見出し画像

バンコク病院での出産体験記❷(帝王切開での出産後、入院中のスケジュールと体調について)

経膣分娩の予定から、急遽、帝王切開になったものの、無事に出産を終え、病室で赤ちゃんを待ちます。※出産の詳しい様子はこちら

「しばらく、ゆっくり休んでね」

と看護師さんが声をかけてくれたものの、興奮状態であまり休むこともできず。麻酔が効いていて痛みはないのですが、思うように体が動かせないので不思議な感じ。胸の下あたりから感覚がなく、腹筋にも力が入らないので、ただただベッドに寝そべって、夫と談笑。

そのうち、手術を執刀してくれた産科の先生が来て、内診。出血の状況などを見つつ、術後の簡単な説明をしてくれました。続いて、小児科の先生の問診。この先生はこのとき初めましてで、ちょこっと日本語がしゃべれる先生でした。基本的に、今後、子どもの担当医となります。

ちなみに、それまでよくわかっていなかったのですが、産科と小児科と新生児科(ナーサリー)は、きっちり別れています。産後に通される病室があるフロアには、産科(母体の世話、授乳指導などしてくれる)の看護師さんたちと、ナーサリー(新生児の世話をしてくれる)の看護師さんたちが別室に待機していました(退院後に定期検診などでお世話になる小児科はまた別フロアにあります)。

はじめての授乳指導と、入院中の生活リズム

そして、待ちに待った、赤ちゃんとの対面!

ナーサリーの看護師さんが押す小さなカートに乗せられてやってきました。おくるみに包まれて、すやすや眠っている様子...。「かわいい...赤ちゃんて本当に赤いのね...」などと思いつつ、自分で起き上がって抱き上げることもできず、どうしたらよいのかわからない状態。

すると、さっそく「おっぱいをあげてみましょうか。」と最初の授乳指導がありました。

私は体が起こせないので、寝そべった添い乳状態での授乳。ベットの柵のところに落下防止のクッションなどをあてがってくれ、赤ちゃんを胸元においてもらい授乳します。幸い、赤ちゃんは上手に乳首を咥えられた様子。吸啜反射といって、口に触れると吸い込む術を生まれながらに知っているのだそうです。ただし、この世に生まれてまだ数時間、どうにも眠そうで、数秒ごとに口の動きが止まる。笑 

「おーい、おっぱい飲んで〜。がんばって〜。」

と声かけながらの授乳。そして、自分では母乳が出ているのかよくわからないもの。「お母さんも赤ちゃんもだんだん慣れていくから、吸っているかわからなくても、とりあえず片方10分、合計20分吸わせてね」とのことでした。

看護師さんもずっと部屋にいてくれるわけではなく、おっぱいを咥えたのを見届けると、部屋を去っていきました。再び「ど、ど、どうしたらいいの?」状態だったのですが、授乳が終わったら、ナーサリーに電話をかけると看護師さんが赤ちゃんを迎えに来てくれる、という流れでした。一応10分ずつ試みるも、実際にはそれより前に力尽きて、ちょっとしかあげられていなかったかなと思います。

それからは基本、3時間おきに病室に電話をくれ「いまから赤ちゃん連れてくけど大丈夫?」と聞いてくれました。「しんどいときは、授乳をパスしてもいいよ」と。どうやら、のちに先生の回診などで時間が空いてしまったときは、代わりにミルクをあげてくれてたようです(退院時に残りのミルクを箱のままくれました)。

「慣れてきたら同室にもできるからね」と言われ、最初はそのつもりだったのですが、なんせ身体が動かせず自分で何もできないのと、赤ちゃんが泣いたらどうしたらいいのかさっぱりわからず(ちなみに、おむつ替えもどうやるのか聞かないと教えてくれませんでした)、3時間ごとに赤ちゃんを連れてきてくれ、授乳が終わったら連れて行ってくれるスタイルはあとから思うとものすごくありがたかったです。これにより、退院までにだいぶリズムが掴めた気がします(私たち夫婦も赤ちゃんも)。

また、授乳時以外にも、私の心拍と血圧をはかりに2時間おきくらい看護師さんが来てくれるので、なんせ、つねに人が行き来している感じ。完全個室であるもののプライベートは無でしたが、興奮状態だったからか?気にはなりませんでした。

そんなスケジュールをこなしているうちに、あっという間に翌日。

予想の何倍もしんどかった帝王切開後の痛み...

私の身体はというと、麻酔が切れてきて傷口がかなり痛く、試しにベットの背を起こしてみるも、そこからお尻をずらそうとするだけでもお腹周りに激痛が走る。錠剤の痛み止めは4時間ごとに飲んでOKとのことで、看護師さんが来てくれたときにお願いすればすぐにもってきてくれるのですが、痛いものは痛い。笑うと腹筋が裂けそうで、私の元気を出そうと面白いことを言おうとする夫に「変なこと言わんでくれ」と懇願してました。

また、カテーテルが繋がれているので、自分でトイレもいけないし、シャワーも浴びれず、歯も磨けないし、ご飯も食べられません...(そもそも、手術から丸一日ほどは絶食でした...)。

そんな状態なので、すべて看護師さんがお世話をしてくれます。帝王切開が決まってからある程度の不自由は予測はしていたものの、あまりに何もできなかったので、「こんなことまでやってくれるんだ!(やってもらわねばならない状況なんだ)」と最初は衝撃でした。

例えば、毎朝看護師さんがパパッと私の服を脱がせ、温かいタオルで丁寧に体を拭き、産褥シートも変え、ふっと体を持ち上げ、シーツを変えてくれました。それも、まったく嫌な顔一つせずに。

