君が僕を捕食(たべ)尽くすまで

 糸を引く唾液
 皿の上の肉。口の中の僕。君の肉が僕
 黒く艶々したロングヘアー、切れ長で澄んだ瞳、長いまつげ、白く柔らかな素肌、薄く桃色の唇、小ぶりではあるが通った鼻筋。小さな口を
 あっ
 と開けて、肉を突き刺した銀のフォークを口元に運ぶ。つんとした頤が上下に開き、薄紅色の舌がぐっと縮み、歯並びのいい白い前歯から
 糸を引く唾液
 皿の上に肉。口の中に僕。君と肉と僕
 黒く焼け焦げた頬の肉、切り取って積んだ皿、長い夕べ、白く柔らかな脂身、薄く桃色の赤身、小ぶりではあるが震える臓物。小さな口で
 あっ
 と食いついて、前歯で噛み千切って奥歯へ運ぶ。つんとした頤が上下に動き、薄紅色の舌がぐっと縮み、歯並びのいい前歯を赤く染める僕の血、肉、皮膚、粘膜

 生首になった僕の頬を金髪ひげ面痩せぎすのシェフが切り取って、熱した鉄板の上にジュゥと乗せる。秘密ブレンドの香辛料を振りかけて立ち昇る紫の煙は龍の尻尾みたいに揺れる。鉄板の上でぶつ切りにした肉を運んでくる。君は銀のナイフとフォークを構える。口を開ける。ソースは選べる。ガーリックは無しにも出来る。君が食べる。僕を食べる
 全部食べる

この記事が参加している募集

小銭をぶつけて下さる方はこちらから…励みになります また頂いたお金で面白いことを見つけて、記事や小説、作品に活かして参りますのでよろしくお願いいたします。