中国は民主化してはいけない

中国に来る前と来た後、自分の中で最も変化したのがこれ。
特に香港の学生デモのニュースなんて見ちゃうと、その純粋さと勇気のキラメキに胸打たれ、中国って人間的じゃないよな、なんて勝手な感想を持っていた。
それが表題のように思ってしまった理由は3つ。

一つは、中国は官僚主義であるということにおいて、日本と大して変わらないということ。中国の「共産主義」と日本の「三権分立」は誰が見ても看板に偽りがありまくりで、両方とも「官僚主義」と呼ぶのが最も近いと感じる。問題は官僚の腐敗だが、習さんが国家主席になった後、100万人を超える腐敗官僚を処分したことで、凄まじい勢いでクリーンになった。

二つ目は、選挙なんて結局はスローガンと戦術で決まってしまうということ。これは必ず勝つという「選挙コンサルタント」が日本にいることからもほぼ証明されている。
スローガンといえば、日本の民主党は「政権交代。」で政権をとったし、トランプは「Keep America Great!」で大統領になった。このスローガンという点において、中国語はやばいと感じている。短く美しい一言で、人の心に響く言葉が作れてしまう言語なのだ。民主化された暁には、スローガンだけ完美で中身の全くない政党が政権をとってしまう可能性が、他の国以上に高いと思われる。

ここまでは民主化「しなくてもいい」という話だが、最後に「してはいけない」理由を述べる。どこの国でも、ちょっとしたはずみで極端な党が票を伸ばすことはよくある。中国で考えられる、選挙で勝てそうで極端な党といえば「反日」である。(隣の国を見れば実感できるだろう)
正直、中国に来てから反日を感じたことは皆無だし(アメリカで人種差別を感じたことは少なくなかったが)、中国の動画評価サイトでは世界数多の映画やドラマを押しのけて「君の名は(你的名字)」が最も高い点数であった。しかし、ネットで動画も見られないような層がまだ3割以上いると言われている中、彼らのリアクションは想像もできない。

人口1000万人を超える、日本人が名前を知っているような都市の合計人口も2億人程度に過ぎない。ちょっと口のうまい奴が右翼政党の党首になって、田舎の素朴で純粋な人たちをだまくらかして政権を取ってしまう可能性が「少ないとは決して言えない」と思われる。極論を振りかざして政権を取り、その勢いで実行(武力行使)に移さざるを得なくなった時に、最も標的になりやすいのは日本だろう。そんなリスクが「極めて少ない」レベルでも勘弁してもらいたいのに「少ないとは決して言えない」レベルはなんとしてでも避けなくてはならない。民主主義という絶対正義を掲げるのがDNAに染み付いているアメリカ人が、離れている地の利も生かして民主主義化を叫ぶのはやむを得ないことだ。だが、火山の麓に暮らしている日本が、火口に石を投げるようなことは決してしてはならない

まあこう言うのも、今の中国の政府がとてつもなく頑張っているのが伝わってくるからなんだよね。俺は北京に住んでいるが、来る前までは鼻呼吸をすれば鼻の穴が一瞬で真っ黒になると思っていたけど、そんなことはなかった。これも、とてつもないスピードでいろんな対策を取ったことは明らかだ。秋には週に1度くらい空気が悪い日(と言っても、日本のニュースで見たような黒い霧みたいのは見たことがない)があるけど、必ずスマホで注意が促される。そんな日はマスクをつけて外出するが、大抵は面倒になって途中で外すレベルで「この程度で注意しないでくれよ」と思ってしまうほど敏感に対応している。民主主義とはまた違った「国民に対する恐れ」を感じるのだ。

今となっては、外国からは民主主義をせっつかれ、国民には「政府は信用できない」と言われ、俺だったら昼休みを待たずに鬱が悪化して早退してしまうような中、一つ間違えて内乱なんかにならないよう的確に民意を掴み素早い対応をし続けている中国政府関係者には哀れみすら感じる。少なくとも、この哀れみを抱かせるほどの努力を今の体制が行っている間、そして高度な教育を受け洗練された人たちが明らかに国民の大多数を上回ったと確認できるまで、中国は民主化してはいけない

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