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おめでとう、侍。おめでとう、野球(エッセイ)

いやー、楽しかった。野球が好きでよかった。

けど皆、こんな展開は予想できなかったんじゃないかと思う。大谷VSトラウト。皆が見たいと思ってたけれど、多分無理なんだろうなと思っていた。大谷は開幕投手内定してるので、アメリカではエンゼルスが投げさせないというのが大方の見方だった。その方針を覆してエンゼルスが1イニングのみの投球を許可したのが試合当日。水面下での交渉だったり、WBCの大きな盛り上がりだったりが影響しているのだろう。ここでエンゼルスのせいで大谷VSトラウトが実現出来なかったら、エンゼルスというチームが批判されるのは目に見えている。それくらい、WBCという大会は大きなものになったと思う。それは、間違いなく選手とファンの力だ。選手がいいプレーをしてくれなければ盛り上がりに欠けていたし、ファンが盛り上がってくれなければエンゼルスを動かす事も出来なかっただろう。

野球というスポーツの勝利だ、という言葉が何度か出てきた。メキシコとアメリカの監督、双方が敗戦後に口にしていた言葉だ。本当にその通りだな、と思った。全ての野球好きが、野球というスポーツを信じて愛してきたからこそだ。野球好きの中には、選手としてグランドに立つ者もいる。ファンとしてスタンドやテレビの前で祈る者もいる。その全てが報われた瞬間こそが、大谷VSトラウトの勝負だったと思う。

ここで、マイクトラウトについて話そうと思う。大谷翔平については、語り尽くされてきたと思う。その凄さは言葉では表されるものでは無いと知りながらも、何とか言葉にしようと努力した素晴らしいnoteが沢山ある。大谷翔平についてはそちらをチェックしてほしい。マイクトラウト。現代野球の最高傑作と言ってもいい。現代野球で最も打者が大切にしている指標がOPSだ。これは、出塁率と長打率を足した数字だ。つまり、どれだけ塁に出てなおかつどれだけ長打を打ったかが分かる指標だ。OPSは.800を越えれば超がつく優秀な選手といえる。マイクトラウトの通算OPSは1.002。ちなみにOPSで1を超えるとMVP当確と言っていい。その数字をずっと積み重ねてきたのがマイクトラウトだ。その完成された打撃フォームは、再現性が高く機械のようだと称される。感情を表に出すタイプでもないので、野球マシーンと冗談で言われるような男だ。

現代野球に現れた、絶対にホームランを打つ野球マシーン。対峙するのは、現代野球ではあり得ないとされた二刀流を成し遂げた、160kmを投げるホームランモンスター。酒場に行った野球好きが深夜2時に話す妄想。「大谷とトラウトってどっちが強いと思う?」叶ってしまった。最高の形で。最高のシチュエーションで。

終わってしばらく経って、「これ、どうすんの?」という言葉が口をついた。こんなものを見てしまった。この後の野球はどうなるのだろうか?こんな興奮は、二度と来ないんじゃないか?

けど、シャンパンファイトでそれが杞憂だなと思う出来事があった。最年少の高橋宏斗選手が、年齢が足りてないのでアメリカの法律に引っかかってしまいシャンパンファイトに参加できないという事態が起こった。これを見て、さっきの心配は杞憂だなと思った。

シャンパンファイトに法の問題で参加できないくらい、若く有望な選手がいる。彼らがまだまだ、夢を、ドラマを、見せてくれる。そう確信した。思えば、今回の代表は若い選手が多い。大勢、湯浅、宇田川。他にもたくさんいる。彼らがきっと、次の凄い何かを見せてくれる。そう確信した。

おめでとう、侍。おめでとう、野球。これは野球を好きでいてくれる全ての人への勝利だと思う。そして改めて、全ての代表選手にありがとうとお疲れ様を言いたい。

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