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ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2023: Vol. 2「蒸気波の英雄達の帰還~James Websterかく語りき」

『新蒸気波要点ガイド ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019』(佐藤秀彦著、New Masterpiece編)の4刷重版記念企画として始まり反響を呼んだウェブ連載「ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2020-2022」およびその続編「同2023」の最新回。このたびは、今月18日から待望の再来日ツアーを予定しているJames Webster(death’s dynamic shroud)のインタビューをお届けします(取材・文:hitachtronics)。

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「2020年に発生したコロナ禍はVaporwaveにも影響を及ぼした。デスクトップから飛び立とうとしていたVaporwaveは、また画面の中に縛り付けられるハメになった」「日本で無事に彼らを観られるのはいつの日になるのだろうか……」

 我々は本連載の第0回にてこう綴ったが、2023年、非常事態は(強引にとはいえ)幕を下ろした。アメリカでは4回目の『ElectronICON』が通年どおり開催され好評を博したようだったが、円安で日本に来やすくなったとはいうものの、ここまで早く戻ってくるとは予想していなかった。
 NEO GAIA PHANTASYが、4年の沈黙を破り三度目の来日を果たす。今年はさらに、彼らの所属レーベルである米Vaporwave最大手〈100% Electronica〉より、最重要アーティストのESPRIT 空想とNeggy Gemmyもともに初来日するというのだ。

『NEO GAIA PHANTASY 2023』メインビジュアル
Illustration by Kurisuxz

そもそも「NEO GAIA PHANTASY」とは何なのか?

 本連載でも何度か言及しているが、この記事で彼らを知るという方もまだまだいらっしゃると思うので、あらためて説明させていただこう。
 NEO GAIA PHANTASYは、EquipことKevin Hein、R23XことMarc Junker 、そしてdeath's dynamic shroudの3人いるメンバーのうちふたり、James WebsterとTech Honorの計4人からなる、Vaporwaveアーティストによる同名の来日ツアーに端を発した運動体である。Vaporwave以外での彼らの共通点は、日本に来たときにはハードオフを巡ったり、『シェンムー』の舞台となった横須賀の“聖地巡礼”をするほどコアなゲームマニアで、とくに『ファイナルファンタジー』シリーズの大ファンであること。これに関しては『新蒸気波要点ガイド』にEquipのインタビューが掲載されているので、ぜひ併せてご一読いただきたい。

『新蒸気波要点ガイド』収録のEquipインタビュー

 来日ツアーとしての『NEO GAIA PHANTASY』は2018年11月に初開催。東京や関西を中心に7か所を巡り、好評を博した。翌年には〈PLUS100〉を主宰するVAPERRORや当時韓国在住だった식료품groceriesを迎え二度目の来日。とくに東京公演の『NEO GAIA LEGEND』は国内在住のVANTAGEやbl00dwaveらも巻き込み、一大イベントとなった。
 さらに三度目の来日を宣言するもコロナ禍で停滞を余儀なくされてしまったが、彼らはこの2年間の記録を収めたドキュメンタリー・ムービー『NEO GAIA LEGEND』を2020年に公開し、そのサントラとして同名のミックステープも〈100%Electronica〉から発表している。

 それでは続いて、NEO GAIA PHANTASY各人およびこのたび初来日を果たすゲスト2組のプロフィールをご案内しよう。

◉ NEO GAIA PHANTASY CRUE

Equip

シカゴ在住。3組のなかでは、コンセプト/サウンドともにVGMからの直接的な影響が色濃いアルバムを制作。前回公演ではファンタジーRPGの戦士のコスプレで演奏するなど、サービス精神も旺盛。コロナ禍以降は肉体改造とガンプラ作りがブームらしい。New GaiaやDJ Prom Nightなどの名義でも活動する。

R23X

カナダ・バンクーバー在住。ほかの2組に比べてHip-Hop/Electronica色の強いサウンドを特徴とする。本職はコナミやタイトーの公式アパレルを手がける〈Yetee〉のデザイナーで、その音楽部門〈Yetee Records〉からは自身やEquipのLPをリリースしている。2022年にはEquipとの共作アルバム『Nameless Dreamers』を発表。

death’s dynamic shroud

LAを拠点とする3人組(略称はDDS)。Vaporwaveを下敷きに、チャートヒットやK-POP、VGM、日本のシティポップまで幅広いサンプルを歪みに歪めた耽美的かつ奇怪な作風が特徴。オウンド・レーベル〈Ghost Diamond〉を中心に膨大な量の作品を定期的に発表するが、それらはメンバーのいずれかひとりのソロやふたりでのコラボなどさまざまなパターンで制作されており、3人揃ってのアルバムには2017年の『Heavy Black Heart』と、昨年リリースの『Darklife』がある。
〈Orange Milk Records〉を主宰し、Vaporwaveにとどまらず数々のアルバムジャケットを手がけるKeith LankinはGiant Claw、TechはDinosaur On Fire、そしてJamesはHCMJやCold Sleepなど、各々ソロ名義でも活動中。
 今回のライブはJamesとTechふたりでの構成であり、アルバム作品としては18年の『NEO GAIA PHANTASY』にて披露されたテイクを収めた『Live From Japan』を発表している。

◉ Featuring Artists

ESPRIT 空想

米Vaporwave最大手レーベル〈100% Electronica〉の最重要アーティスト。代表作は2014年の『virtua.zip』と、同レーベルのオーナー・George Clantonの1st『100% Electronica』をVaporwave化した『200% Electronica』(2017年)。はたしてその正体は……!?

