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③今の私をつくった男の言葉

多くを語らない無神経なバンドマンの彼(笑)

いけっちょとはお洒落なダイニングBARで出会った。私たちはそのお店のバイト仲間で、たまたま同じ歳だった。当時、私は大阪の靱公園らへんに住んでいて、そのあたりに働くところなんて山のようにあるのに、なぜか私は友人に誘われて、わざわざ遠い天王寺にあるそのお店でバイトを始めた。

いけっちょは池田という苗字だった。池田さんは、関西では「いけやん」と呼ばれることが多かった。でも「いけっちょ」は池田さんなのになぜか「いけっちょ」だった。顔はせん顔っていうのかな、笑うと目がくしゃってなる人で、服のセンスも良かったし、トークのセンスも良かった。別に特段かっこいい!!という顔立ちではないのだけれど(←失礼)あまりにも全体的な雰囲気がいいので私はいけっちょが好きだった。あまり多くを語るタイプじゃないんだけど、口を開くと発せられる一言一言が思わずクスっと笑っちゃうようなことが多くて、気がつくと私は彼のことをバイト中ずっと目で追うようになっていた。

彼はバンドマンでボーカルとギターを担当していた。ライブも何回か観に行った。ステージでギターを弾きながら歌う彼に気づけば夢中になっていた。ラジオDJを目指している私とバンドマンの彼。最高の相性じゃん!って勝手に思っていたけど、、。デートに誘うことすら、私はできなかった。(時を経て彼が結婚してから再会したタイミングで何度かデートはしたけれど)笑

そんな彼と一度だけ、バイト仲間時代に焼肉を食べにいく約束をしたことがった。私が出演しているコミュニティFMの番組にゲストで出てほしいという相談のために。(それは彼と繋がる唯一の手段だった)

私は、この焼肉に行く日が本当に楽しみだった。やっと2人でご飯に行ける。何日も前から楽しみにしていた。



そして当日、約束の時間に彼はだいぶ遅れてきた。そして開口一番こう言った。



「ごめん、俺このあとバイトあるからノンアルで」

いやいやいやいや。

ショックだったなぁ。悲しかったぁ。

本当に悲しかったな。今思い出しても胸が苦しくなる。

これ、何が悲しいって、この言葉には一緒にこのあとの時間を楽しもう!という気持ちがひとかけらもないこと。それが何よりショックだったし、悲しかった。



それから、いけっちょとは距離をとるようになった。もともとかなり距離はあったんだけど、その日以来好きな気持ちなんて、そのへんのゴミ箱に捨てたんだと思う。あんなに好きだったのに結構あっさり捨てたような気がする。あまり覚えてないや笑

好きな人と初めてのデートで「ノンアルでこのあと予定あります」と言われるこの悲しさ。

完全に脈なし決定。




絶対忘れないと思った。

そして、私はこの時決めたんだと思う。人と飲みに行く時は「ノンアルで」とは言わないでおこう。そして「このあと予定がある」とは言わないでおこう。それがその人への思いやりなんじゃないかって。笑 考えすぎかな笑

今の私は、この男のこの言葉でつくられたのだと思う。



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