2023年8月14日 「映画『独裁者たちのとき』」

本格的に暇な1日。動く気力も起きない。が、観たい映画の上映期限が迫っている。

アレクサンドル・ソクーロフ監督『独裁者たちのとき』。「ブーツがきつい」とか言いながら目を覚ますヨシフ・スターリン。隣にはイエスが横たわる。そこに現れるウィンストン・チャーチルとアドルフ・ヒトラー。罵ったり嘲ったりしながら歩くと、ベニート・ムッソリーニも出てくる。この映画、スターリン、チャーチル、ヒトラー、ムッソリーニの4人は実際の映像が使われており、AIやディープフェイクの類は使われていない。声は別人が演じているが、セリフは実際の発言で構成される。さらにそれぞれに色々な時期の自分が現れ、互いに「兄弟」と呼びかける。やがて神のいる扉に辿り着く。

原題は『おとぎ話』なのだが、宣伝としては邦題が良いのは当然としても、内容を観れば原題の方が良いような気がする。チャーチルは独裁者とは言えないし。

予告を見て興味を持って、でも実際観に行って寝ちゃったりした人もいるんじゃなかろうか。私はちょっとうとうとしてしまった。でも鑑賞後は不思議な満足感があって、「つまんねー映画だった」とか「時間返せ」とかは全く思わなかった。というか、この映画自体が夢を見ているようなものだから、ちょっとすごい夢を見たぞ、という感じなのだと思う。

途中、彼らが演台のような場所に立って、異様な数の民衆を前に演説したりする場面がある。しかしその民衆はぼやけていて、人のように見える何か、という感じ。全部が一体で、一人一人の輪郭がない。それが異様な数、というか量で波打っている。まさに「全体主義」という言葉をイメージ化したような感じ。ワーグナーの音楽と共にこれがどんどん増えていき、やがて津波のようにうねる。あれは恐ろしかった。私は海のある街で育ったし、その海はいつ津波を起こすかわからないと聞かされてきた。小学校時代に東日本大震災が起き、テレビで見た津波の映像を見てなぜか大泣きしたことを今でも覚えている。だから怖かった。映画の内容とは関係ないが。

ソクーロフには『太陽』という昭和天皇を主人公にした映画があるらしい。ちょうど明日は終戦の日であるし、ぜひ観たいと思うのだが、サブスクにもないようだ。

台風が直撃している。京都はもうそろそろ暴風域に入っているだろうか。風の音が聞こえる。大雨も降っている。窓ががたがたいうと、不安になる。明日観たかった映画は明後日に延期。ウィリアム・フリードキン監督『恐怖の報酬』。


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