見出し画像

AIにはボルガライスが理解できない?

こんにちは。
税理士法人上坂会計 DXメンターチームの笹岡です。

ここ数年、AIにまつわるニュースを毎日のように目にしますよね。特に2022年11月にOpenAIがChatGPTを公開してから、この流れが一気に強くなったように思います。
ChatGPTを触っていると、「AIもいよいよここまで来たか~!」と感嘆させられます。

ここまでくると、AIが人間より賢くなるのも、時間の問題であるように思われますよね。AIが全人類の知能を超える技術的なターニングポイントのことをシンギュラリティと呼びますが、アメリカの有名なAI研究者のレイ・カーツワイル氏は、2045年にシンギュラリティは起こると予言しています。

シンギュラリティが本当に起こるのかどうかについては、賛否分かれていますので、実際にどうなるのかは今のところ誰にも分かりません。

現時点でも、AIは特定の分野であればすでに人間の知能を超えています(囲碁のプロ棋士に勝利したAlphaGOは有名ですよね)。このような特定分野に特化したAIのことを弱いAIと呼びます。

一方で、複数の分野に渡って汎用的に活用できる知能を持ち、人間と同程度以上に知的活動を行うことができるAIのことを強いAIと呼びます。スターウォーズのC-3POや、鉄腕アトム、ドラえもんのようなロボットを想像してもらうのが一番わかりやすいのではないでしょうか。

強いAIの誕生こそが、シンギュラリティの到来と言えます。

では、弱いAIから強いAIになるためには、何が必要なのでしょうか?

その一つだと考えられているのが身体性の獲得です。

身体性とは、そのままの意味で、実世界において体を持つということです。チューリッヒ大学AI研究室の元所長であるロルフ・ファイファー氏は、AIが人の知能に近づくため、つまり強いAIに至るために、AIに体を持たせることの必要性を提唱しました。


知的活動するのに、なぜ体が必要なの? と疑問に思われたかもしれません。

ここで一つ喩え話をします。
私が住む福井県には、ボルガライスというご当地グルメがあります。オムライスに豚カツを乗せて上からソースをかけた、高カロリーで食べ応え抜群なメニューです。

越前市HP https://www.city.echizen.lg.jp/office/060/050/volgarice.html

この画像を見れば、皆さんもなんとなく味を想像できるのではないでしょうか?

オムライスの卵のふわふわとした食感。
熱々の豚カツをかじった時の、衣のサクサクとした音。あふれ出す肉汁。
ソースと混然一体となって畳みかけてくる濃厚な味。

……お腹が空いてきますね(笑)

人間であれば、ボルガライスの特徴を教えてあげれば、写真や実物を見たときに、「あっ、これがボルガライスか」と気付けます。また、オムライスと豚カツを食べたことがある経験から、味も想像することができるでしょう。

一方で、AIには現状ではこれらのことが難しいとされています。
なぜなら、AIはあくまで情報を、「記号」としてしか理解できないためです。

「オムライス」という言葉を知っていても、それはあくまで「記号」として知っているにすぎません。「卵で包まれている」「中にチキンライスが入っている」「ソースがかかっている」といった情報も知ってはいますが、それ自体を理解しているわけではありません。あくまで、「オムライス」と関連付けてそういった情報を記憶しているだけです。

「豚カツ」についても同様です。「豚カツ」という記号に対しては、「豚肉」「衣にパン粉を使う」「油で揚げる」「熱い」「キツネ色」といった情報を関連づけて覚えていますが、それ自体を理解しているわけではありません。

なので、ボルガライスの特徴を教えても、ボルガライスの画像をAIに見せただけでは、それがボルガライスであると認識することは現状では困難です。ただ記号と関連付けて情報を覚えているだけなので、この2つの料理を組み合わせた料理を想像するといった応用的な思考は現在のAIにはできません。

応用的に物事を思考するためには、記号として覚えている情報を、現実にある実物と結び付けて、実物そのものを理解することが必要です。

このような問題を、記号接地問題といいます。記号を現実の事物(ここではボルガライス)と上手く接地できない(結び付けられない)ということです。

この記号接地問題の解決策として、身体性を持つことが必要だと言われています。

人間は生来、身体に「味覚」、「視覚」、「触覚」、「聴覚」、「嗅覚」などの五感を備えています。そして、その五感をフル活用して情報を自身に取り込み、色々なことを学習し、理解しています。

例えば、「オムライス」を初めて食べたとき、視覚を通して色や形を覚え、嗅覚を通して匂いを感じ、実際に食べてみて食感や味を理解します。複数の感覚を通して、「オムライス」とはどういうものなのかを、実体験として学習するのです。
「豚カツ」についても同様に、実際に食べることで五感を通して豚カツを理解します。

だからこそ人間は、「ボルガライス」についても、すでに知っている「オムライス」や「豚カツ」の情報を基に理解できるのです。

一方、AIには五感がありません。今のところ、コンピュータやスマホの中でのみ動いていますからね。
五感が無いため、実体験を通して学習することができず、あくまで記号として物事を理解するだけで、実世界の「ボルガライス」そのものを理解することができません。

だからこそ、AIにも五感を備えた身体を持たせましょう、という話になるわけです。AIに身体を持たせて、実体験を通して実世界のあらゆる事物を学ぶことで、記号接地問題が解決できると考えられています。

AIが「ボルガライス」を理解したその日こそが、シンギュラリティの到来と言えるかもしれません。


今回の記事が、少しでも皆さんのDXの理解に役立てば幸いです。
弊社でも、企業のDX支援をお手伝いさせていただいております。DXについての相談を常時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

弊社へのお問い合わせは、こちらからどうぞ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?