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第1回「地域DXのケーススタディ」 ローカルDXスクール

ローカルDXスクールでは、第1回「地域DXのケーススタディ」を10月4日(水)にenspace(仙台市青葉区)にて開催しました。

この日は、DXの事例を実際の当事者から学ぶ回として、ゲストに株式会社クラスタスの神崎健輔さんをお招きし、前半のパートでは、神崎さんの講演から、長崎県の島原半島に展開する地域のクリーニング店がデジタル活用によってどのような成長、拡大を遂げてきたのかを伺いました。

ネット宅配クリーニングを独学で立ち上げ

創業86年となる地元のクリーニング店を家業とする神崎さんは、ネット宅配クリーニングの立ち上げを目指し、2014年に株式会社クラスタスを起業します。しかし、開発会社の見積が地域のクリーニング店に払える額ではなく、独学でプログラミングを覚えて、ECサービスを自作することを決意。

南島原市が主催するハッカソン(企画運営:エイチタス株式会社)で、大都市圏のエンジニアたちとも協働し、何度も改修を繰り返しながら、サービスを育てていきます。

並行して、いかに露出を上げていくかという点でも、自らを「洗濯ハカセ®︎」として売り出し、WEBやSNSでの発信を繰り返し、いまでは全国でテレビ、ラジオ、雑誌などの大手マスメディアに何度も登場し、大手洗剤メーカーのPOPにも起用されるに至りました。

島原半島の町のクリーニング店が、全国に顧客を持つに至り、ネット宅配クリーニングの売上は、半島内に展開する6つの実店舗全体の売上の半分まで延びているとのことです。

ハッカソンから拡がるAIでのサービス展開

神崎さんの動きがさらに広がるのは、前述の南島原市主催のハッカソンがきっかけだったとのこと。

集まったエンジニアやデザイナーたちとの雑談の中で、LINEボットのAIを作り始め、地元ではITエンジニアとしても期待が高まり、南島原市のIoT推進ラボの会長に就いたほか、地元農家のアスパラガスの判別をする画像認識システムを開発するなど、他の産業のデジタル化にも貢献するようになりました。

こうした機会で身に着けた知見は、神崎さんの次のサービスにつながります。

新たに開設したコインランドリー「洗濯ハカセ LANDORY.LAB」では、ランドリーの空き状況をLINEで確認できるサービスを導入し、稼働状況の見える化を果たしたほか、コインランドリー内にAIクリーニングセルフレジを設置し、クリーニングの無人化目指す「Cleaning.GO」を立ち上げました。

Cleaning.GOでは、555種類とも言われるクリーニング業界での衣服の分類をシンプルに再構成し、セルフレジに衣服を置くだけで、AIが品物を自動で判別し、料金を提示してくれます。

地域から挑戦とその先への目線

地域の事業者が、デジタルによって新たなにビジネスモデルを作り、売上拡大につながった事例として興味深い事例であったほか、神崎さんの目線は、AI導入による店舗スタッフの負荷軽減や、洗濯を知ることでユーザーが衣服を大切に扱う行動変容、他業種へのDX化の支援など、さらに先を見ています。

都会に出るのではなく、地域で実践したからこど気づけたことが多いと語る神崎さんからは、地方だからこそDXにチャレンジする意味があるのではないか、との問いかけをいただきました。

他地域の事例を学びに活かす

後半のパートでは、こうした事例から参加者が得た気づきや疑問を書き出し、グループディスカッションや神崎さんとの質疑応答で、自社で実践するDX化へのヒントを、参加者全員で作りあげていきました。

ファシリテーターからは、神崎さんの事例から以下の視点を提供しました。

・お金がかかるところを自分でやった=コスト見積の感覚
・新しい顧客に対し、売りを新たに作っていった
・IT人材をコミュニティで補っていった
・技術を身に着けたから見えた課題解決=改善点を見つける力
・コストが安いからトライ&エラーができる
・UI/UXの工夫は不可欠
・導入の思想次第で、アウトカムが変わってくる
・デジタル活用によって新しい業界との接点が生まれる

こうした気づきをもとに、次回は「業務変革とその先を描く」というテーマで、自社の業務のどの部分にデジタルによる変革を起こしたいのかを整理し、その先にある自社の事業の将来像を描くワークを行います。

*本イベントは宮城県「令和5年度異業種連携促進支援事業業務」にて実施したものです。

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