見出し画像

フィルムが消えた後の写真

『10年後にはフィルムは絶滅している』

などと言われつつも、10年経ってみてまだフィルムはしぶとく生き延びています。


とはいえ、年々縮小傾向にあるのは間違いなく、いつか消えてなくなるのはおそらく間違いないと思います。

特に、一般向けの写真感材は売れなければなくなるのは間違いないわけで、これまでにもたくさんのフィルムが消えていきました。


ここで言う”消えたフィルム”というのは銘柄だけの話ではなく、フィルムフォーマットも含みます。

現存するフィルムフォーマットは135(35mm)、120(中判)、4x5、8x10がメイン。

110、127(ベスト判)、5x7はまだギリギリ製品として存在していますが、おそらく他のフォーマットから切り出しで作られているものが殆どです。

他にもすでに姿を消したフォーマットは沢山あって、例を挙げればボルタ判やアトム判、APSなど。

特に乾板から移行したシートフィルムには大名刺判、手札判、大手札判などの小型のものから、四つ切、八つ切といった集合写真用に用いられた大型のフォーマットまで様々なものが存在していました。


画像1

僕が持っているTachiharaも八つ切判の大判カメラ。

専用のフィルムホルダー(しかも木製!)もありますが、フィルムは既に製品として販売されていません。

サイズとしては現存する大判カメラ用フィルムの5x7と8x10のちょうど中間にあたる6.5inch x 8.5inchです。

なので、フィルムで撮影するためには8x10フィルムを縦横1.5inchずつ切り落として利用する方法があります。しかし、8x10フィルムはそれ自体が高価な事と、現像するための設備にもコストがかかることを考えると、気軽に手を出せるものではありません。



中古カメラ屋やリサイクルショップ、ネットオークションやフリマサイトを見ると、手札判や八つ切、四つ切サイズの大判カメラが捨て値同然の価格で取引されているのをよく目にします。

蛇腹の痛みや金具の錆などそのままでは使えないものも多いですが、手入れをしてやればまだまだ使えるものが殆どです。

それだけ、当時のカメラは丈夫で丁寧に作られています。


これらのカメラを気軽に使う方法のひとつとして、印画紙に撮影するという手段があります。


撮影用フィルムに比べてプリント用の印画紙は1枚当たりのコストが低く、処理も通常の印画紙と同様のプロセスでいいので、貸し暗室を利用する他、引き伸ばし機を使わないため、真っ暗にした風呂場や台所など、ちょっと工夫すれば自宅でも十分に扱えます。


画像2

画像3

印画紙に直接撮影した”ネガ”と、"ネガ"を密着焼きしてポジ画像を得たもの


フィルムホルダーに合うサイズに印画紙を切り、通常の大判カメラ同様に撮影、持ち帰って暗室で現像をし、出来上がった"ネガ"を密着焼きして反転画像にすることで、写真として閲覧することができます。

通常のフィルムと違うところは、感度が非常に低いこと(ISO3~6相当)、印画紙は赤い光に反応しないオルソクロマチックなためフィルム(ほとんどがパンクロマチック)と色味が異なること、密着焼きの際に撮影対象によっては印画紙の繊維の模様が目立つこと(上の画像では空の部分がそれ。ウロコ雲ではなく印画紙の繊維)など。


感度が低いのでシャッター速度が1秒以上になることが多く、大抵は短くても4秒~6秒、暗所や室内では数十秒間シャッターを開けている必要があります。そのため、1秒より短いシャッターを使う機会の方が少ないので、そもそもシャッターが必要ありません。素通しのレンズを取り付けて、レンズキャップを手で空けて閉じればシャッターの用が済みます。

オルソマチックなのは案外思ってもみない色味になることがあって面白いです。わざわざオルソマチックフィルムを買うよりも気軽に遊べます。赤やオレンジの花が黒く写るのは結構かっこいいです。

密着焼きの際に印画紙の繊維が映り込むのは被写体によってまちまちで、なるべく空や白い壁面などを避けてやれば、ほとんど目立つことはありません。



大判のフィルムは小型カメラ用フィルムよりもおそらく先に消えていくのではないかと思っています。フィルムや乾板がなくなってつかわれなくなった大判カメラもたくさん存在しています。

でも、印画紙を使えばまだ写真を楽しむことは可能です。

画像面積が大きい分、35mmや中判のような小型カメラよりもこういった手法には向いています。

結局、後に残るのはこういったシンプルなものなのかもしれないな、なんて思います。

木製の大判カメラは持っているだけでとても所有欲が満たされるし、見た目も渋くてかっこいいので、見つけたら是非手入れをしてあげて、印画紙で撮影してみて欲しいと思います。

この記事が参加している募集

カメラのたのしみ方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?