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蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

1年を24の季節に分ける二十四節気。
さらに細かく72に分けた七十二候(しちじゅうにこう)というのがあるんですね。
季節ごとの鳥や虫、植物、天候などの様子が72の時候の名前になっていて、なんと約5日ごとの自然の変化を捉え、きめ細かな季節の移り変わりを伝えている。

そしてまさに今の時候が、この「蚕起食桑」ということになるようだ。
読んで字のごとく、蚕が桑の葉をたくさん食べて成長する頃という意味。昔から貴重な絹糸を生み出すことで大切に育てられてきた蚕。人々の暮らしを支えてきた「おかいこさま」が、いよいよ起き出して、食欲旺盛に桑を食べるというのは、人々にとって待ちに待った時期であり、微笑ましい光景でもあったんだろうな。

ワカメ漁で使った錨、乾燥させた後、コールタールを塗って再生し、また来年使用する

ここ鳴門土佐泊では今の時候、ワカメ漁が終わり、少し前から港にはワカメを沈めていたイカリがたくさん干されて、来年への準備が始まっている。一方で昆布を育てていた漁師が収穫を終え、あちこちで天日干しする姿が見られるようになった。

鳴門の七十二候ということで言うと「漁師、昆布干す」ということになるのだろうか。風にそよぐ昆布というのも悪くないし、微かに昆布のいい香りが漂ってくる。

風になびく天日干しされた昆布

歳を重ねたせいかもしれないけれど、自然の小さな変化に目が行くようになった。改めて、こうした変わらぬ季節が繰り返されていくことに、感謝の気持ちが自然と湧いてくる。

巷では、今アウトドアブームがますます加熱しているようだ。
自然を愛でることにブームがあるというのも不思議なことだけど、それだけ普段自然を遠ざける暮らしを送っている人が増えたとも言える。心地よい自然だけを享受し、その他の自然は無いことにする。例えば、ワンプッシュで1年間虫が寄らないという恐ろしい殺虫剤も、そうした人々の思いを反映したものなんだろうな。

対岸の城跡から眺めた小鳴門海峡

目の前の小鳴門海峡は、海の道でありながら、風の通り道でもある。
晴れていても、風が強いということも良くある。木々を揺らす音だけでなく、ここにいると風そのものが唸る音も時々聞こえてくる。

いい風が吹くと、暑くても心地よく過ごせてありがたいが、天気が崩れ雨風が強くなると、トタンが雨に叩かれ、風に煽られ唸るので、リノベーションしたとはいえ、ここが倉庫であることを否が応でも思い出させる。けれど、その音でさえパンクロックのような音楽に聴こえないこともない、それも含めて面白がる、それが海と共に暮らすということなんだと、最近少し逞しくなったような気がします。

そういえば、「おかん」が亡くなって落ち込んでいたのだが、造船所跡から姿は見えないが、子猫の鳴いているような声が聞こえるようになった。「おかん」が残した子供たちなんだろうか・・・、何とか生き抜いて、姿を見せてほしいな。

ここにいると、そうした普遍的な自然の営みを強く感じることができる。
それは何よりの癒しだし、心の栄養なんだと思う。

今年も咲き始めた紫陽花

近所の潮明寺(別名:紫陽花寺)の紫陽花も咲き始めた様子、何より風が心地よいこの季節。癒しを求めているという皆さん、NOMAyadoを訪ねてみてはいかがでしょうか・・・。

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