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赤ちゃんに学ぶ遊戯王

◼️はじめに

皆様、noteをご覧に来ていただき誠にありがとうございます。
私は一児の父として子育てをしつつ合間を縫って遊戯王を勤しんでいるものです。立場が変わると見るものが変わるとはよく言ったもので、今まで特に気にしていなかった事柄にフォーカスが当たるようになりました。

『母語の習得むずすぎでは?』

ということで、赤ちゃんってすごいんだなーというのを実感していただきつつ、遊戯王をしている方へ少しでも役に立ったらいいなーという気持ちで本noteを書き始めました。
皆様の何かの一助となれれば幸いです。

■赤ちゃんの言語習得の壁

子どもはことばを試験で良い点数をとるためではなく、他者とコミュニケーションするために学習します。その際、もちろん辞書を引いて覚えるわけではありません。そもそも、定義として書いてある言葉の意味がわからないのですから、子どもにことばの意味を直接的に教えることは不可能です。

『ことばの発達の謎を解く』今井 むつみ 先生 作

と、言うことで大人になってから外国語を習得するのとは訳がちがいます。
そういうと、言われてみればなんとなくそこまでのイメージはつくかと存じます。では、実際、どんな壁があるのでしょうか。

①コミュニケーションの存在に気づく
赤ちゃんはそもそも目も耳も不自由な状態です。さらにそもそも人間が言葉でコミュニケーションをとっていることを知りません。なのでコミュニケーションの方法を認識する必要があるわけです。
カール・フォン・フリッシュは「蜂はダンスでコミュニケーションをとっている」ことを見つけてノーベル賞を取りました。それと同レベルのことを赤ちゃんは、周りの人間が行なう無数の行動の中からどれが重要なのかを認識しなければいけません。
いきなりハードモードスタート過ぎます。と、言うことで女神様はここはすんなり気づくという能力"制約"を与えてくれています。
たまに遊戯王の大会で、発声を全然してくれない人がいますが「あー女神様から恩恵を与えてもらえなかったんだね、ハードモードなんだね」と認識してあげるのが良いかと存じます。

②口から発せられる音(音声)の重要性に気づく
赤ちゃんが触れる新しい情報は、あまりにも多すぎます。色、動き、音、感触、におい、すべてが新しいわけです。その中から発声している文字、つまり音声が大切だと気づく必要があります。音の中でも手をたたく等の雑音やリップ音も要素として排除する必要あるわけです。しかもそれに気づけても音声は同じ人が同じ音で出しているわけではないため、特有のしゃべり方等も含め、音声を区別せず一律の規則があるだと認識する必要があります。
CS優勝者と私とで、同じ言葉を言っているのであれば同じ情報ということです。

③単語の存在に気づく
音が重要であることを認識できたとしても単語を認識しなければならない。例えば「タカイコウゲキリョクヲホコルデンセツノドラゴン」という音の中から、どこからどこまでが単語なのかを認識して区切る必要があります。

僕はこのカードの「相手の」はどこまでかかるのかが今だにわかっていません。

④単語の意味の特定をする
音を区切ることに成功したとしても、区切った単語にどんな意味があるのかを結びつけなければなりません。
目が見えず耳も聞こえないヘレンケラーに、家庭教師は言葉を覚えさせるために物を持たせて手のひらに文字を書かいて学習を試みていましたが、当の本人はひたすらにくすぐったくされていた認識しかありませんでした。ある日、冷たい水の感覚と手にかかれた"water"という字のイメージが合致し、指文字は「ことば」であり、すべてのモノには「名前」がついていることに気づき、ものすごい勢いで単語の習得をしていったという話しがあります。単語の概念を知るというのは非常にハードルが高いことを示しています。
『ヨコイレ ヤメテ クダサイ!』にはどんな意味があるのでしょうか。誰か私に教えてください。

