見出し画像

失敗しないステンレスリールの巻き方

今回は、フィルムの自家現像をする際のステンレスリールの巻き方について、僕なりのコツのお話をします。


リールの種類

まず、フィルム現像をするためのリールにはいくつか種類があります。

・プラスチックリール(パターソン、ヨーボ)

・ステンレスリール(LPL、ハンザ、マスコなど)

・ベルト式(キングなど)

それぞれフィルムの巻き方が違って、人によってやりやすいと感じるものはそれぞれのようです。初心者にはプラスチックリールが失敗しにくいと思います。


入手方法は新品を購入するか、オークションや中古カメラ店で中古品を探してくるか、の2択になります。

ステンレスリールは昔から多く使われていただけに中古で手に入れやすく、価格も比較的安価で手に入ります。

僕は、安くて手に入りやすいという理由から、すべて中古のステンレスリールを使用しています。


ステンレスリールでありがちな失敗

ところで、このステンレスリールは安価で手に入るのはいいのですが、自家現像を始めた最初のうちは必ずと言っていいほど現像で失敗をします。

これがその失敗したネガフィルムです。

画像1

部分的に現像ができていない個所があります。

これはリールにフィルムを巻き取るときにフィルム同士が重なってしまい、重なった部分に現像液が行き渡らずに現像不良を起こしたため、こうなっています。

画像2

画像3

これはこの失敗例を再現したものです。フィルムが折れ曲がっている個所があります。

フィルムがリールに沿って巻かれず、折れ曲がって隣の溝を通ってしまったため、その部分でフィルムが2回巻き取られ、フィルムが重なってしまっています。


失敗する原因

どうしてこのような巻き取りミスが起こってしまうかというと、原因は主に2つあります。

1つ目は最初にフィルムを差し込むときに真っ直ぐ差し込めていないこと。

2つ目は巻き取るときに均等な力でフィルムを引っ張れていないこと。


特にこのような現像ミスは、1つ目の失敗で起こることが多いです。

フィルムをリールに巻き取る作業は光があるところではできないため(フィルムが感光してしまう)完全に遮光した暗室内か、ダークバッグと呼ばれる遮光された袋の中に手を入れて手探りで行います。

いずれにせよ、ちゃんと巻き取れているかを目で見て確認することができないので、経験による指の感覚が頼りになるわけですが、初心者のうちはその感覚がわからないため、失敗したことに気づかないまま現像をしてしまいます。(ある程度やり慣れると失敗しているときは違和感を感じてやり直せるようになります)


失敗しないための巻き方

僕自身、この失敗を何度も繰り返してたくさんのフィルムを駄目にしてきた経験があります。

失敗を重ねてどうにか失敗しない方法はないかと模索した結果、今では巻き取りのミスによる現像不良はゼロになりました。今回は、僕が失敗を重ねて編み出した、失敗しない巻き方を説明します。

ずばりその方法とは明るいところでフィルムをリールに差し込むことです。


いやいや、光があるところではフィルムが感光してしまうって、さっき自分で言ってたじゃないの。そう思った方、もうしばらくお付き合いください。


結論からお見せすると、こうなります。

画像4

フィルムをリールに差し込むところまでを明るいところで目視しながらやって、そのあとリールに巻き取る作業をダークバッグの中で行います。こうすることでフィルムは間違いなく真っ直ぐに差し込まれているので、巻き取り中にリールからずれて巻き取られることはなくなります。


順を追って説明します。(今回はLPLのリールを使用します)


画像5

フィルムピッカーでフィルムのベロを出します。通常通りの行程です。

画像6

画像7

そしてフィルムの先をカットしてリールに差し込めるようにしますが、この時になるべく切り落とす量を最小限にします。

画像8

画像9

次に、パーフォレーション(フィルム両端にある穴)の端から3つ目のところで折り目をつけます。これが、手探り状態でも真っ直ぐに差し込まれていることを確認する目印になります。

画像10

画像11

折り目を戻して、フィルムをリールに差し込みます。このとき、折り目をつめた3つ目の穴の部分にリールの爪を引っかけるようにします。

画像12

ちゃんと差し込めるとこのようになります。ここまでの作業はすべて明るい部屋で目視しながら行います。

きちんとできていれば、リールの爪のすぐ下から折り目がついており、折り目を辿っていくと反対側の爪に辿り着くはずです。これをダークバッグの中で指先で触って確認することで、フィルムが真っ直ぐ差し込まれていることを確かめることができます。

画像13

横から見るとこうなっています。リールの奥までフィルムを差し込んだときに引っかかる爪の位置が穴3つ目になります。3つ目の穴の上で折り目を付けたのはこのためです。

画像14

あとはこの状態のままダークバッグに入れて閉めた後、手探りでリールにフィルムを巻き取ります。(ここからは遮光した環境下で行ってください)

このとき、巻き取りを始める前に必ずリールの爪→折り目→反対側の爪一直線で辿れるか指で触って確認してください。

反対側の爪に行きつかないときはダークバッグに移したときに浮き上がって隣の穴に刺さっている可能性があります。落ち着いてもう一度ダークバッグから取り出して差し込みなおしましょう。


画像15

ここまでの説明で使ったフィルムを実際に現像した結果です。

画像16

明るい場所で目視しながら作業しても撮影したコマに影響がない理由は、引き出している部分がカメラにフィルムをセットする際に使われる余白部分を使っているためです。

カメラの裏蓋を開けて巻き取り軸に差し込んで巻き上げた後、裏蓋を閉めてカウンターが1になるまで何回か空シャッターを切って、それから撮影にはいりますよね。

その撮影までの余白部分で作業を行っているため、明るい場所で作業をしても撮影したコマには影響がでないのです。不安な場合は、いつもより1~2コマ分余計に空シャッターを切っておくと安全です。


まとめ

以上が、失敗しないステンレスリールの巻き方になります。

これから自家現像を始める方向け、と言うよりは、何度か挑戦して失敗した経験のある方向けの解決策として紹介させていただきました。そのため、基本的な手順はわかっているものという前提のもとで説明しています。


ポイントは、目で見て確実にフィルムを真っ直ぐ差し込むことと、真っ直ぐ差し込まれていることが手探り状態でもわかるように折り目をつけることです。

実際に、僕はこの方法を思いついて試してから、一度も巻き取りミスを起こさなくなりました。

既に自家現像したフィルムの本数は100~200本分あると思いますが、確実でミスがないのでずっとこの方法で現像をしています。

巻き取りミスで悩んでいる方がいれば、是非試してみてほしいと思います。


2020.06.05追記

一発撮りですが、上記の内容を説明した動画を撮りました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?