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ビールを水代わりに飲む男

最近知り合った同じ年の男性を誘って、昨晩食事に出かけた。

僕の目的は彼の人となりを見定め、今後長期的にお付き合いできるような方なのかどうかを見極めることだった。

その方は公認会計士を生業としていて、ご自分の家も税理士事務所を営んでいるとのことだった。

外見通りマジメそうで、生粋の数字に強い特性をもった方なのだろう。

そんなことを考えながら食事を始めてすぐに、彼が僕の予想よりも遥かにお酒好きな方だったということが分かった。

乾杯のために頼んだ生ビールの中ジョッキをあっという間に飲み干したと思ったら、彼はすかさず2杯目を注文した。

僕は1杯目の生ビールを飲み終えた後、料理に合わせて冷酒に切り替えた。

そのお店は料理にこだわりの日本酒をあわせるスタイルの和食屋さん。

種類の異なる冷酒を頼むたびに、陶器製もしくはガラス製のぐい呑を選ばせてくれるところも僕は気に入っている。

目の前に陶器製のぐい呑が所狭しと並べられたお盆とガラス製のぐい呑がこれでもかと盛られたお盆が差し出されると、僕は専ら陶器製のぐい呑のお盆へ手を伸ばすことが多い。

僕が冷酒も飲まれますかと薦めるよりも先に、ガラス製のぐい呑を彼の親指、人差指、中指の3本の指は的確につまんでいた。

その姿は、本能に従って行動する動物のように見えた。

そして、冷酒を二人で飲み始めた。

料理が一皿一皿進むたびに、僕たちは新たな種類の冷酒を注文して、食べ進めるのと同じように飲み進めていった。

驚くことに彼は冷酒が入ったぐい呑の隣にそびえ立つ中ジョッキの中身が空になると、すかさずビールのおかわりをし続けた。

ビールを水代わりに飲む男とはこういう人のことを指す言葉なのだと心の底から納得した。

18時45分から食事を始めて、解散したのは23時30分。

昨夜、帰宅途中に彼が持っていた荷物を紛失してしまったことを聞いたのは、本日の正午のことだった。

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