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2拠点生活のススメ|第132回|言葉にできない気持ち

排気ガスにまみれたガードレールの向こうのドブ川に、藤の花が咲いていた。

幹はすっかり雑草にかき消されて、薄紫の花だけがぶら下がるように川に突き出ている。コロナ禍ということもあるのだろうか、車だらけの幹線通り沿いを歩く人など誰もいない。きっと、誰に見られることも無く咲いていたんだろうな。

藤って、藤棚だったり、もっと大切にされて咲いているべき花なんじゃないの。雑草にまみれたドブ川に、咲くような花じゃ無い。

一人、藤の花を見ていると、良く分からない怒りのようなものがこみ上げてきた。


今日は、とてもいい天気で、歩いていると汗ばむほど。川西に帰ってくるとどうしても運動不足になるので、散歩がてら遠回りしてタバコを買いにきた。冬の間に溜めた脂肪がまとわりついたまま、そろそろ少しは落とさないと腰痛がまた顔を出し始める。そんな思いで、偶然たどり着いた藤の花だった。

藤にしてみれば、どこで咲こうが勝手、お前ごときに同情なんかされる覚えは無いと思っているのだろうか。よく見ると蜜を集めにハチ達がたくさん集まっていた。人に見られるから幸せというわけでもないということか。

そう思うと、妙にワイルドに見えてきた。ひょっとして、野生?

調べてみると山藤という野生種があり、ツルを他の木々に巻き付けてよじ登り、薄紫の花を咲かせるとあった。雑草に幹が隠れていたというは錯覚で、他の木に絡みついていただけ。絡みついたツルの力が強く、時に他の木を絞め殺してしまうこともあるという。


雲一つ無い青空とは対照的に、急にモヤモヤとした気持ちがたちのぼった。


季節は、確実に初夏へと移り変わっているようだ。

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