経営を肌で感じることが出来る作品
あんたにも繰り返し読む本ってやつがあるかい?
見紛う事なきオッサンの俺は、最近小さい文字を読むのが辛くなってきて、紙の本からは遠ざかり気味だ。
そんな中で、電子書籍はリフロー型のものであれば、文字サイズを自由に設定できるのはありがたいことだね。
もう一つ、俺を救ってくれる書籍の形態に最近はハマっている。
オーディオブックだ。
オーディオブックってのは、文字通り本を読んで聞かせてくれるもので、昔ならCDブックだのラジオドラマだの言ったやつだな。
結構な数のオーディオブックが巷で出回っていて、きっとあんたの気に入る作品もあると思うんだよね。
今回は、そんなオーディオブックの中で、繰り返し堪能させてもらっている作品を振り返ってみる回だ。
気に入ったら読むなり聞くなりしてくれよな。
会社を経営することを肌で感じる事ができる小説
今回紹介するのは、「アキラとあきら」という池井戸潤さんの経済小説だ。
あの半沢直樹シリーズでお馴染みの産業中央銀行を舞台とした話だ。時代背景としては、1985年に二人のアキラは産業中央銀行に入行、それに至るまでの物語とそこから先の物語が人生を振り返るように描かれている。
ちなみに半沢直樹は1989年入行だから、ちょっと先輩の話ってわけだ。
さらにちなみに、この先に産業中央銀行と東京第一銀行が合併して、東京中央銀行となるわけだが、この合併直前の東京第一銀行側の物語としては、あの「花咲舞が黙ってない」があったりする。
なんかこの時代背景ってワクワクするよな。
花咲舞が黙ってないでは、半沢直樹がちょい役でちょくちょく出てきたりするのも、俺たち読者を楽しませてくれる。
で、この「アキラとあきら」なんだけれど、ざっくりいうと生まれも育ちも違う二人のアキラが各々の思いを持って産業中央銀行に入行するまでの物語と、入行してからの波乱万丈な時代背景に翻弄される二人の物語で構成されている。
最も見どころなのが、入行直後に行われた新人教育での融資シミュレーションだ。
その研修では実際の企業データを元に、融資するのかしないのかの稟議書を新人が作り、その優劣を争うというもの。
池井戸潤さんの作品にふれるまで、恥ずかしながらこの銀行融資というのがどんな観点で行われるものなのか、さっぱり知らなかった。
この研修では、貸借対照表やら損益計算書なんていうありふれた会計資料から会社の状況を読み解き、さらには業界の動向と合わせて「その会社がしっかりと返済が出来るような成長モデル」というのを作り上げていく。
その検討の結果、実現性のある経営計画に落とし込めるのであれば融資するし、落とし込めないのであれば見送りとなるってわけだ。
それって、つまりは経営者と同じ観点に立って、その会社をどうやったらうまく存続させられるかを考えるってことだ。
しかも、銀行員は多種多様な業態に対応する必要がある。
その意味ではシステムエンジニアと同じく、自分の職業を変えることなく、様々な業態を経験できる仕事ってわけだな。
研修の締めくくりの融資バトル
この研修は勝ち抜き方式となっていて、稟議書の評価が高い上位2チームはファイナリストとして、あるお題をこなすことになる。
そのお題とは、実際の会社データを元に、片方はその会社の経営者として、片方はその企業の融資担当として振る舞うというものだ。
この生データを元に各々の立場で検討を進めていくんだが、この制限時間付きの検討というのが、鬼気迫るような真剣さの中で進められていく。
何しろ、その会社ときたら、データを精査すればするほど、危機的な状況にあることがわかるからだ。
放っておけば、2ヶ月後に資金ショートを起こすという究極的な状況。
現金化出来る資産はないか。借り入れをするにしても、どうやったら「自分たちの会社」が生き残れるという証明が出来るのか?
そこで出した会社側のアキラの結論。
こいつを最初に聞いたときには鳥肌が立っちまった。すげぇ!って小声で電車の中でつぶやいちまったほどだ。
気になったら読んでみてくれよな。
なあ、あんたはどうだい?
最近、何を読んでワクワクした?
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