「日本に人種差別なんてあるの……?」──『人種差別をしない・させないための20のレッスン アンレイシストになろう!』安田菜津紀さんによる特別寄稿 ためし読み公開
ニューヨーク・タイムズのベストセラー! ヴィジュアルブック『人種差別をしない・させないための20のレッスン アンレイシストになろう!』(ティファニー・ジュエル著、きくちゆみこ 訳)がDU BOOKSより、1月14日に刊行されます。
なぜ人種差別(レイシズム)は存在するのか。なくすにはどうしたらいいのか。レイシズム(人種差別主義)を一から理解し、解決するための入門書です。原書が刊行されたイギリスではヤングアダルト(※13歳から19歳の世代の人たち)向けジャンルの書籍として刊行されたので、やさしくわかりやすい言葉で書かれており、この1冊で知識と実践が身につきます。
NPO法人Dialogue for People副代表でフォトジャーナリストの安田菜津紀さんには、日本の読者に向けて、特別寄稿を頂戴しました。刊行を記念して、その一部抜粋を掲載いたします。この安田さんの文章が、人種差別(レイシズム)について考える最初の一歩となりますように。
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日本版特別寄稿「日本に人種差別なんてあるの……?」より一部抜粋
筆者は、「私たち自身のなかにも、権力を持つ部分と抑圧されている部分が混在しています」と記しています。私は父が亡くなるまで、何の疑いもなく自分の父母がそろって日本人だと思い、育ってきました。自分が日本社会で、そうした意味での「特権側」でいる限り、差別やヘイトの問題を考えなくて済んだのです。隣国に対する攻撃的なニュースが流れるたびに、朝鮮学校に嫌がらせの手紙が届いたり、通学中の生徒のチマチョゴリが切られたりすることにも、背を向けていられたのです。こうして抑圧する側だった自分、それに無自覚でいられた自分に気が付いたとき、愕然とし、そしてどこか後ろめたさを感じてきました。
けれどもこの本を読み、筆者のこの言葉にはっとさせられました。
「支配的文化に距離が近いアイデンティティを持っているということは、私にはそれ自体を無効にするパワーがあるということです。(中略)あなたにだってできるはずです」
「あなたの特権を使おう!」
自分自身を振り返っても、「特権」とは、気づかずにいられる立場のことなのだと改めて思います。問われているのは気づいた後、どんな行動をとるのかでしょう。
「日本に差別はあるの?」という問いに、私はこう、答えようと思います。
「そんな差別を私の周りで見たことがない」=「他の人のところにも存在しない」ではなく、気がついていないだけで私の周りにも他の場所にもあるかもしれない、と視点を変えてみませんか? そして、共に声をあげませんか?
(©️Dialogue for People)
安田菜津紀
(NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
1987 年神奈川県生まれ。NPO 法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/ D4P)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16 歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 ─世界の子どもたちと向き合って─』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBS テレ
ビ「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。
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《書誌情報》
『人種差別をしない・させないための20のレッスン アンチレイシストになろう!』
ティファニー・ジュエル 著 きくちゆみこ 訳 オーレリア・デュラン イラスト
A5・並製・168頁
ISBN: 9784866471648
本体2,200円+税
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK308
目次抜粋
●自分のアイデンティティを理解し、育もう
人種とは? 民族とは?、個人的/制度的なレイシズムとは?、アイデンティティ・リストを作ろう
●世界を理解しよう
偏見は個人的なもの、私たちが抱える歴史、私たち自身が歴史になる、マイクロアグレッションを書き出そう
●行動を起こし、レイシズムに対処しよう
レイシズムを崩壊させよう、話に割り込もう、連帯しよう、コールイン/コールアウト、警官に取り押さえられた黒人男性を見かけたらどうする?
●連帯してレイシズムに対抗しよう
自分の特権を使おう、アライシップ、自分を愛そう
*巻末にわかりやすい用語解説付き