2019年にリリースされた新書体

2019年にリリースされた新書体(まとめ)

2019年にも多くのフォントがリリースされました。すべてではありませんが、おさえておきたいものをピックアップしました。
最後に「まとめ」もあります。

花とちょうちょ

「鈴木メモ」さんの新作。「パンダベーカリー」フォントの作者であります。とにかく、これがスゴい。収まり感といいますか、万能感ハンパない。2019年のイチオシです。

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写真やイラストにちょっと添えるような気軽な手書き文字が欲しいな~と思って作り始めました。
原稿用紙の文字のようなまっすぐな文字ではなく、店頭POPなどななめに書き込みをしたようなレイアウトで自由に使うことを想定しました。例えば商品写真と文字とが、花とちょうちょのような関係になるイメージです。

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作例では、ゆったり目になっていますが、「オプティカル、文字ツメ30%」くらいがいい感じ。

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このレベルまで来たら、せっかくなので、同じかな文字が連続するときに形状が揺らぐと理想的です(手書きでは、まったく同じ形状の文字が連続することはないため)。リガチャで実装?

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姫明朝ともえごぜん

フロップデザインさんによる流れるような明朝体フォント。
https://www.flopdesign.com/himemincho-font/tomoegozen.html

大刀と強弓の女武者・巴御前をイメージした明朝体。舞うような優雅さと、軽やかな線の流れが特徴です。日本の伝統的なデザインを必要とする場合や、優雅な雰囲気を加えたいときに活躍します。

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Adobe Handwriting

Ernie、Frank、Tiffanyの名前を冠した手書きフォントが、アドビのオリジナルフォントとして、Adobe Fontsに追加。
https://fonts.adobe.com/fonts/adobe-handwriting

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実際には、2012年にAcrobatの署名用として開発されたものがリファインされたもののようです。

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明朝体風欧文フォント「Minglish」

大文字は漢字、小文字はひらがな、という明朝体風アルファベットフォント。

https://note.com/yoritumtumtum/n/n0e76dc003ce3

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日本人にだけ読めないフォント」として話題になった「Electroharmonix」を彷彿させます。

Helvetica Now

定番中の定番フォントの「Helvetica」の新作。

ご存じの方が多いと思いますが、リニューアルは2回目。

• 1957年 Helvetica
• 1983年 改訂版の「Neue Helvetica」が登場(DTPへの対応)
• 2019年 Helvetica Now

ちなみに、「Neue」(ノイエ)は、ドイツ語のNew。New、Nowと来て、次は…

用途やサイズに合わせて最適な字形や字間が選べるように、「Micro」「Display」「Text」の3タイプを設定。ウェイトは「Hairline」「Thin」「Extra Light」「Light」「Regular」「Medium」「Bold」「Extra Bold」「Black」「Extra Black」の全10種類を用意し、そのうちDisplayが10種類、Textが8種類、Microが6種類。それぞれに斜体(イタリック体)を設けることで、全48種類構成とした。

一覧表にしてみました。

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ちなみに、Displayは「画面表示」という意味ではなく、大きめのフォントサイズ用いるタイトル用のサイズのことです。

アドビのサイトでは、次のように定義されています。

A font that has been designed to look good at large point sizes, often for use in headlines.

リンク先が消えてしまったのですが、フォントブログに引用がありましたので、それを引用します。

Adobeのサイト(Optical Size)によると、それぞれCaptionは図版等のキャプション用 (6pt–8pt用)、Textは一般的な本文用 (9pt–14pt用)、Subheadは小見出し用 (14pt–24pt用)、Displayはタイトル用 (24pt以上用) として書体のデザインが調整されている旨が書かれています。
ニックスを含むMonotypeのデザイナーチームは数年前、Helveticaをリニューアルするときがやってきたと考え始めた。無個性で目立たないはずのこのフォントも、あまりにもいたるところで使われたことで、鼻につくようになってきたからだ。

