シェア
財前ぜんざい@オリジナル小説
2016年11月24日 19:10
大学に面した大通りを、私たちは並んで歩いていた。圭は大学の正門を出てすぐに私の腕から手を離し、私に歩調を合わせた。 大通りのどこからか、クラクションの音がする。鳴り止まない車の走行音をうるさく感じるようになったのは、つい最近だ。昔は雑音に耳を傾ける暇も余裕もなかった。だが今の私は、まるで感覚が敏感になっているかのように、昔見えなかったもの、聞こえなかったものを感じるようになった。 それが
2016年11月9日 17:07
「圭……?」 笑顔で大げさに手を振っているのは明らかに圭だった。病的なまでに痩せている身体。深緑色のシャツから覗く、浮き出た鎖骨。小柄な身長。なぜ彼がここにいるのか見当もつかなかった。 私は何も悪いことはしていない。ただ大学に来て講義を受け、帰宅しようとしていただけ。なのに彼と遭遇してしまったことに焦りを感じた。「一緒に帰ろうぜ!」 圭は正門から私に叫ぶ。大きな声とその目立つ身振り