つまり、枠が存在しないものについては、視覚的に表現できません。
ただし、このフレームワークは、先ほどのCVCAよりも広い範囲の要素をカバーすることができます。
…で、結局ビジネスモデルって何なのさ?
散々遠回りしましたが、私の考えるビジネスモデルの定義は「提供価値を生み出すための組織内外に存在する特定の活動の組み合わせ」です。
この定義は、ビジネスモデル研究の先駆者であるゾット教授&アミット教授の論文「Business Model Design: An Activity System
Perspective(2010)」「Business Model Innovation: How to Create Value in a Digital World(2017)」の内容を踏まえています。
私自身、ビジネスモデルに関する様々な論文や記事を読んできましたが、ゾット教授&アミット教授の長年の研究が一番心に刺さっています。あくまで個人的な印象ですが、一番ビジネスモデルの本質をとらえていると思っています。
以下の図は、論文の内容から勝手に作図したもの。
複数の活動(コンテンツ)の組み合わせ(ストラクチャー)で価値が創造されていることがわかります。また、活動自体は企業だけでなくその利害関係者との協力関係(ガバナンス)について無視することはできません。
つまり、ビジネスモデルを成立させるということは、この「コンテンツ」「ストラクチャー」「ガバナンス」の3つの要素のバランスをとることに他ならないわけです。
…と、この概念も含めて、ビジネスモデルについて語りたいことは山ほどあるのですが続きはこちらから。
上記の記事では、ここまでご紹介した内容も含め、さらにマニアックでかつ長文の記事になっています。もっとビジネスモデルについて知りたくなった方は、ぜひご覧ください。
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