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[2月第4週] Weekly DAO Report Vol.58|強気相場の注目テーマ「DePIN」 DAOとの相性も良い?

新しいマーケットのテーマとしてDePINへの注目が高まっている。本稿ではDePINとは何かについて解説し、DAOではどのような領域で応用できそうか紹介する。

DePINとは、"Decentralized Physical Infrastructure Network"の略で、日本語では「分散型物理インフラネットワーク」と直訳できる。要するに、暗号資産をインセンティブとして使って分散型で不特定多数のユーザーの力を結集して、既存のインフラの代替インフラを作る動きだ。何が既存のインフラと異なるのか?Multicoin Capitalは、以下の3点をあげている

  1. インフラを早く構築できる(多くのケースで10倍 - 100倍早い)

  2. ローカルマーケットのニーズに合わせられる

  3. 費用対効果が遥かに良い

例えば、Heliumは、Helium Hotspotは独自の分散型のワイヤレスネットワークを構築し月額20ドルの携帯電話プランを全米で展開、Hivemapは独自のカメラを使って撮影するユーザーからのデータを基に世界の道路のマッピングを実施し、io.netはAIに必要なGPUをデーターセンターや暗号資産のマイナー、個人のPCから集める仕組みを作り上げた。

分散型インフラを作ることに対する対価として、ユーザーはトークンを受け取る。すでにトークンが発行されているプロジェクトもあれば、io.netのように今後トークン発行を計画しているプロジェクトもある。

Messariによると、DePINの影響で次の10年間で世界のGDPが10兆ドル(約1500兆円)増えると観測がある。VCからの関心も高く、トップ10のプロジェクトが合計で10億ドル(約1500億円)の資金調達を実施した。

Source: Messari "State of DePIN 2023"

Filecoinは、DePINの先駆けて語られることが多いが、io.netの創業者はビットコインのマイニングこそDePINの始まりだと語っている

さらに特筆すべきことは、Solanaコミュニティと共にDePINの勢いが出てきている点だろう。Helium、Hivemapper、Renderなどはソラナへの移行を完了しているほか、io.netもソラナ基盤で動いている。Messariは「ソラナの統合されたインフラとパフォーマンスに焦点を当てた開発者コミュニティの存在」がDePINとの相性の良さと指摘している。

DePINのDAOへの応用可能性

DePIN系のプロジェクトの一つであるSpectralは、DePIN x AIのユースケースの一つとしてDAOに注目し、とりわけ投票行動の分析とトレジャリー管理での適性を指摘した

投票行動の分析では、多くの複雑な提案の要約から事前入力されたDAO参加者の選好や戦略に基づく自動投票ツールの発明などが考えられる。一方、トレジャリー管理では、投資戦略はリスク評価、将来の財務のニーズの予想など、CFOの意思決定を手助けする。

つまり、DAOに必要な大半の行動がAIで実現可能なものであり、AI稼働の原動力となるのがDePINという位置付けだ。AIの分散化がDePINであるとすれば、DAOにとっても相性が良いのは直感的に頷ける。

著者:大木 悠 (Hisashi Oki)Asia BD Lead, dYdX Foundation
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2018年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月よりdYdX FoundationのJapan Lead。2024年1月より現職。

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