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バンコク病院での出産体験記❸(産後、ようやく歩けるように〜退院まで)

えらい長いレポになってしまっていますが、
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今回は、帝王切開後、ようやく自分で歩いて退院まで。

帝王切開でも、いきみ逃しは役に立つ

カテーテルが外れて、ようやく歩けるようになったのは、産後3日目。まずは、同じ部屋内にあるトイレへの移動を試みます。その距離、3メートル。そう、たったの3メートルが地獄でした。

まずベットの背を起こして、足を外へ出そうとちょっと動くだけでもお腹に激痛。そこから、足を地面につけてみるも、どうやってどこに力を入れたらいいのかわからない...。立ち上がるだけで、こんなに腹筋に力いるんだとか思いつつ、面白いぐらいにどうしたらいいかがわからない。何も言わずに近くで見守ってくれていた夫にも「いや違うんよ、どうしたらいいのかわからないんよ」と謎の弁明。

試行錯誤していると、息を止めているからいけないのだと気づく。「こ、これは、陣痛のいきみ逃しに似ているのでは!」と、帝王切開でほぼ不要になったと思っていたいきみ逃しの練習が役に立った、と嬉しくなりました。笑

息をゆっくり吐いて、呼吸を止めないようにしながら、なんとか立ち上がり、そこから足をひきづりながら、ベットの柵を伝いながら、やっとたどり着いたトイレ。その時点ですでにへとへと。

帝王切開のその日に立つ練習させられたとか、翌日退院させられたとか、そんな情報も見ていたのですが、私はとても当日に立ち上がるなんて想像できませんでした。個人差や病院の方針があるのでしょうが、先生や看護師さんは、あくまで私の様子を見て、諸々判断してくれていたように思います。

帝王切開後のトイレ事情

帝王切開で、会陰などには傷ができずに済んだのでそこまで痛みはないと思いきや、お腹周りが痛いと、椅子に座ってまた立ち上がるだけでもなかなかハード。そして、麻酔はもう切れているはずが、2日くらいカテーテルが入っていたのもありいまいち感覚が鈍っていて「トイレってどうするんでしたっけ」状態。しばらく便座に座って放心状態だったと思います。笑

さらに、産後は看護師さんが産褥シートを交換してくれていたのですが、なんせ最初は体が起こせなかったので、どんなものなのかは自分でトイレに行けたこのときが初見。病院によるのだと思いますが、それがまるで、”ふんどし”のよう。

「なんだこれ...。どうやって装着するのだ...。」

看護師さんがトイレ横に置いてくれていたシートを手に、くるくる回してみつつ、試行錯誤でなんとか装着(お腹に巻いた輪っか状のゴムに、長方形のシートをひっかけるような形状でした)。あとで気づくのですが、産前に自分で用意していたのはパンツタイプの産褥シート。パンツタイプだとお腹を屈めて足を通さねばならず、それこそ帝王切開後の体にはきついものがありました。病院で用意してくれたものがベストだったのだと納得。

その後、時間が経つと痛みも和らぎ、入院生活後半は、病院のセブンでソフィのパンツタイプのものを夫に買って来てもらっていました。(実は、産前に用意していたものも持ってきていたのですが、そもそもサイズが小さくて入らず...。妊娠中、お腹が大きくなってからだと自分のサイズ感がわからなくなっていたのと、大きすぎて漏れたりしたら嫌だなと思ってMサイズを買っていたのですが、想像以上に骨盤は開いていたようです...。ソフィのものはワンサイズでしたが、問題なく着用できました。)

憧れの沐浴練習、のはずが

部屋の中や、病院内の飲食店が入った別棟までゆっくり歩いてみたりしつつ、なんとか立ち上がり歩くことに慣れてきた産後4日目の朝。

「今日は沐浴の練習してみましょう!」

と看護婦さん。「やっと憧れの沐浴だあ〜」と思いつつ、病室と同じフロアにある赤ちゃんを預かってくれているナーサリーへ向かったのですが、その時点で私は薄々気づいていました。とても、自分で沐浴できる状態ではないと...。

なんせ、まだまだお腹を庇って前屈みでゆーっくり歩くのがやっと。少しお腹に力をいれると、痛みで動きが止まってしまいます。この状態のまま、赤子を落とさぬよう細心の注意を払いながら、優しく抱っこするなど...できない。

