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【あか】レネ・ヴァイラーについて再確認(前編)


日本サッカーの名門・鹿島アントラーズは、クラブ初となるヨーロッパ人監督レネ・ヴァイラーの就任を発表。

コロナ禍の入国制限で、リーグ開幕1週間前になった現在ですらチームに合流できずにいる現状だが、今一度彼のこれまでの経歴から見えるサッカー観から人となりまで再確認していこう。

1.現役引退後、広告代理店に就職 →  大学と指導者の両立

DFとしてスイスの名門FCチューリッヒなどで現役を過ごしたが、足の怪我が原因で28歳の若さで引退。その後すぐに指導者としてのキャリアをスタートするのではなく、広告代理店に就職。

その後大学、大学院にてサッカービジネスとメディアの関係性やコミュニケーション・マネジメント・リーダーシップを学ぶ。学生として過ごす一方で現役最後のクラブ、FCビンタートゥールでアシスタントコーチとして指導者キャリアをスタートさせたという異色の経歴の持ち主。

「知的で総合力のある指導者」「非常に厳格な側面も持つ」と評される勤勉で理性的な一面は、彼の「準備をしっかりしてから指導者へ」というキャリアにも表れている。

2.要らないものは切り捨て、良いものは取り入れていく

スイスリーグという多言語国家、ベルギーリーグという多国籍選手が多く在籍するリーグでの指導歴をもつヴァイラー氏。

コミュニケーションについてスイスメディアでの過去のインタビューでこう述べている。

「私は選手に何か伝えるとき、いつも熟考する。2人きりのときに話すべきか、チームの前で伝えるべきか。大きな声で言うべきか、小声で言うべきか。説明口調で伝えるべきか、感情的に訴えるべきか。長く話した方がいいのか、短くまとめた方がいいのか」

何をするにもしっかりとした準備をして遂行し、その結果を分析して理性的に物事を捌いていく。そんな彼はメディアに対しても必要以上に慎重に言葉を選び、かつメディアの見出し先行の姿勢などに対して批判的な姿勢を取っているので、スイス国内では“誤解されがちな人”として認識されているという。

「私は人々が聞きたいと思うことは言わない。そうではなく、私が『客観的に正しい』と納得したことを話しているからだろう」とその評価について自ら語ったヴァイラー氏。

この言葉からも正義感と人となりがよくわかる。

3.アンデルレヒト時代には周囲の"暗黙のルール"を押し切り優勝

アンデルレヒトに就任した当時、ベルギーきっての名門クラブ内ではこれまで遂行してきたアフリカや東欧から安く選手を買ってヨーロッパトップリーグのチームに売るという既定路線に限界が訪れていた。

その一方で、ティーレマンス(現レスター)やデンドンケル(現ウルヴズ)といった有望な若手選手で潤う純粋培養の育成期間「ネールぺデ」とトップチームの関係性は、誰もそのことについれ触れようともしない"暗黙のルール"的なタブーとなっていた。

しかしヴァイラーはこれを一蹴。ティーレマンス、デンドンケルを主軸の中盤で起用した。さらにアンデルレヒト伝統の魅力的なフットボールを無視したカウンター主体の手堅いチームを構築。

そのシーズン、アンデルレヒトは4年ぶりのリーグ完全優勝を果たした。

熟考の末に「不要である」と判断したら”伝統”であれすっぱりと切り落とす。今の鹿島に照らし合わせるとどんな”伝統”が切り落とされるのか、おっかな楽しみである。

引用記事

『footballista』
鹿島の新監督レネ・ヴァイラーについて知っておきたい5つのこと
文・鈴木達朗氏

『Number』
鹿島の監督に就任したスイス人指揮官レネ・ヴァイラーってどんな人? 「ペップのようだ」と評されるその指導哲学とは
文・中野吉之伴氏

『Number』
“華麗なベルギーサッカー”は絶滅!?リーグ優勝クラブに見る最新事情。
文・ティエリー・マルシャン

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