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プロモーション施策の統合分析について思う事

こんにちは。高瀬です。株式会社ハートラスという会社で取締役CSMOとして経営、戦略策定、事業全体を管掌しています。

主に手掛けているのは「インハウス支援」です。前回のエントリーに引き続き、今回は、オフライン・オンラインを跨いだプロモーション施策の統合的な分析について書いてみます。

我々なりにこれまでやってきた結果の最適解となります。少しでも参考になれば幸いです。

はじめに

現在、弊社では「Fig A(フィーガ)」と呼ばれる分析サービスを展開しています。

普段、多くの企業ではマス広告、デジタル広告、その他ペイド広告以外のイベント関連やPR、その他多数の施策を駆使し、自社のサービスや商品を「プロモーション」されると思います。この分析サービスは、それらを統合的に分析に組み込み、実際の売り上げや成約数などの目的に対して「何がどれだけ影響があったのか」を可視化するための分析となっています。

主な目的としては、次のプロモーションの際に「どの施策にどれだけお金をかけるか=投資するか」というプランニング時に活かしていただくものとなります。

最近は、インハウス支援の初動として、アセスメントの観点で過去の投資効率がどうだったのか、を見極めるために取り組むことも多くなってきました。

安い、早い、簡単に(ひと昔前の牛丼屋さんのようなニュアンス、、)ということで、最短で10営業日で分析結果をフィードバックできるようにしています。
※副次的に実施したプロモーションの評価や社内向けの報告資料にも展開いただくことも多いです

ちなみに、広告業界ではXICA(サイカ)社が提供しているマゼランが近しいのではと思っています。こちらはツールとして提供しており、数多くの企業に導入されていると思います。

色々とチャレンジしましたが、弊社は分析サービスを型化できないと結論付けましたので、アドホックに毎回フルカスタマイズして分析をしています。

(実際の分析に関しての詳細は勿論異なりますが、クライアントからはたまにマゼランとの違いを聞かれることもあります)

ちなみにXICA社代表の平尾さんとは昔からの知り合いで、経営そのもの、サービス開発、実際のビジネス展開等々、様々なことに対して意見しあいながら、常に刺激をいただいている大切な方の一人です。
この場を借りて感謝したいと思います。(いつも、有難うございます!)

分析サービス誕生の背景

きっかけは、とあるメーカーと仕事をしていた際、新商品をローンチする話が持ち上がった時でした。

確か、ティザーでサイトを用意し、SNSで様々な情報を発信しながら事前告知を行う。そしてアサインしたタレントさんによる新商品発売の記者会見イベントを行い発売開始。並行してTVCM含め、様々な広告が一大キャンペーンとして展開される。そんな全体像だった気がします。

※当時、弊社はトレーディングデスクとしてデジタル広告のプランニングと運用を任されていました。(マス広告を含め、全体のプロモーション設計は大手の総合代理店さんだったと記憶しています)

その流れで、先方担当者から「こういうこと(上記全体像)を考えているので、実際の売上状況を加味しながらデジタル広告を緻密に運用して欲しい。」とオーダーをいただきました。

ちょっと待ってください、と。

「それは無理ですよ、、、だって、メーカーの立場である御社としても売上状況が細やかに分かる状況では無しい、そもそも各施策と売上データが連携してないじゃないですか。」と口から出かかりつつ、ぐっと堪えたことを今でも覚えています。

雑な言い方をすると、いわゆる無理ゲーな依頼でした。

ただ、先方にはECサイトが存在し、そのEC上の売上状況と小売りを通じた店頭での売上に相関があるということだったので、EC側の売上状況に合わせて運用を行い、結果的に満足いただいた(ような)気がします。

ただ、実際に広告活動を通じて店頭でどれだけ売れたかどうかは分かりませんでしたが。(少なくとも、弊社側では分かり得なかった。当時はぶっちゃけて担当者も分かっていなかったと思います。)

そこで、私が思ったことは「もし、今回のようなケースで売上への寄与が可視化出来たら、こんなに嬉しいことはないはず」でした。

失敗と苦悩

多くの方々の協力もあり、晴れて分析サービスを立ち上げることになりました。我々なりに行き着いたアプローチは統計解析(主に重回帰分析)を用いた分析です。特別な手法ではありません。分析に関わっていらっしゃる方々からすれば、しごく一般的な手法と感じると思いますし、我々もそれは理解していました。

色々と考えた結果、その手法が最適であろうと判断し、結果的に分析サービスとしてローンチすることになります。

この分析を実行するにあたって、以下ステップで実行します。

1.必要なローデータをいただく
2.分析するためのデータセットを作成する
3.統計解析を行う
4.分析結果をレポートとして纏め納品する

これも、一般的な流れかと思います。
実際、分析レポート=納品物として問題は特段ありません。が、ここから苦悩と失敗が始まります。

幾つかありますが、最も頭を悩ませたのは、以下のような状況が散見されていたことです。

・分析結果に対して「へー、なるほどね。」という反応のみで終了し、分析結果が何かに使われることが無い
・これも知りたい、あれも知りたい、と終わりなき分析が続く

分析を担当してくれているメンバーと、それなりに時間をかけて提案書を作成し、受注する。からの、同じく時間をかけてデータを収集し、分析を行う。そして、「これでどうだ!」と渾身の分析レポートを提出する。