⑤体系の問題
単語にはカテゴライズが存在していること(体系)を認識しなければなりません。
例えば、"赤"という単語を知っていたとしても、他の"色"を知っていなければ赤を示すことができません。ヘレンケラーはこの体系を獲得するのも大変だったようで”mug”と”milk”と”drink"をよく混同していました。牛乳をマグカップで持ってきてくれたら飲むわけなので、どれがどれに紐づいているのか混乱するのも無理はありません。”mug”という存在がなんなのかを的確に認識し、同時に発生している要素を排除することでそれが何に属しているモノなのかを当てる必要があります。

つまりこれが出た時、すぐに「罪宝」と「スネークアイ」にカテゴライズされてることに気づかなければならないのです。

⑥文法規則のインプットが貧困
「自分は2枚ドローする」と「自分はドローする、2枚」というように、単語を並び替えたとしても意味は同じ認識を持たなければいけないし、逆に"自分"と"相手"の位置を変えればそれこそ真逆の効果になってしまうことを認識する必要があります。

壁のまとめ

と、いうことで絶望感がえぐい!!!ことを認識していただいたかと存じます。
でも言語習得できてる世界中のみんな、すごい!!!

◼️言語習得までのアプローチ

①不要な音素を捨てていく
情報が多いという理由で私の話しを切り捨てるのをやめてえええええええ!
情報量が多すぎるので単純な話し、情報の中から不要なところを切り落とす必要があります。この不要というのは、「コミュニケーションに必要がないもの」と認識してください。そしてこの段階で母語に不要な音素切ってしまっているため、外国語を聞いたときに認識できない音が出てきてつまずいてしまうわけです。生後半年くらいでこの作業が完結する上に、動画のような一方的な情報ではだめで、コミュニケーションが取れている認識を持たなければやはりそれも排除してしまうようです。幼児期の英語教育とは・・。

②単語を見つける
単語を見つけるために、ヒントをもとに赤ちゃんはある程度のあたりをつけるそうです。

・音素の遷移確率により割り出す
・認識した単語から別の単語をインプットした際、それが単語であることを類推する
・アクセントをキーとして単語を割り出す
・格助詞("が"や"の"など)を手掛かりにする

いやすげー、AIかよ。
日本語の場合は助詞(「が」や「を」など)があるので割りとあたりをつけやすいようですが、逆にそのせいで「手」や「蚊」と言った一文字で表す単語は苦手なようです。
さらにヒントは、お腹にいた時にも落ちています。声は、羊水が壁になってクリアに情報をキャッチできなかったとしても、リズムやイントネーションを感じることができます。

③単語の意味を結びつける
単語の意味を結びつけるのは非常に難易度が高いように思えますが、実は先天的に備えているバイアスにより獲得しています。そもそもこれが存在していないと証明できないという認識らしいのでもうそう言うものだと思ってください。赤ちゃん急にチートです。生まれてきたみんなは実はチート持ちなのです。

・事物全体バイアス→渡された単語がその事物全体を表してると認識するバイアス
例)プランキッズパルスを見せて「プランキッズパルス」というと茶色のカードなどとは認識せずに、そのカード自体を"プランキッズパルス"だと認識する。

・事物カテゴリバイアス→固有名詞ではなくカテゴリの名称だと認識するバイアス
例)プランキッズドロップを見せて「モンスター」というと茶色のカードを"モンスター"と認識する。

・形バイアス→形の類似度と情報量の損益分岐点が最も使いやすいところで止めるバイアス
例)プランキッズランプを見せて「プランキッズ」というと、その後にプランキッズっぽい見た目のカードを"プランキッズ"だと認識する(ような物)。
※ちなみに英語で言う不可算名詞(水など)は形バイアスを捨てる必要があるための概念だとか

・相互排他性バイアス→物の名前をただ一つだと認識する
例)最初、プランキッズロックをプランキッズミューと認識していた時に「これは(ミューじゃなくて)ロックだよ」と説明するとミューである可能性を捨ててロックだと認識する。

チートとは言え、これらのバイアスを使い、知っているモノの情報を排除しし、近いものから類推し、共通項を見つけて、単語と意味を結びつけにいくわけなので、持ってるチート能力をどこまで活かすかで個人差が生まれるわけです。個人的に異世界転生ものは、主人公がめっちゃ頑張らないとチート能力無意味ってやつが好きです。