そんな私の横で、わくわくな夫。看護婦さんの「お母さんがやりますか?」の問いかけに「俺もやりたい〜!」というので素直に譲り、私は動画係に徹することにしました。ちょっと寂しい気もしつつ、やる気満々な夫がいてくれることはとってもありがたく。看護師さんの人形を使ったレクチャーの後に、実際に我が子でやってみるのですが、なかなか難しい様子。苦戦しながらも嬉しそうな夫を見ていると、私もほっこりするのでした。

そして、関西人の夫は、ボケも忘れない。沐浴後の仕上げで赤ちゃんの髪をブラッシングするのですが「リオ?クワア?(分け目、右にします?左にします?)」と問いかけて、さっきまでクールだった看護師さんが吹きだしたのを見て、私もつられ、腹筋が見事に死にました。

退院までの手続き

本来であれば、帝王切開でも3泊4日がスタンダードなバンコク病院(経膣分娩だと2泊3日)。ここまで書いてきたように、4日目でも自宅に戻る準備ができていないと感じた私たちは、もう1泊延泊することにしました。先生や看護師さんの反応としても、その決断を否定するでもなく「うん、そうだね、それがいいね」という感じ。タイのローカル病院だと2泊くらいで自宅に帰されるのも普通のようで、みんなすごい...。

そのほか、退院までの間に事務作業もいろいろあります。大事なのが、Birth Certificate関係。ややこしいのですが、病院発行の書類(出生証明書)と、国に発行してもらう書類(出生登録証)の2種類があって、どちらも英語だとBirth Certificate。

入院中、病院のスタッフさん(と頼めば通訳さん)が「この書類に必要事項を記入してください〜」と病室までやってきてくれるのですが、「さっきもBirth Certificateの申請書を書いたはずでは?」と少々混乱しました。

あとからわかった、それぞれの違いや用途としては以下のような感じ。
※大事な情報なので、必ず病院にも確認ください

病院発行の書類(出生証明書)
・退院までに作成してもらえる
・基本英語で、日本語の翻訳バージョンもリクエスト可能
・複数枚、リクエスト可能
・のちに、大使館にて出生届を出す際に提出(ただし、出生登録証でも可。どちらの場合も和訳必須)
・のちに、日本に帰って「出産手当て一時金」を申請する場合にもおそらく利用可能

・国に発行してもらう書類(出生登録証)
・タイ語では「スティバット」というらしい
・退院後、2週間程度で作成できた旨の連絡を受け、病院に取りに行く
・基本的にタイ語で、英語の翻訳バージョンをリクエスト可能(別途、翻訳料で数百バーツ必要。受け取り時に現金支払い)
・のちの、タイ出国時に空港のイミグレーションで提示が必須の模様

タイ出生で、親が日本人同士の子の場合、出生届を提出して戸籍ができたのちに日本のパスポートを取得することになりますが、新しく取得するパスポートには当然ながらタイ入国のスタンプはありません。よって、はじめてのタイ出国の際にタイで生まれたことを正式に証明するのが、この出生登録証とのこと(のちに、大使館のスタッフさんにも「パスポートを作るまでは、これがタイで正式に身分を証明できるパスポートの代わりのようなものですから、大事に保管してくださいね」と言ってもらいました)。

入院時にも確認してくれますが、上記書類を作成してもらうためには、親のパスポート、ワークパーミットの提出が求められたのと(コピーを取られます)、子の名前も記載されるため、少なくとも入院中には名前を決めておく必要があります。

諸々の手続きが済み、ついに退院日。分厚い請求書を見て気が遠くなりながらも、散々面倒を見てくれた先生や看護師さんへ感謝の気持ちを思い出してお支払いを済ませ、荷物をまとめます。

スタッフさんが荷物を運ぶカートと車椅子を用意して、部屋まで迎えに来てくれました。たった数日だったけど、濃密な時間を過ごし、ここを離れるのが名残惜しく泣きそうな私とは裏腹に、ナースステーションの看護師さんたちは「もう行くの〜?バイバーイ(赤ちゃんに)!」とあっさり。笑

これが日常である看護師さんたちはほんとうにすごいなあと思うのでした。本当に、たくさんの方に支え、励ましてもらい、忘れられない体験になりました。


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