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糖尿病に対して漢方でできること

漢方の世界でも糖尿病は存在し、糖尿病のことを消渇しょうかつと言います。やっぱり昔から存在する病気なのですね。
体内の陰陽のバランスが崩れることによって発症すると考えられていました。
「消」はいっぱい食べても痩せてくる糖尿病の特徴を表し、「渇」は水を飲んでも飲んでも喉が渇く症状を表しているそうです。

治療に関しては、血糖値を下げるというよりも、体全体のバランスを整えることを重視し、糖尿病になる体質を改善するといった考え方です。
糖尿病発症の原因についての考え方は現代医学とは全く違うので、「漢方で糖尿病が良くなるのか?」と思うかもしれません。科学的根拠に基づくというよりは中国4000年の歴史で積み上げた結果という感じなので。
ただ養生については現代医学と同じようなことが言われています。食生活を見直し、ストレスを解消し、不規則な生活を改善しようというものです。そこが同じなら、得られるものもあると思いませんか?

今回は、とてもおもしろい考え方なので、漢方における糖尿病についてのお話をさせていただきたいと思います。


漢方における糖尿病のこと

昔は食後高血糖だとかインスリンがどうのと言った体の中の詳しいことはわからなかったので、体質や糖尿病の症状ごとに薬を用意していました。

糖尿病は大きく3つのタイプに分けられます。

①上消(多飲タイプ)

喉が渇き、いっぱい水を飲んで大量に汗をかくのが特徴。
飲食の不摂生、ストレスや怒りなどの精神刺激によるの陰虚が原因。

飲食の不摂生とは、甘いものや辛いもの、脂っこいもの・味の濃いものなどをいっぱい食べたり、アルコールを飲みすぎたりすることです。
陰虚いんきょとは体に潤いをもたらす「陰」の気が不足して、潤っていない状態で、冷やす力もないので熱を帯びてきます。
暴飲暴食やストレスによって、水分を全身に分配しているとされる「肺」が乾いて熱をもち、咽を潤すことができない状態と考えられています。


②中消(多食タイプ)

いくら食べても空腹感があり、食べているのに痩せてくるのが特徴。
飲食の不摂生、ストレスによるの陰虚が原因。

暴飲暴食やストレスによって、消化吸収にかかわる「脾胃」に熱がこもり消化機能が異常に高ぶっている状態と考えられています。


③下消(多尿タイプ)

トイレの回数も1回の尿量も多くなり、尿に栄養分が流れ出て、にごりや泡立ちが見られる。
過労や性生活の不摂生によるの陰虚が原因。

「腎」の水分代謝が弱まり必要な水分が排出されてしまう状態です。


それぞれの症状は現代医学での「糖尿病の自覚症状」でいわれているものと同じですね。ただ、その症状が起こる原因の考え方が違うので、治療法も違います。

漢方では、人間の体は細胞でできているなんて考えず、「気・血・水」でできているとされています。
気は体のエネルギーで、生命活動を維持する力。血は体を潤し、栄養を運ぶ役割。水は血以外の体液で、体内の水分バランスを保つ。

この気血水の生成・貯蔵・運搬を担っているのが五臓とされ、「肝・心・脾・肺・腎」のことを指します。五臓六腑に染み渡る・・・の五臓です。

漢方での五臓は「臓器」そのものを指すのではなく、臓器を含むもっと広い意味で「生理機能」を示しています。
西洋医学を勉強した人ほど頭の中がこんがらがってしまうのですが、おもしろいところでもあるので、沼ることも多いと思います。

五臓が不調だと、気血水のバランスが崩れて病気になってしまう。なので、どの臓に問題が起こっているのか(どのタイプの糖尿病なのか)を理解して、治療法を決め、体のバランスを整えていくことになります。

合併症の考え方

陰虚で熱がこもった状態が長く続くとさらに水(津液)が消耗し、血液粘度が高くなり瘀血おけつ症を併発すると考えられています。現代では血液ドロドロと表現される状態です。
これは現代医学でいう合併症で、神経症や網膜症、心筋梗塞・脳梗塞などの病気が含まれています。

消渇(糖尿病)の治療

消渇の状態や症状、部位、その人の体質などを分析して、治療法や漢方の処方を決めていきます。
漢方薬については数百種類あるそうで、専門のDr.や薬剤師にしっかり相談する必要がありますね。

代表的な治療方法

①滋陰清熱:陰の不足を補い、熱を冷ます
②益気生津:気と津液を補う
③調和陰陽:陰陽のバランスを整える

糖尿病の養生法

現代医療同様、食生活を整え、運動を心がけるよう言われています。昔から基本は同じなのですね。

①5大栄養素のバランスを整えた食事を心がける(特に炭水化物の割合が多くならないように注意する)
②アルコールとタバコは控える
③揚げ物や脂っこいものは控える
④辛いもの・甘いもの動物の内臓などは控える
⑤毎日食後1~2時間経ってから20~30分歩く

これに加えて、陰陽を整えるような薬膳食材を食事に取り入れることが推奨されています。

まとめ

糖尿病に対して漢方でできることは、血糖値を下げるというよりも、体全体の陰陽のバランスを整えて糖尿病になりやすい体質を改善していくことです。

現代医学の治療に加えて、食事療法の範囲内で薬膳を取り入れていくことはとてもおすすめな方法だと思います。
次回はやっと薬膳食材についてまとめたいと思います。よろしくお願いします。

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