BtoBで営業レスってどうなの?営業のセルフサービス化について考えてみた。
こんにちは!ユニリタDXアクセラレーショングループです。
先日、DXのイベントで名古屋に出張してきました。
名古屋と言えば製造業のイメージどおり、大手様から中小の部品メーカーさんまで、製造のサプライチェーンを構成するさまざまな企業様にご来場頂きました。
どこもDXというテーマで様々な施策を検討されているようでしたが、その中でも「一際増えてきたな」と感じたことについて、お話ししたいと思います。そのテーマは業務の「セルフサービス化」です。
特に顧客接点の無人化を検討されるケースが増えてきているように感じます。お問い合わせをチャットボットで対応する、商品カタログや注文後の配送スケジュールをWebやスマホで確認できるようにするなど、BtoCのビジネスでは広く一般的になっていますが、BtoBの世界でも徐々に広がりつつあります。
しかし、BtoCで受け入れられた手法を、BtoBのビジネスにそのまま適用するだけでは、なかなかうまくいかないケースもあるようです。
本稿では、BtoBにおける営業機能のセルフサービス化について顧客の心情を考慮しながら、うまい進め方を考えてみたいと思います。
セルフサービス化の狙い
企業側はどうして営業機能をセルフサービス化しようとするのでしょうか。
ビジネスをスケールさせたいから、ということが1番の理由だと思います。自社の製品・サービスを売ってきてくれる営業にも、人数に限りがあります。売上を倍にするために営業の人数も倍にしなければならないとすると、なかなかそのビジネスはスケールしにくいということになります。
営業の人数に制約されずに売上を伸ばしてゆくには?ということで、古くから代理店ビジネスや他社とのパートナー提携による販路拡大が進められてきました。
こうなると、自社の営業は代理店管理やパートナー企業の開拓・サポートなどの仕事が広がり、顧客と直接接する時間が足りなくなってきます。
そこで、人が直接対応するまでもない単純な業務については、できる限りセルフサービス化して、営業をもっと付加価値の高い業務に回そうと考えるようになります。
セルフサービス化できそうな営業機能
人が直接対応するまでもない仕事って、どのようなことがあるでしょうか。いくつか挙げてみます。
自社製品・サービスのカタログの提供
仕様情報の提供
定価・標準納期の案内
デモ・試使用などの受付
予約の受付
見積書の提示
注文の受付、注文請書の提示
納期回答
請求書の送付
保守更新・リピート注文の受付
修理・サポートの受付
以上に関わる問い合わせの受付
いずれも既にさまざまな企業からWebで提供されている機能です。
代理店ポータルやパートナーポータルと称して、メンバーシップ制で公開されている形態が多いと思います。
どの機能も、もともとは営業がface to faceで対応していた業務だと思いますが、機械的に対応が可能なもの、特別な判断や交渉が必要ないものは、このように機能を切り出してITに任せることが可能です。
しかし、ポータルから提供されているものの、あまりアクセスがなく、結局は担当営業にメールが来てしまい、期待していたほど営業の負荷が下がっていないという事例もあることでしょう。
セルフサービス化がうまく機能しない理由とは何なのでしょうか。
セルフサービス化がうまくいかない要因
その要因を特定するには、顧客の立場になって考えてみる必要がありそうです。うまくいっていない例として、次のような要因を挙げることができます。
仕様選択が難しい製品・サービス
同じ製品・サービスでも仕様やオプションが多岐にわたり、どれを選べば自社のニーズにマッチするのかがわかりにくい場合、顧客は間違った選択をしてしまうリスクを取りたくないため、営業に問い合わせてきます。
費用がわかりにくい製品・サービス
同じ製品・サービスにも価格プランに松竹梅があり、どのプランが自社にとって必要十分なのかがわかりにくい場合や、製品に対して別途オプションとされているサービスを付けておかないと適切な導入・利用が危ぶまれるような場合、あるいは商習慣上で値引き交渉が常態化しているような市場では、営業に相談されるケースが増えるでしょう。
納期がわかりにくい製品・サービス
仕様や価格がはっきりしていても、いつからその製品・サービスを利用可能となるのかが不明確な場合、やはり営業に問い合わせが来ます。