IllustratorやInDesign、Photoshopでは、「ExtraBold」は「XBold」のように表示されます。

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Hellvetica

HelveticaならぬHellveticaが話題になりました。Hellは「地獄」という意味ですが、視覚的な破壊力に発狂します。

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ステキなのがHelveticaの開発元のMonotypeの反応。

それにしても、Monotypeに“つぶされる”という恐怖はないのだろうか? ロイフは「削除については心配していません」と言う。「もし削除されても、HelveticaがHellveticaを地獄に還すとしたら、もっともなことですから」

SF Compact Rounded

SFフォントの丸ゴシックがリリース。Apple Cardの名前の印字に使われていたことで話題になりました。

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New York

AppleからSerifフォント「New York」がリリース。https://developer.apple.com/fonts/

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This all-new, Apple-designed serif typeface is based on essential aspects of historical type styles and is designed to work on its own as well as alongside San Francisco.

6つのウェイト(+Italic)とSmallおよびMedium、Large、Extra Largeの4サイズで提供されています。

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Emoji(iOS 13.2)

iOS 13.2から、WomanでもManでもなく「neutral」457の絵文字が追加されました。

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また、398の絵文字が新しくなりました。

欧風花体(おうふうかたい)

カリグラフィーの特長を取り入れた エレガントなロマン風書体がダイナフォントからリリース。

ダイナフォント年間ライセンス「DynaSmart」シリーズに収録され、残念ながら単品での購入は不可。

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TPスカイラウンド

タイププロジェクトから「TPスカイ」の角アールの度合いを選べるラウンドのシリーズが加わりました。

https://typeproject.com/fonts/tpskyround

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タイププロジェクトからは「TP国立公園明朝」もリリースされました。

「日本の国立公園らしい品格や風合いを持ちつつ、看板等に使用した際の視認性を確保する」という、環境省からの要望を元に提供したTP国立公園明朝は、現代的な骨格を持ったスラブセリフフォントです。スラブセリフフォントとは、セリフ部分が直線的で、縦横のストロークとセリフの太さの差が小さい書体です。 TP国立公園明朝の和文部にはTP明朝のローコントラストを採用し、欧文を新たに開発しました。

なお、タイププロジェクトでも、Axisフォントなどを年間定額で利用できる「TPコネクト」がはじまっています。

TPコネクトは、タイププロジェクトが提供するフォントを年間定額でご利用いただけるサービスです。AXIS Font、AXIS Latin Pro、AXISラウンド、TP明朝、TPスカイ、濱明朝のすべての書体ファミリーを、年額30,000円でご利用いただけます。

奈(なん)-L

フォントワークスの新書体。
https://www.fontworks.co.jp/news/archives/368

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全体的に上部と左側に集約させたデザインにし、一点から出た光が、広がり進むさまを表現。左右、上下のスペースの不均等さは「集中・集約からの拡散・発散・飛翔」、「ハジケ(弾け)る様」をイメージしています。

かなフォント「令和」

砧書体制作所から改元にちなんで、その名もズバリ「令和」というかなフォントがリリース。

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同じ砧書体制作所からリリースされているiroha gothic ファミリーの「22momi」っぽいテイストです。

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Soffa Sans

IKEAがソファで作ったフォントを無償公開。組み合わせ自由なソファのシリーズ“VALLENTUNA”にヒントを得たフォント。

パルレトロン

パルラムネに続く「パル」シリーズ第二弾として、西洋レトロとゴスロリがモチーフのフォントがフォントワークスからリリース。

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https://fontworks.co.jp/column/archives/37

「西洋レトロ」のデザインは「カリグラフィー」「ブラックレター」「ゴスロリ(装飾)」の要素を混ぜて作成しました。

赤のアリス

モリサワからタイプバンクフォント2019年新書体として「赤のアリス」がリリース。並べると、全然違うんですが、奇しくもパルレトロンと同じ6月にリリースされています。

