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デザイン実践者の「熱」と「あがき」を伝えたい【Camp Interview】Vol.1

湯浅 保有美(キャンプの未来をデザインする人)
トリニティ株式会社 CEO 代表取締役社長
エイチタス株式会社 取締役 / デザインプロデューサー
DXDキャンプ デザイン/HRコミュニケーター
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平野幸司(キャンプでの学びをデザインする人)
株式会社idealShip代表取締役
DXDキャンプ シラバス ディレクター/ファシリテーター

広義のデザインの“広がり”と“違和感”

ーーまず「DXDキャンプ」開校のきっかけを教えてください!

湯浅 保有美氏(以下、湯浅):ここ数年で「デザイン」の領域がぐんと拡がり、国の各省庁や地方企業も動き出したりと、機運が高まってきていますよね。私たちトリニティ(※DXDキャンプ運営会社)は、デザインコンサルティング会社として約25年前の創業当時から、いわゆる広義の「デザイン」を一貫して実践してきました。

湯浅:当時は、日本で「デザイン」といえば、スタイリングのこと。だから広い意味での「デザイン」という考え方が社会に拡がってきたこと自体は、「やっとここまで来たか!」と感慨深い。一方で「違和感」も感じていて。長年実践者としてさまざまなことにトライして失敗も成功も重ねてきたからこそ、いま、自分たちの言葉でリアルに伝えていくことが必要かなと考えたのです。

ーいまの「デザイン」への“違和感”。それは、どんなところですか?

湯浅:なかなか言葉にするのは難しいのですが、「デザイン」を学ぶということが、「型」や「方法論」を取り入れることと捉えられていることが多いと感じています。たとえば「デザイン経営」という言葉がありますが、それは経営に関する万能の「型」があるわけではなく、人との向き合い方であったり、社会との関わり方であったり、どちらかといえば態度や視点の持ち方といったところが重要なんです。

湯浅:また「デザイン」というものを、いわゆる「デザイナー」職の人におしつけるきらいもあるのではないかと。広義の「デザイン」は、決して職業としてのデザイナーだけが持つべきスキルではなく、大げさにいえばすべての働く人たちが持つべき、身につけておくことで、未来への変化を起こしていけるものだと思っています。

平野 幸司氏(以下、平野):そのグチになっていた勉強会に参加していた一人が僕で(笑)。かなり以前から、自分たちでデザインスクールを立ち上げようという話は一度となく出ていましたよね。

湯浅:そうそう、話していて思い出したんですけど、勉強会のあと、1年ぐらい後に平野さんと久しぶりに会ったときに、「あんなに話が盛り上がったのに、スクール事業やらないんですね」って言われたのが実は悔しくて。その一言も、私にとっては立ち上げの大きなきっかけです(笑)。
それと同じ頃に、当時の内閣府の知的財産戦略推進事務局の住田局長と彼が主導する「経営デザインシート」との出会いがあり、彼が講演&ファシリテートする講座で、自分達の未来を構想した時に生まれたのが、DXDキャンプの骨子になっているんです。

「点」ではなく「線」の学びをめざして

平野:僕は、最初のキャリアを建築・プロダクトや広告のデザイナーからスタートして、今の仕事(ビジネスデザイン)に拡張してきたのですが、実は子どものころから「人を動かす仕組みをつくる」ということに興味を持っていました。初めて「ドライブスルー」を見た時に、人がお店に入っていくのではなく、クルマのまま、レジに進んでハンバーガーを買っていくという“仕組み“に驚き、いつか自分でもやってみたいと思ったことを今でも覚えています。

平野:十数年前から、ある企業に対しデザインやビジネスデザインに関するレクチャー等を定期的に行っているのですが、そこではどうしても「点」での学びしか提供できていないなと感じていたところがありました。レクチャーに参加した直後は、話も面白がって聞いてくれて、気持ちも熱く盛り上がって実践してみようと思ってくれる人も多いのですが、そこからモチベーションを継続していくことはなかなか難しく、どうしても「点」で終わってしまう。
「DXDキャンプ」では、「点」ではなく、この先ずっと継続し「線」で実践していってもらえるような、新しい「学びのデザイン」「学びのシステム」をつくってみたいと思ったのです。

湯浅:そういえば、構想を練るなかでデザインスクールの“ライザップ“になりたいって話をしましたね。
「結果が出せる」スクールってどういうものかって。生き方や眼差しまでも変えたいねって。

平野:限られた期間に、集中してトレーニングして、さらに生活自体も変えてとにかく成果を出す。新しい自分と出会う、人生を変えるような機会を提供できないかと思ったわけです。「点」の学びではなく、一気に集中して「デザイン漬け」状態で体で学びとって、その後もずっとずっと学び続けられるようなマインドづくりですよね。

湯浅:スクールではなく、「キャンプ」という名前にこだわったのも、そのあたりに理由があります。学校だと、卒業したらそれで終わってしまうけれど、また行きたくなった時にいつでも戻れる場所であり迷ったりしたときに、もう一度モチベーションを復活させたりできる場所をめざしたいと思ったのです。

「デザイン」をどう捉えるか

ーーおふたりは、長く「デザイン」に関わってきたなかで「デザイン」をどう捉えていますか?