そもそも提供する企業内で生産計画、要員計画、在庫見通しが一元化できていない場合は、営業自身も納期を確約できず、社内調整に奔走することになります。
以上のうち、一つでも当てはまる場合、顧客は「どうせ営業に直接聞かないとわからないなら、最初から相談してしまおう」と考えます。
ポータルの画面構成がわかりにくい、レスポンスが悪い、アクセス履歴を取られることに不都合があるなどの理由でも、顧客はこの機能の理由を避けたいと感じるでしょう。このような心情をよく考慮し、画面や機能をデザインする必要があります。
セルフサービス化の進め方
1.定型化できる業務範囲の特定
初めてポータルサイトを立ち上げる場合、それ以前はそれらの業務を営業が受け持っていたはずです。
まずは、営業にしっかりとヒアリングして、それらの業務を棚卸し、定型的にIT化できる部分とそうではない部分を特定することが重要です。
定型的な資料や書類をメールで送付するだけの業務であれば、それがWebサイトになっても顧客にとって不都合はないでしょう。
一方で、顧客に寄り添って臨機応変な対応をしてきた業務について、今後はWebサイトを見て自分で判断してください、と言われたらサービスレベルが下がってしまうことは明らかです。
自社のビジネスでは、どの範囲までが定型化可能なのかをしっかり見極め、その範囲について徐々にセルフサービス化を進めていきましょう。
2.ハイブリッド型で普及展開
セルフサービスポータルを立ち上げて公開しても、しばらくの間は従来どおり営業に問い合わせが来ることが通例です。
この期間に注意すべきは、お問い合わせへの対応時に、ポータルで解決できることは必ずポータルをご案内し、その見方・使い方に慣れてもらうことを徹底しなくてはなりません。営業独自の資料で解決すると、顧客は今後とも営業対応でお願いしたい、と言ってくるでしょう。
営業から見て、ポータルの情報に不備・不足があるのなら、ポータルを改善していけるように、社内でフィードバックを受け付け、改善サイクルを回す仕組みを用意することが重要です。
また、新規のお客様には営業が対応し、リピート注文を頂けるようになってからポータルをご案内するといった切り分け方も有効です。急にパッタリと営業レスにするのではなく、ハイブリットでの運用期間を設け、顧客に理解していただきましょう。
3.顧客ロイヤリティの層別化とコミュニティー創り
セルフサービスポータルをうまく活用してくれる顧客が増えてきたら、互いのWin-Win関係に同意してくれているその顧客に対して敬意を払うべきです。
表彰制度やポイント制度を設けたり、割引率や予約優先度などに差を付けるなど、なんらかの形でそのロイヤリティに応える仕組みを設けると、関係性を盤石なものにすることができます。
そのような顧客へのメリットをWeb画面上で公表し、他の顧客にも共有することで、活用推進のインセンティブにすることもできます。
中長期的には、顧客どうしの掲示板などを設け、リテラシーの高い顧客には情報発信や、他の顧客からの質問に答えてもらえるようなコミュニティーとして育てていくことが理想です。
まとめ
営業のセルフサービス化というDX施策についての、課題と対策をご紹介させて頂きました。
営業のみなさんには、自分の仕事がなくなっていくといったネガティブな捉え方ではなく、事務手続きや社内調整といった面倒な仕事はITに任せ、これからは人間どうしでなければ満足感を与えられないような、高付加価値な仕事にシフトしてゆけばいいのね (もともとそうしたかったわ) とポジティブに捉えて頂けると幸いです。
実はこのような仕事の変化は営業に限ったものではありません。ユニリタでは古くから「運用レス」といってシステム運用保守の分野でも、アウトソーシング、自動化、セルフサービス化等を組み合わせた改善活動を推進しています。
教育分野のEdTechなどもセルフサービス化の一種と言えますね。
これらの進め方に共有するのは、従来やっていた人の動き方や考え方をよく分析し、定型化してサービス化するというアプローチです。
ユニリタグループではこのようなDXの進め方や、それに役立つITサービスをご提供しています。
我々DXアクセラレーションチームがワンストップでお応えしますので、ご関心があればご遠慮なくお問い合わせください!