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タイプバンクブランドのかな書体「TBかな 赤のアリス」に漢字を追加した、レトロモダンなデザイン書体です。平筆由来の西洋風ストロークとクリアで柔らかなエレメント・骨格が特徴です。ゲームやコミックの表紙など、見出しやキャプションで可愛らしさを演出したい際に最適です。

ニューグレコ

楷書体「グレコ」をベースにJIS2004に対応した「ニューグレコ」がフォントワークスからリリース。

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漢字は、「草かんむり」と「糸へん」を、日本でなじみのある現代的な字形に変更しています。さらに、漢字に合わせ、新しい「仮名」を制作しました。

剣閃(けんせん)

モリサワ新書体 2019の1書体としてリリース。

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見出し用に作成された骨太で力強い印象を持つ筆書系デザイン書体です。筆先のニュアンスまで再現された躍動感のある筆使いと、しっかりとした硬質な黒みが特徴です。重厚な肉声を想起させる、強いインパクトを持つ作風に仕上げています。

小琴 京かな(こきんきょうかな)

モリサワ新書体 2019の1書体としてリリース。「かな」フォントと思いきや、漢字なども持っています。

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力の抜けたやさしい風合いの筆書系デザイン書体です。可愛らしくアンバランスな骨格と、始筆・収筆部に丸みのある特徴的なエレメントを組み合わせた漢字に、ゆったりとした運筆で丁寧に書かれたかなをマッチングさせました。

小琴 遊かな(こきんゆうかな)

モリサワ新書体 2019の1書体としてリリース。こちらも「かなフォント」ではありません。

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力の抜けたやさしい風合いの筆書系デザイン書体です。可愛らしくアンバランスな骨格と、始筆・収筆部に丸みのある特徴的なエレメントを組み合わせた漢字に、軽やかで親しみやすい表情のかなを合わせています。漢字に比べて小ぶりに設計されたかなにより、文章に明るく楽しい印象のリズムを与えます。

秀英にじみ角ゴシック金/銀

ビースト明朝

フロップデザインからの新書体。
https://www.flopdesign.com/syotai/beastmincho.html

「異世界小説・ファンタジー小説に合う明朝体」をキーワードに開発した「かな書体」です。縦書きと横書きで字形が異なる、新しいコンセプトが特徴のフォント。縦書きは、スタンダードかつ現代的でゆったりとした本文体のイメージ。横書きは、少しスピード感とインパクトのあるデザインで、見出し向きです。

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商用版には「ビースト明朝ラウンド」が同梱されています。


松月虹

楷書と行書の中間を目指して制作されたダイナフォント2019年新書体。

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松月虹は、楷書と行書の中間を目指して制作されました。伝統的な書道の規範に縛られず、独特な書きぶりで現代感を表現しています。字形は優雅にして明快、流れるような運筆の中においても随所に硬さの残る筆使いを調和させ、剛柔合わせもつ書体であり、そのデザインは、神秘的な月虹に優しく照らされ浮かび上がる松の木のようです。

 まとめ

全体の傾向をまとめてみました。

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 • 手書き風フォントは、より温かみのあるタッチに
 → 特筆すべきは「花とちょうちょ」のこなれ感
 • 「欧風花体」や「パルレトロン」など、装飾系も次のレベルに
 • 大ニュースはHelvetica Now。そのカウンターでHellveticaの抜け感…
 • 「TPスカイ」や「SF」の丸ゴシック/ラウンド展開は意外

フォントの作者、および、ベンダーの皆さんに感謝。

お知らせ

毎年、年末に開催されるCSS Nite Shiftというイベントで、「フォントおじさん」こと関口 浩之さんと一緒に、その年の文字関連を振り返るセッションを担当しています。

2019年にリリースされた新書体、Webフォント導入事例などのトレンドなど、フォント/文字にまつわるトレンドをまとめます。

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こちらの動画を公開しています。








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