Neggy Gemmy

George Clantonとともに〈100% Electronica〉を立ち上げたLA在住の女性アーティスト。以前はNegative Gemini名義で活動していたが、2021年に改名した。みずからボーカルも取り、軽快なHouseサウンドを得意とする。最新作は2023年の『CBD Reiki Moonbeam』。

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 2019年以降、我々にさまざまな企画を持ちかけてくる役回りはDDSのJames Websterが担っている。この記事が載るころには終了しているが、執筆現在、DDSは上述のGeorge Clantonらとともに全米20か所以上を回るライブツアーを敢行中。連日の演奏と度重なる移動で満身創痍のなか、今回は来日公演を心待ちにしているリスナーにむけてメールインタビューにお答えいただいた。

death’s dynamic shroud。写真左がJames Webster。
Bandcampより)

――NEO GAIA PHANTASYは2018年に初の日本ツアーを敢行されましたが、この3組で行うことになったきっかけはなんだったのでしょうか?  また、みなさんは来日以前にお互いに会ったことはありましたか?

James Webster Kevin(Equip)は2017年に別のミュージシャンたちと一緒に日本を訪れていました。そのときは演奏はしていませんが、自分の音楽と友人たちをフィーチャーした小規模なツアーの可能性を彼は感じていました。私はネット上の友人としてKevinを知っており、彼を通じてMarc(R23X)と知り合いました。Kevinの誘いで私たちはNEO GAIA PHANTASYとして2018年に日本ツアーを行うことになったのですが、そのまえからSNSを通じて絆を深めていました。Techと私は東京で初めてKevinとMarcに直接会い、すぐに打ち解けました。実際に会ったことでより親密になり、ツアーがほんとうに楽しい冒険になったことが嬉しかったですね!

――コロナ禍を乗り越え、『ElectronICON』を経て、現在DDSはGeorge Clantonとの全米ツアー中かと思われますが、アメリカ本国でのVaporwaveの盛り上がりはどのようなかんじですか?

James コロナ禍ではオンライン・コンテンツに注力しました。私たちは『Virtual Desktop Experience』など多くのオンライン番組を制作し、Georgeは『BIG STREAM』というVRストリーミング番組やインタラクティブ・ビデオゲームを開発していました。しかしそうしたオンラインでの試みの楽しさとは裏腹に、ライブ活動が再び始まったときはホッとしましたね。今年の『ElectroniCON』は大成功だったし、今回のツアーも盛り上がっています。これほど多くのライブを行い、大勢のファンに会えるなんて、ほんとうに素晴らしいことです。

NEO GAIA PHANTASYの配信番組「The Virtual Desktop Experience (Ep 44)」

 DDSやGeorge ClantonはVaporwaveムーブメントをルーツとしていますが、近年は新たなサウンドへと成長し、進歩を遂げています。いま行なっているツアー(DDS、Frost Children、George Clantonが出演)はエレクトロニック・ミュージックのコンサートというよりも、ロックショーのようなかんじです。GeorgeとFrost Childrenは生ドラムを導入しており、3組ともギターと生ボーカルを多用しています。いっぽうで、GeorgeがESPRIT 空想として演奏するときは、古典的なVaporwaveサウンドに近いように感じられます。『ElectroniCON』以降、(おもにオンライン上に存在していた)コアなVaporwaveコミュニティは、多くの著名Vaporwaveアーティストを招いて同様の小規模なイベントを開催するようになっています。

――4年振りとなるNEO GAIA LEGEND II(東京公演)ならびに日本ツアーへの意気込みをどうぞ。

James ようやく日本に戻ることができ、とても興奮しています! コロナの影響で予定がすべて変更され、こんなに長いあいだ日本を訪れることができなかったことに心を痛めていました。NEO GAIA LEGEND IIは、ESPRIT 空想とNeggy Gemmyが初来日する素晴らしいイベントになるでしょう。日本の観客には存分に公演を楽しんでもらえると思いますし、日本にいる仲間たちにまた会えることにみんなワクワクしています。ツアーを終え、久しぶりの安らぎを求めて渋川の温泉に行くのも楽しみです!

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◉ EVENT INFORMATION

東京公演 “NEO GAIA LEGEND II”

11/18 (sat) OPEN 14:00 / START 14:30-
渋谷CIRCUS TOKYO
前売 ¥3,500.- / 当日¥4,000.-(学生証提示で¥2,500.-)
TICKET(前売予約):e-plus

ACT (main floor):
ESPRIT 空想 / death’s dynamic shroud / Neggy Gemmy / Equip / R23X
bl00dwave / ミカヅキBIGWAVE / Tsudio Studio / さよひめぼう / DJ badboi
DJ (sub floor):
mirrorball inferno / デラ / 数の子ミュージックメイト / 駒澤零 / seaketa
VJ:
玉田伸太郎 / rxsxhxc

Presented by New Masterpiece / Supported by Local Visions

神戸公演 “NEO GAIA PHANTASY IN KOBE”

11/24 (fri) 17:00-24:00
神戸RINKAITEN
Reserve: ¥2,500.- (+1D) / Door: ¥3,000.- (+1D)

ACT:
ESPRIT 空想 / death’s dynamic shroud / Neggy Gemmy / Equip / R23X
Tsudio Studio / Adiem Ouskyer Reyskuo / pool$ide / UMrooms / Milk Talk
DJ:
nishimuraa
VJ:
Yille

このほかにも追加公演があります。詳しくはこちらをチェックください。

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連載「ヴェイパーウェイヴ・アーカイヴス」過去回はこちら


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