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『フレンチ・ディスパッチ』の風景を、『ウェス・アンダーソンの風景』から探してみた!

世界的なウェス・アンダーソン人気にともない、現在164万人以上のフォロワー数をほこるInstagram発のコミュニティ「Accidentally Wes Anderson(AWA)」。世界各国の冒険者たちから集められた「ウェス・アンダーソンの映画に出てきそうな場所」が投稿されている。監督の公認(序文も寄稿)で、書籍化もされ、翻訳版もDU BOOKSから絶賛発売中だ。

監督も認めただけあって『ウェス・アンダーソンの風景』の完成度はちょっとすごくて、本書刊行のあとに公開されたウェス・アンダーソンの新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』のフライヤーと、『ウェス・アンダーソンの風景』を店頭で並べてみたら、すでに空の切り取り方からして、ちょっと似てる…。

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本記事では、『ウェス・アンダーソンの風景』をパラパラめくって、新作『フレンチ・ディスパッチ』のシーンと似ている風景を探してみました。風景にまつまるトレビアや歴史も本書から抜粋。これまでのウェス作品の設定を連想できるトピックもあって、映画ファンなら興味深く読めます。


まずは、画面中央のかわいらしい新聞スタンド。

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『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の一場面より。
(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

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パンケーキ・スタンド
クロアチア、クルカ国立公園 | 1985 年頃
写真:キャシー・タイズウェル
 クロアチアのクルカ川は石灰岩のなだらかな丘を流れていて、峡谷、洞窟、湖、滝などが点在する一帯の光景は、この世のものとは思えない美しさを称えている。は、この世のものとは思えない美しさを称えている。
クルカ国立公園内には修道院がふたつ、ビザンチン教会がひとつ、紀元1世紀の落書きが残る古代ローマの地下墓地―そしてこのパンケーキ・スタンドがある。
 自然の驚異と圧巻の歴史のマリアージュ。そこに華を添えるのに、クロアチアのパンケーキ以上のものはない。ただし、何段か重なったふわふわのものを想像している人は注意してほしい。クロアチアのパンケーキ(palačinke)はフランスの薄いクレープに似ている。
(『ウェス・アンダーソンの風景』より)

このパンケーキ・スタンドは監督も気に入ったらしく序文でもふれられています。

ワリー・コーヴァルと彼の協力者たちが作り上げたのは、とても楽しげな写真集であると同時に、すごく魅力的なトラベルガイドだ(少なくとも、このウェス・アンダーソン、ぼく本人にとってはそうである)。およそ200もの場所が紹介されていて、すべてを訪ねるには数十年かかるだろうが、とくにクロアチアのパンケーキ・スタンド(95ページ)など、行く機会を逃さないようにしたい。
(『ウェス・アンダーソンの風景』ウェス・アンダーソンの序文より)

次は新作の舞台となる編集部。ちょっと無理やりですが、建物の屋上にタイポということで。

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『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の一場面より。
(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

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ホテル・モスクワ
セルビア、ベオグラード | 1908年頃
写真:マリウス・スヴァレン・アンドレセン
 1908年、セルビア王ペータル1世がベオグラードに作られたホテル・モスクワの開業式典を取り仕切った。建物の基礎を掘るところから屋根にエメラルドのタイルを敷き終えるまで、工事の段階から市民が毎日のように見学に集まっているホテルだった。
 第一次世界大戦後、ホテル・モスクワのカファナ(カフェ)は、セルビアの文学シーンの中心地となった。戦火に見舞われたベオグラードで、作家たちはこのホテルに集まってきた。小説家のミロシュ・ツルニャンスキによると、当時は電気が不足していたため、「灯りがある唯一の場所」だったからだという。ツルニャンスキは「Grupa Umetnika(アーティスト・グループ)」という芸術家および創作家の集団を組織し、愛する街に新たな芸術と文化をもたらすことを目指した。ベオグラードの荒廃を逃れて、このグループはホテル・モスクワの見事に飾られたカファナで晩を過ごし、人工の光を贅沢に浴びながら熱い議論を交わした。
 こうしたインテリたちが戦間期にはホテルの風景を彩っていたが、1941年の夏、ナチスドイツがベオグラードのみならずホテル・モスクワにも侵攻してきた。このホテルはゲシュタポ(秘密国家警察)の本部となった。しかし、第二次世界大戦が終わると作家や芸術家たちが警戒しながらも揚々とホテルへコーヒーを飲みに戻ってきて、言論界を再び活気づけた。ノーベル文学賞を受賞したイヴォ・アンドリッチは、このカファナに専用のテーブルを持っていた。同じく常連であった詩人のヴァスコ・ポパとは挨拶を交わしていたかもしれない。
 ホテル・モスクワは有名な俳優、政治家、指導者など、様々な名士を引きつけ続けている。このホテルのあらゆる部屋にアルバート・アインシュタイン、インディラ・ガンジー、アルフレッド・ヒッチコックらも滞在した(その後、それぞれの部屋には3人の名前がついた)が、ルーム13に宿泊した者はいない。不吉な数字であるため、このホテルにルーム13は存在しないからだ。
(『ウェス・アンダーソンの風景』より)

本書の刊行後も、AWAのInstagramには新しい風景が日々UPされているので、もっと見つかるかもしれません! ぜひフォローを! そして、本書を片手にウェス作品のように、ここではないどこかへ妄想旅行をしてみては、いかがでしょうか。

最後に、新作『フレンチ・ディスパッチ』は監督の大好きな名門誌「ニューヨーカー」に捧げられていますが、DU BOOKSでは2014年に『ジャン=ジャック・サンペ ニューヨーカー イラスト集』を刊行しています。また機会があれば、本書もnoteなどでぜひ紹介したいです。そして、新作が撮影されたアングレームも縁が深い場所。編集部で以前、アングレーム国際漫画祭に参加したこともありました。さらには、アングレームには音楽家の鷺巣詩郎さんのフランスでの拠点(お城?)があるとか。本当に素敵な街でした!

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《書誌情報》
ウェス・アンダーソンの風景
Accidentally Wes Anderson 世界で見つけたノスタルジックでかわいい場所
ワリー・コーヴァル 著 ウェス・アンダーソン 序文 樋口武志 訳
本体3500円+税
ISBN:978-4-86647-131-0
B5版/PUR並製/オールカラー368ページ
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK288
全国の書店、ネット書店、弊社サイトにて販売中!

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AccidentallyWesAnderson - AWA - Instagram:
https://www.instagram.com/accidentallywesanderson/

Accidentally Wes Anderson:
https://accidentallywesanderson.com/


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