医療者としては当然のことなのかも知れないけれど、恥ずかしいなんて考える余地もなくこなしてくれ、感謝が溢れて、泣きそうでした...。こんな状態の身体を見られることも「そんなこと」と思えるくらい、出産ってまさに命がけの現場であり、私自身もたくさんの人に支えられ、生かされている存在なのだと感じることになりました。これでもう、私はここの看護師さんには全幅の信頼をおくことに。

そんななか、さらに想定外の地獄がやってきました...。

突如はじまった、おっぱい地獄

産後2日目の夜、まだまだお腹の痛みと闘っているなか、なんだか胸が張り始める。張り始めるっていうか、気がついたら板のようにカチカチ。

産前、母乳マッサージをしてみたり、ある程度の母乳に関する情報は調べていたものの、なんとなくそれが自分に降りかかるイメージがリアルに持てていなかったのですが、本当に突然やってきました。

例の如く、2時間ごとに様子を見に来てくれた看護師さんが私の胸を触るや否や、

「おお、張ってきたね。痛いと思うけど、とにかく赤ちゃんに吸わせて!マッサージして!」

と突如おっぱいマッサージが開始。事前情報のご多分に漏れず、はい、激痛。なんたって、もう板ですから。板を人の手で崩そうっていうんですから。それは痛い。

「痛いよね。わかるよ。でもね、いまのうちにほぐしておかないと、もっともーっと痛くなるからね!痛くないくらいのマッサージじゃ足りないの。ほら、旦那さんも手伝って!」

さらに、別の看護師さんがやってきて、二人がかりに。最初は、なんとか耐えようと思って我慢しようとしたものの、あまりの痛みに涙がぽろぽろと溢れ出る私。耐えかねて、「もうやめてくれ、自分でマッサージするから!!!」と訴えて、看護師さんたちに退室してもらうことに。

入院中、このときが一番の苦痛だったなと思います。自分の身体なのに、何がどうなっているのかわからないし、ものすごく痛いけど、もっと痛くなるかもしれない+激痛マッサージしか対処法がないという事実は、受け入れがたい...。

ともあれ、やはりマッサージしないことにはどうにもならないということで、泣きながら、弱音を吐きながら、夫の手も借りながらマッサージ(自分だとなかなか強くマッサージするのが怖かったのですが、夫のマッサージなら痛くても思いっきり「痛い」って苦情を言えるし笑、何とか耐えれたので、かなり助けてもらいました)。ちなみに、先ほど私が泣きながらやめてくれ!と訴えたのはフロアの看護師さんに速攻で知れ渡っていたらしく、看護師さんが代わる代わる様子を見に来てくれました。

ある看護師さんはよもぎの入ったおっぱいを温めるグッツ?を持ってきてくれ、それをレンジで温めて、胸に当てながらゆっくりマッサージしてくれました(母乳は血液からつくられるので、血流をよくすることで母乳を流す効果があるよう。でも本当に痛いときは、痛みの対処として冷やすみたいです)。実は、痛みはあまり変わらないものの、このグッツを持って来てくれることで、根性論以外のソリューションを提供してもらえたと思えて、少しだけ気持ちが楽に。

その後も、夫とときどき看護師さんと夜通し奮闘していたのですが、見かねた夫が、「搾乳機とってこようか?」と。実は、産前に用意していた搾乳機は、「まあ、そんな順調に母乳出るかわからないし、いらんか」と自宅においてきていました。病院でも貸し出してくれるのですが、原則授乳室に行って利用するもののため、ずっと部屋に置いておける数はない模様。毎回持ってきてもらうのも億劫だし、夫に取りに帰ってもらうことに。

そのときすでに夜中の2時ころ、このままおっぱいが爆発するのではないかと不安になりながら夫の帰りを待ち、早速取って来てもらった搾乳機をつかってみると...絞れる!母乳がでる!ガチガチで板のようだったのが、一気に改善されました。

看護師さんとしては、搾乳機に頼るのはあまり良くないようなのですが(赤ちゃんに吸ってもらうのとは違う刺激のため。おそらく表面しか刺激できない。ベストは、赤ちゃんにとにかく吸ってもらうこと。とはいえ、赤ちゃんもまだ吸い慣れていないし、量も吸えないので、搾乳機であってもうまく乳腺に刺激を与えて入り口が開いてくれたよう)、私の場合はやってみる価値はあったなと思います。光が見えて、だいぶ気持ちが休まりました。

母乳に関しては、生まれてみてからでないと、どれだけでるのか、子はうまく吸うことができるのかなど分かりません。いろんな考え方があって、難しいトピックだなとも思います。帝王切開だと母乳育児が軌道に乗りにくいとも言われるけれど、私の場合はどうやら「出過ぎる」パターンでした。のちにいろいろ調べていて「出ないのもつらいし、出過ぎるのもつらい」という助産師さんの言葉を見つけ、こんなパターンもあったよ!ということを伝えたくて、詳しく書いてみました。すでに数ヶ月育児をしている中でも「こんなことになるなんて聞いてないよ!!!」と一番ギャップが大きかったトピックかもしれません。

また、あとから思うと「とにかくいまのうちにマッサージせよ!!!」と必死になってくれた看護師さんたちにはとても感謝で、その後の母乳との付き合いにおいて、入院中にしんどい部分を体験できたことはとても役立ちました(いまだに、胸がはって乳腺炎になりかけると、あのときの激痛を思い出し、「いまのうちにマッサージを!!!」と自分を鼓舞できています...)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?