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2拠点生活のススメ|第173回|心配りのチカラ

鰹出汁の効いたカレーが食べたくなって、蕎麦屋の暖簾をくぐった。

カレー蕎麦とおにぎりというのがいつもの定番なのだが、メニューをめくると「エビフライ3尾入ってボリュームたっぷり・カレー丼」という写真が目に飛び込んできた。ジム帰りでお腹がぺこぺこだったので、一瞬で心を奪われる。

「うどんor蕎麦付のセットメニューもあります」とあるが、セットの蕎麦はミニサイズのよう。あまりにお腹が空いていたので「すみません、このカレー丼セットの蕎麦って大盛りできますか」と聞いてみた。

すると「うどんでしたら、無料で半玉増量できますよ」と嬉しい返事。じゃあ半玉増量の冷たいうどん付でお願いしますと意気揚々と注文。

すると思いがけない返事が・・・「すみません、こちらのセットは温かいうどんかおそばになるんです、ごめんなさいね。」と申し訳なさそうな店員。

折しも外は30度といった夏日、カレー丼だけでも熱いのに、温かいうどんは正直辛いなと思ったが、あまりに店員のおばさんが申し訳なさそうな顔をするので、「では、熱いうどんで・・・」と、心良く引き下がることにした。


カレー丼を待っている間、店内を見回していると、お客さんのほとんどは中高年のおばさん。この店は甘味処でもあるので、おはぎやわらび餅を楽しむ人も。なるほど、どうりでおばさま達に人気がある訳だと納得。

さきほど、注文をとってくれたおばさんが、各テーブルの様子をうかがい。「熱いお茶もお持ちしましょうか」とか「薬を飲まれるなら氷無しのお水をお持ちしましょうか」とか、とても細かい心配りを見せている。

美味しかったと伝えられると、厨房に「こちらの奥様に美味しかったって言っていただきましたよ」なんて声を掛けたりもしている。

よく考えると、おばさま達の集う店は、店員の気配りが優れた店が多い気がする。幾ら味が良くても、接客態度の悪い店におばさま達は寄りつかないものだ。


カレー丼と熱いうどんを平らげて、汗を拭いていると、ゴメンなさいねと、さきほどの店員が冷たい麦茶を注ぎに来てくれた。

思わず、ありがとうございます、美味しかったですと声を掛ける。

人は感情の生きもの、やっぱり心配りって大切なんだと思い知らされた。

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