が、結果として上記のような状況に。。。

そもそも次のプランニングに活かすんじゃなかったっけ?
分析結果はちゃんと出したのに、なんで次から次に追加の分析が必要になるんだっけ。。

そんな心の声が頭の中に響き渡るなか、悶々としていました。

仮説とマーケターの肌感

結論、全てはこちらの問題でした。

1.最終納品するまでのプロセス
2.分析をすることがゴール

この2点が苦悩の根幹にあったのだと思っています。
勇気を振り絞って詳細を書いてみます。

1.最終納品するまでのプロセスを考え抜いていなかった

当初は最終的な納品日までクライアントと詳細に内容を擦り合わせることはしていませんでした。ローデータも手元にあるし、提案書通りに分析もしていく。全く問題ないと思っていましたが、事実は違った。

先方は日々、生活者に向き合い、ユーザーインサイトを考え抜き、いかに自社の商品、サービスを手に取っていただくかを試行錯誤しているマーケターです。また、数多くのパートナー企業と協働しながらプロモーションを設計し、実行しています。

数字に表れない感覚や、関係各社を動かすことを前提とした物事の進め方が各マーケターにはあるんです。いずれも当たり前の話ですよね。

分析上はそういうことだろうけど、実際はこういうユーザーの声があるよ、とか。確かに分析上はそうだろうけど、物理的にその投資配分は出来ないよ。とか。
恥ずかしながら、提出していた分析結果は再現性が乏しかったんですね。左脳だけで考え、分析するという手法にとらわれていたわけです。

2.分析をすることがゴール

上記に付随することです。
マーケターとして、こういうことを成したい。ただ、それをするには分析をしてみた結果を元に、再現性高く物事を実行したい。そのためにこういうことを分析を通じて見出したい。

言い換えると、マーケターとしての「仮説」があったうえで、それを実証するために分析をするわけです。
当時は、その仮説を深く理解することが抜けていました。。。

「〇〇さんは何のために分析をしたいのですか」「〇〇さんが考えている仮説はどのようなものですか」と突っ込んでヒアリングしまくるべきでした。反省しかありません。

もっと沢山の問題点があったかと思いますが、まとめると上記2点だったと思います。そりゃあ「へー」で終わるし、追加であれも知りたい、これも知りたい、となりますよ。

マーケターの肌感に寄り添わず、仮説も明確にしきれないまま、納品に向けて突っ走っていたことが恥ずかしくなりますが、本当に多くの気づきを得られた時期でした。

結果として、目的と仮説の明確化、中間報告を実施したうえでマーケターの肌感との擦り合わせ。この2点を徹底することで、モヤモヤが晴れていったのでした。

最適解へのリアクション

最後に、分析結果に対してのリアクションです。
こちらは、文字通り「結果を踏まえて、次に何をどうすべきか」の部分。

マス広告に関しては、これまで通り(クリエイティブの考え方があるうえで)メディアバイイングを中心としたプランニングへの反映となりますが、デジタル広告においては、そうはいきません。

例えばリスティングは各種損失率を加味したら、これ以上投資を増やせないかもしれない。ディスプレイ広告では、そもそものターゲティング設定を鑑みると、フリークエンシー過多になるため、投資を最大化するわけにはいかない。

等々、実際の運用状況に合わせたプランニングが必須となります。これらは、弊社がトレーディングデスクからビジネス展開していったこともあり、実際の運用の現場を熟知したうえで分析結果を考慮できました。結果、実情に合わせて示唆することが可能となっています。小さなことですが、これが非常に重要。

より再現性をもって、現状の運用状況も踏まえたうえで、分析結果を次のアクションの示唆に転換することがでたわけです。(結果論ですが、、)

当初は、この重要性をあまり認識せずに分析を重ねていましたが、最近では非常に重要な要素となっていますし、むしろ分析サービスの強みにもなっていると実感しています。

分析結果を最適解とし、次のアクションに繋げるには、分析官の脳ミソだけで考えてはいけない。実行ありきの運用視点、そもそもの広告知識ありきで分析結果を鑑みなければ、この分析の価値が半減すると強く感じています。

さいごに

個人的には、この分析に限らずペイド広告が関わる分析においては、分析官の発想とマーケターの観点、そもそもの広告知識の3つが合わさらないと、片手落ちの分析結果もしくはリアクションになってしまうという大きな問題点があると思っています。

逆に言えば、分析のみの「作業」の価値は半分くらい。残り半分はマーケターの肌感と実行フェーズを加味した現場感覚の有無が占めていると思います。

今後も、これらを全て網羅した観点での分析を心掛けていきたいと強く思います。

最後になりますが、この「Fig A」というサービス名は、かの有名な小霜オフィスの小霜さんに命名いただきました。

なかなか、こういった機会をいただけるものでもありません。合わせて、小霜さんにも感謝したいと思います。

今回も長文にもかかわらず、最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。