湯浅:「デザイン」という言葉はいろんな解釈ができますが、私が思うのは「目の前の人を幸せにする」力、ということです。よく「社会をよりよくするためのデザイン」といった話がでますが、いきなり社会では大きすぎると思うのです。あまりにも広すぎて自分事として捉えられないですよね。まず、自分の目の前の人を幸せにすること、お客様だけでなくて家族とか、恋人とか、同僚とか、目の前の「ひと」をきちんと見ることができるかどうか。その先に、社会はあると思うのです。

平野:僕も湯浅さんに賛成です。その上で、あえて少し違うことをいうとするならば、“点”としてのひとりの気づきや行為から、ひろげて“仕組み化”することも、デザインの機能的な役割だと思っています。

平野:たとえば、僕は割と引いた目でみたり、参加したりすることが多いので、目の前にある「おかしい」と思ったことをいわない人の気持ちもよくわかるんです。だからこそ、おかしいと思ったら「おかしい」と自然にいえる、口に出す勇気の必要がなくなる仕組みをつくるという解決策もある。個別最適を全体最適にする仕組みづくりも「デザイン」ではないでしょうか。

平野:DXDキャンプを通じて、こういった「デザイン」の視点や感覚を意識できる人、共有できる人を、一人でも多く増やしていけたらいいですね。

プログラムに流れる「実践」へのこだわり

ーーDXDキャンプでは「実践」がキーワードの一つになっていますが、講師陣の皆さんも、まさに「実践」者揃いですね!

平野:はい。DXDキャンプの講師は全員がそれぞれの分野で、現役で「デザイン」を実践している人たちです。単に世の中のデザイン好事例を研究したり、エッセンスを抽出したり、ということではなく、自らが中心となってゼロから立ち上げ、現場で活躍しています。

平野:デザインと名がつくセミナーや講座が数多あるなかで、「DXDキャンプ」では、(理論も大事ですが)なによりも実践者の「あがき」や「熱意」といったものを感じとってほしい。

平野:成功事例をベースに学ぶセミナー等は、他にもたくさんあると思います。確かにとても面白いし、参考になることもあるのですが、それを再現することはある意味不可能なんですよね。条件も、状況も、実施するメンバーも、乗り越えなくてはいけない課題も、まったく違うわけですから。それよりも、成功のウラにある失敗や、泥臭いリアルな課題などの話をたくさん聞いて、あの時あんなこと言っていたなとか、あの話ってこういういうことだったんだ、とむしろ後から思い出してもらえるような場所にしたいと思っています。

湯浅:「実践」ということでいえば、DXDキャンプは、おそらく日本で唯一リアルな企業での「フィールドワーク」を組みこんだプログラムです。しかも生徒同士がチームになってこれにあたります。現場で考え、現場で解決していく。上手くいくのも勉強ですし、失敗したとしてもそれも貴重な「学び」になります。失敗して学べる学校って、ないと思いませんか。ぜひ自分を実践で試してみて、このあとの人生を変えるきっかけにしてほしいな、と。

平野:コロナ禍を経験するなかで、予期せず立ち止まり、改めて自分について考えたという人も多いと思います。これまでの常識の世界には、自分自身も、社会自体もきっと戻れない。だからこそここで4カ月*間集中して、ジブンを変えていく、変わっていくことを楽しんでほしい。知識ではなく、マインドやスタンスという意味で。きっといままで見えていなかったものがはっきりと見えたり、未来への妄想力が高まったりしている自分がいるはずです。

*レクチャー2か月+ワークショップ+フィールドワーク

湯浅:DXDキャンプは一度参加して終わりの場所ではありません。この先の人生を「デザイン」していくうえでの、拠り所というか、要所要所でふらっと立ち寄れるような、そんな場所にしていきたいと考えています。従来型のビジネスソリューションのメソッドではもはや生き残れないとすれば、「デザイン」の力は、これからのすべての働く人に必要なスキルのはず。ぜひ自分にとっての「デザイン」の意味を見つけてほしいと思います。

(Vol.1 おわり)

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