④体系に当てはめる
ある程度分かってからじゃないと動き出せない、でも動き出さないと試せない・・というジレンマに大人も赤ちゃんも苛まれてしまうわけですが、赤ちゃんは当然のように単語を体系に当てはめた上で言葉を使います。しかし今回はチート能力を使っているわけではありません。飛び込む勇気と愚直なまでの努力の上に成り立っています。
ひとつの単語に関連しそうなものを"発見"し、似ているものを少し変化させて"創造"し、指摘された間違いや他人の運用を観て誤りを"修正"するというサイクルをひたすらに繰り返しにより獲得しています。
この頃からサイクルを回しているんですからサイクルが最強です。俺達は一分前の俺達より進化する!一回転すればほんの少しだけ前に進む、それが赤ちゃんなんだよ!!!ということです。

⑤単語を活用する
他の生物に、ハウスバトラーを渡した後に"プランキッズ"という音でそれをプランキッズだと認識させます。その後、"プランキッズ"という音を出してもプランキッズカテゴリーの中からハウスバトラーを選ぶことはできません。これは"プランキッズ"という音がハウスバトラーそのものを指してる認識を持てないからです。ハウスバトラーに繋がる札なのか、ハウスバトラーそのものなのか、ハウスバトラーを出す手段なのか、どうすればいいのかわからないからです。端的に言えば"プランキッズ"はハウスバトラーの必要条件でしかないということです。
しかし、赤ちゃんは、無数にある"じゃない条件"を探し、"プランキッズ"という単語だけでハウスバトラーを対応させることができるわけです。この過度な一般化をすることにより言語を獲得できるわけです。

この過度な一般化も、状況や条件をひたすらに経験し、トライ&エラーを繰り返して正解を身につけるために必要な要素です。トライ&エラーを、ただパターンをやり尽くすのではなく、仮定を立てて、曖昧に当たってしまっていたとしてもそれを正解とはせず一度保留にし、さらに状況や条件を変えることであえてエラーを出して正解を導くアブダクション推論をすることもあります。そんな途方もない努力を重ねた結果、言語の獲得に至るというわけです。

◼️最後に

言語の獲得は非常に難易度が高いことを認識していただいたかと存じます。そして難易度の高いことをしてやりたかったことは"コミュニケーション"だったことを思い出してください。遊戯王は共通のルールと効果により、外人ともやり取りができるコミュニケーションツールなのです。みんなで楽しく遊戯王をしましょう!

他にもいろいろnoteを書いておりますので、よろしければこちらから覗いていただければ幸いです。

それではまたの機会に!
いいねありがとね、ばいばいまたねー(´⊙ω⊙`)ノシ

【あとがき:ことの発端】

最近の自分の流行りが、移動中、ラジオとしてyoutubeを流すことなんですが、『ゆる言語学ラジオ』さんが時間とかテンポとかがちょうどよくて聞いています。

で、適当に垂れ流していたら
「赤ちゃんはなぜ母語を習得できるのか勉強し始めたんですよ」
と始まったんです。

前々から自分の子にはなるべくわかりやすいように言葉を選びなら説明をするように心がけていたので、教育の糧になったらいいなーという程度の気持ちで垂れ流していたら、ドはまりして全20本の動画をそのまま完走しました。
で、赤ちゃんってすげーってなったわけです。
その後も動画で紹介されていた種本が気になって今井むつみ先生の『ことばの発達の謎を解く』と『親子で育てることば力と思考力』も読んじゃいました。だいたい動画で網羅されていたので、微妙なニュアンスが気になった方は読んだ方がいいかと存じます。

赤ちゃんのことを知る機会をくれた『ゆる言語学ラジオ』さん、今井むつみ先生、ありがとうございます。

しかし、この母語習得『必要条件と十分条件の誤解をするマン』を生み出されてしまうというとんでもない欠陥が内包されているのは実に残念なことです。
あるデッキの構築を見て『◯◯がないと××ではない!』となっても仕方がないのです。そんな時は・・

『乳児の時の経験が活かされた結果だね』と優しく褒めてあげましょう^^

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