「週刊カニエ・ウェスト」Vol.5
『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』(カーク・ウォーカー・グレイヴス著、池城美菜子訳・解説)の発売を記念した隔週連載「週刊カニエ・ウェスト」の第5号を更新しました。本書とあわせてお楽しみください(前号はこちら)。
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・《Jesus Is King》がついに発売
カニエ・ウェストの9thアルバム《Jesus Is King》が10月25日にリリースされた。
発売初週売り上げは26.4万枚を記録し、ビルボード200で初登場首位を獲得した。これによりカニエは、同チャートで9作連続首位を獲得することになり、エミネムがもつ連続首位獲得記録と並んだ(カニエは2004年のデビューアルバム《The Collage Dropout》のみ初登場2位)。
くわえて《Jesus Is King》は、ビルボードのトップ・クリスチャン・アルバム、およびトップ・ゴスペル・アルバムそれぞれのチャートでも首位を獲得している。
・福音を広めるのが使命――《Jesus Is King》ロングインタビューが公開
ラジオDJのゼイン・ロウによるロングインタビューをBeats 1が公開した。このインタビューでカニエは、福音を広めることが自身の目下の使命だと語っている。「いまのわたしはキリストに仕える身であり、イエスがわたしに施してくださった恩寵を人々に伝え、福音を広めることがわたしの使命だと考えています」
信仰心に篤いところをみせる一方、「自分が歴史上もっとも偉大なアーティストであることに疑う余地はない」と豪語するなど、いかにもカニエらしい発言も飛び出した。「有史以来もっとも偉大なアーティストが赤い帽子(注:トランプ大統領のスローガン「アメリカをふたたび偉大な国に」のロゴが入った帽子)をかぶるなんて、リベラルの人たちには神の悪いいたずらとして映ったことでしょう。“やめて、そんなのカニエじゃない!”ってね」
また今年のクリスマスには、早くも次作《Jesus Is Born》をリリースするつもりであることも明かした。
・“ジーザス・イズ・キング” サンデー・サービス・エクスペリエンス
10月27日および翌週11月3日には、アルバムの発売を記念したライブイベントがロサンゼルスのフォーラムにて開催され、《Jesus Is King》収録曲やこれまで「サンデー・サービス」でも披露されてきたゴスペル音楽が披露された。
〈Use This Gospel〉披露時には、同曲に客演参加しているケニー・Gとクリプスがステージにかけつけた。
・高度3000フィートで〈Jesus Walks〉
米CBSのトーク番組「ザ・レイト・レイト・ショウ」の人気企画「カープール・カラオケ」の番外編となる「エアプール・カラオケ」にカニエがゲスト出演した。
「カープール・カラオケ」は、同番組の司会者ジェームズ・コーデンとゲスト有名人が車に相乗りし、トークを交えながらカラオケを楽しむ名物コーナー。今回は舞台を車中から航空機内に移し、カニエの率いるサンデー・サービス合唱団が歌声を披露している。
・「ジミー・キンメル・ライブ!」に出演
米ABCのトーク・ライブ番組「ジミー・キンメル・ライブ!」に出演し、《Jesus Is King》から〈Closed On Sunday〉を披露した。
・《Jesus Is King》アイテムがぞくぞく発売
カニエの公式通販サイト(https://shop.kanyewest.com/)では、アルバム(CD、LP、カセット)のほか、Tシャツやスウェットシャツやキャップなどのアパレル商品を販売中(一部商品は販売終了)。
・映画『Jesus Is King』興行収入1億円突破
アルバムのリリースと同日に、全世界21都市のIMAXシアターで封切りされた同名映画『Jesus Is King』が、公開後最初の週末だけで103万ドル(約1億1,160万円)の興行収入を挙げた。映画は北米以外の地域でも順次上映館が増えていく予定だが、日本での公開は現在未定。
・ウェスト家のハロウィーン
以下はカニエ・ファンによるハロウィーンの仮装写真。
(「週刊カニエ・ウェスト」Vol.5 2019年11月8日発行 文:編集部)
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お知らせ
本連載の姉妹企画「ギャングスター・タイムズ」をはじめました。『ギャングスター・ラップの歴史』(ソーレン・ベイカー著、塚田桂子訳・解説)と一緒にお楽しみください。
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《書誌情報》
『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』
カーク・ウォーカー・グレイヴス 著 池城美菜子 訳・解説
四六・並製・256頁
ISBN: 9784866470900
本体1,800円+税
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/1007889220
〈内容紹介〉
天才芸術家にして、当代一の憎まれ屋——その素顔とは?
21世紀屈指の名盤《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》を大分析。
現代ポピュラーカルチャー界に君臨する神(イーザス)の実像に迫るファン待望の決定版!
目次
第1部 ポップ界のキリスト イーザス7つの美徳
第2部 早熟の巨匠あるいはモンスターの肖像
第3部 現代一のナルシシスト
第4部 不穏な5枚の絵
第5部 贖罪のアート
第6部 大学(ユニバーシティ)という宇宙(ユニバース)――《The College Dropout》
第7部《808s & Heartbreak》についての短い考察
My Beautiful Dark Twisted Fantasy
Dark Fantasy——高みを目指す男の暗いファンタジー
Gorgeous——自信こそセクシーの源
POWER——デジタル時代のオジマンディアス
All of the Lights——前科者もマイケルも光からは逃げられない
Monster——4つ首のラップ・モンスター
So Appalled——トップ40ヒップホップを揶揄したポッセカット
Devil in a New Dress——マジックアワーに包まれた、悪魔との戯れ
Runaway——許しを請う音のバレエ
Hell of a Life——AV女優と結婚してみたら
Blame Game——分裂していく罵り合いゲーム
Lost in the World——作品全体のDNAを内包する祈り
The Yeezus Singularity——「ただ愛されたい」カニエ・ウェスト教のマニフェスト
解説——カニエ・ウォッチャーが見た奇才の素顔
付録——カニエ・ウェスト年表(こちらで一部抜粋をためし読み公開中)
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