フィンランドのサービスデザイン、簡易レポート
昨晩はヘルシンキで開催されたService Design Dayへ。Service Design Network創始者のBirgit Magerが来てくれました。
で、フィンランドで実施されたサービスデザインレポートの内容がエグかったので少しばかりシェアさせてください。レポートはサービスデザイナー240人が回答。英語で実施されたものとのこと。(ちなみにUS全土でも回答が300くらいだったそうで、このことからもフィンランドのサービスデザイン加熱ぶりがよくわかります)
◯ サービスデザイナーの属性
まず回答者の6割がSDの専門教育を受けていて、7割が修士持ち。とんでもない高学歴集団です。
続いて回答者の所属区分ですが、エージェンシーとインハウスが各3割ずつで、続いて「教育(12%)+公共・NGO(16%)」で計約3割。これもかなり衝撃。
回答者の背景についてのリサーチについては、項目立てそのものが興味深いなと思うのですが、例えば35%が半年以上無職だったことがあり、26%が生育環境において経済的に不利な立場に置かれていたことがあり、12%がLGBTQ+だと回答したとのこと。
◯ SDはいかに使用されているか?
SD用途の回答トップ4は、組織のユーザー中心性の拡大、顧客満足度の向上、イノベーション促進、および戦略的意思決定の支援。
特にイノベーション促進というのはUKなどでは大きくは見られなかった回答とのこと。割と広い文脈でSDが受容・解釈されていることがわかります。
◯ アカデミックにおけるSD
続いて衝撃的なのが、アカデミックにおけるSD推進です。フィンランド全土で17機関・33課程(BA~PhD)がSDを含む課程を提供しているとのこと。これは調査者としても驚きだったそうで、例えば全米でSDを専門に学べるのは「たったひとつ」。アメリカは人口3億人に対してフィンランドは人口500万人しかいないわけなので、これは相当な数値です。
以前行政関係者へインタビューしたときにも感じましたが、フィンランドにおけるサービスデザイン受容は、結構異常です。例えばヘルシンキ市文化部の方にインタビューしたときも「デザイン?ああ、サービスデザインのことですよね?」みたいな返事が返ってくる。これは欧州でも相当珍しい部類だと思います。
社会的に(いわゆる広義の)デザイン受容がこれだけ進んでいるのは、デザイナーにとっては本当に恵まれた環境だなと。実際、LinkedInでデザイナーが何の肩書を名乗っているかを調べたところ、フィンランドだけが圧倒的に「サービスデザイナー」が多かった、という話も。
◯ Birgit Magerのトークから
Birgit Magerのトークも刺激的でしたが、興味深かったのは、「あなたの最大のチャレンジは?」という問いへの回答。まずひとつは、'80年代に彼女がSDを始めたころ、「サービスデザイン」という言葉自体が全くなかったのが本当に大変だったと。
そしてもうひとつ、現代の最大のチャレンジは、SDが「薄く」なってきていること。楽しいワークショップをして、ポストイットを貼ればサービスデザインになるわけじゃない。それは長期的で深いコミットメントを伴うもので、それが軽薄なものになってきているのが現代の最大の課題なんじゃないかと。
にしても、当たり前のようにこういうイベントが全編英語で開催できるの、すごいことだし、ありがたいことだなあと改めて。
会場は(デザイン)コンサルティングファームのMiltton。フィンランドのエージェンシー、どこもオフィスがめちゃくちゃイケてて本当に素晴らしいです。
以上です!
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