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服を語りたい 2.

「アズディン・アライアのプレタポルテ」

前回書き殴った駄文の続編です。

今回もスカートです。
前回をお読みいただいた方はありがとうございました。
重複になりますが、紹介するペンシルスカートはファッションスクールで一番初めに学習するカテゴリ。洋服を語っていくにあたっての一歩目にはちょうど良いでしょう。
メンズの皆さんにはひょっとすると退屈、と言うか、リアリティが無くってつまらないかも。でもでも。そもそも、このブログで語られる洋服にリアリティなんて無いんです。入れるつもりも必要も無いです。
したがって僕がこれらを着てるわけでも履いてるわけでも無いです。(足出すの苦手ですし。)なので今後出てくるそれらは完全に蒐集という趣味のために集まったものです。着るやつもありますが。
絵を買うときに実用性なんて考慮して買う人いないでしょう。同じ感覚です。

この緊急事態時代、感染蔓延防止措置と言う名目のもとに人が求める娯楽は次々に制限されてますが、お金の「無駄」遣いに当たるそれら娯楽がどれだけ人間の心を潤してきたかを肌で知る貴重な機会になってしまいましたね。
折角東京に越してきたというのにバーでお酒を飲むと言う最大の贅沢を奪われ、僕の心はカラカラです。アル中カラカラです。

勿論この措置自体を恨んでたりはしません。各自の取る行動のベクトルに齟齬こそあれど、そもそも行動しているということは動機があるということ。
その動機が道徳に背いてたり、所謂、悪いもの、であればむしろ非難し易くて簡単だったのですが、人を抑え込む側とそれに反発する側の動機が「大切なものを守りたい」って1点で合致してしまっているので本当に難しい。
同居人が「LOVE&PEACE」が成立しない理由の話をしてくれましたが、それに近いんじゃ無いですかね。

まあ、話を戻すと、このブログに載る服ってのはその「無駄」が大いに含まれています。
書いてる僕がそれらの素晴らしい発想や技巧の束を「無駄」だとは1ミリも思っておらず、ある種の謙りを持ってこう書いていることは一応書き残しておきます。
「住居や家具の設計の際にそれらの堅牢度を上げるために意図的に入れられるゆとりのことを「あそび」と称するのマジ秀逸。そう、遊びが無いとみんな壊れちゃうんだよ」みたいな旨のツイートを100万回リツイートさせていただきました。

さて、今回はこれ。

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さてさて。
どうでしょう。生地はレーヨン×シルクのソフトツイル。
線図も入れますね。

アライアベージュ前

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80年代にイッセイミヤケやベレッタ、モンタナ達の間で多く見られたポケットデザイン。
ポケットを展開して膨らませ、アウトラインにステップをつける。と。
このスカートにおいてのこのディテールは、ウエストから数センチ降りたところにこのステップを入れることによって錯視的にウエストを細く見せる、と言う意図が込められているんじゃないでしょうか。

そしてまさかのフックベント。
これの意図は納得いくところまでは解読し切れませんでした。数ある洋服の中でも一際女性的なイメージのこべり付いている膝丈ペンシルスカートにアイビーの香り漂うフックベント。
真逆の要素のミックス。渋いですよね。うん、浅い考察になっちゃった。

そして極め付けはヒップデザイン。
言いたいこと、伝わりますかね。
ウエストから伸びる2ダーツと、右ヒップポケットのそれぞれがぐにょっと傾いてます。
このブランド以外でこれをやってると、「手の届きにくい後ろポケットは、少しでも手を入れ易くなるよう傾けてあげよう!」ってところでしょう。機能に由来したデザイン。このスカートにおいてもその効果はあるんでしょうがそれはあくまで副産物。そして何より、ダーツが傾いていることの説明にはなりませんよね。

さて、僕が思うに、女性の身体を誰より重んじるアライアでのこれは、ヒップの丸み、記号性の強調です。
ポケットの傾きは円をなぞるもので、ダーツの傾きは円に対して垂直に入れる事により「丸/円」を強調するもの。
ヒップ中心から放射状に広がる円状のラインをなぞったライン配置でしょう、というのが個人的に納得のいく落としどころ。

「機能美」とはちょっと違うのかな。
「美」を妥協無く追求する姿勢の美しさ、みたいなものを感じます。
かっこいいなあ。

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デザインの端から端まで美学が本当に行き届いてる。
アライアの服って本当に高いんですけど、女性に生まれてたらこのブランドが似合う人になろうと頑張ってたんでしょうね。


お読みいただきありがとうございました。
アライアの服は解読が楽しいのでまた載せるかも〜〜〜


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