見出し画像

オンラインサロン(医療者向け臨床研究を学ぶ場)を半年間運営してみて

はじめまして。産婦人科医の重見大介と申します。
今回は、2022年5月に立ち上げたオンラインサロンを半年間ほど運営してみた経験を踏まえ、開設の手順やうまくできたと思う点、具体的なコンテンツ例、これからの展望などをご紹介したいと思います。

▼オンラインサロンページ


自己紹介

まず簡単に自己紹介を。私は産婦人科専門医として臨床現場で働いていましたが、 臨床研究の学びを深め、研究スキルを身に付けたいという思いから、公衆衛生大学院に進学しました。1年コースで卒業したため、短期間ではありましたが研究デザインや疫学、生物統計学、ビックデータ解析などの学びを得ることができ、公衆衛生学修士を取得しました。

その後、さらに自分自身で研究し、英語論文の執筆〜投稿〜アクセプト〜掲載まで至る経験を積みたいと考え、そのまま大学院博士課程に進学しました。主にレセプト関連データベースを用いた産婦人科領域の臨床疫学研究に従事しましたが、 在学中に10本以上の筆頭著者英語論文、10本以上の共著者英語論文を出版することができ、自分自身としての経験と実績を積むことはもちろん、産婦人科領域におけるビックデータ研究の最前線を走ることができたと思っています。

オンラインサロン開設へ

博士課程を2022年3月に卒業し、4月からは(大学院時代にジョインした)ベンチャー企業にフルコミットしていますが、臨床研究は続けています。
加えて、大学院時代に得られた知見やスキルをより効率よく若手の医療者や臨床研究の初学者へ伝えていきたいと考え、オンラインで誰でもどこからでも参加できるようなコミュニティーを作ろうと考えました。
そこで、2022年5月にオンラインサロンを開設しました。

オンラインサロンとは、オンライン上で複数名のメンバーが集うコミュニティーのことです。多くの場合、参加費が月額でかかり、みんなで集まって何かのプロジェクトを成し遂げるもの、主催者が主に情報発信をするもの、そして有名人が開設しているファンクラブのようなものもあります。目的は多種多様であり、参加するメンバーはそのコミュニティーで何らかの価値が得られると思い参加していることになります。

私の場合は、基本的に、臨床研究や論文読解、論文執筆などを学ぶ場を作りたいと思っていたため、私が学んできた知見やこれまでの経験をシェアすることを目的としました。当然、メンバー間でコミュニケーションをとっていただけますし、可能な範囲で個別の質問に私が回答するといったことも可能です。

オンラインサロンを開設するには、一般的に何らかのプラットフォームを使います。私はcampfireというプラットフォームを利用しました。これまでにcampfireの別のオンラインサロンに参加していたこともあり、どのようなものかがわかっていたこと、そして収益から引かれる手数料が10%と比較的少ないことが理由でした。

なお、自分自身でウェブサイトを作ってメンバーを集め、集金する機能をつければ、プラットフォームを使わずともオンラインサロンを開設できますが、その場合にはトラブル対応等全て自分自身で行う必要性があります。また、「見つけてもらう」ためには独力で頑張るしかありません。
私は手数料と引き換えにプラットフォームを利用することの利便性や安心感、見つけられやすさを優先したということになります。

サロン開設のためのステップ

campfireでオンラインサロンを開設するには、専用ページを作り、オンラインサロンの説明文を書いたり、参加費用の種類を設定し、そこで得られる特典を明記するだけです。

しかし、当然ながら、ロゴマークや目を引く扉絵のイラストなどがあった方がコンセプトを伝えやすいですし、多くの人の目に止まると考えられます。そこで私は別のお仕事でご縁のあったイラストレーターさんにこうした扉絵やロゴの作成を依頼し、その準備ができた段階でオンラインサロンの開設をしました。もちろん、イラストレーターさんへの委託料が発生するので初期費用に数万円を要しましたが、個人的にはしっかりと準備して良かったと思いますし、7ヶ月経過した現在では得られた収益が初期投資を上回りました。
*扉絵は本記事のアイキャッチ画像のものです。

次はオンラインサロンの宣伝やメンバーの募集が必要になります。私は普段の情報発信としてTwitterFacebookを主に使っていますが、今回のオンラインサロンはすぐに大きな宣伝をせず、まず身の回りの知人や関心がありそうな医療者に声をかけるという形で始めました。
これにはいろいろな戦略や意見があると思いますが、私は少人数で開始し、メンバーの意見を聞きながら丁寧に大きくしていきたいという意図がありました。

実際そのように始めて良かったと今では感じています。だんだんと口コミや紹介で参加希望者が増えていき、半年経過時点で参加者が16名となりました。参加人数の目標は特に置いていなかったのですが、将来的には50名程度まで拡大できれば嬉しいなと考えています。

参加メンバー16名は産婦人科医がメインですが、小児科医、麻酔科医、内科医や、助産師、医学生もいらっしゃいます。

*参加費は2種類設けています。(詳細はサロンページをご覧ください)
・スタンダード:3850円/月
・毎月の個別コンサル付き:9900円/月

オンラインサロンのコンテンツ

私のオンラインサロンでは、
・月一回の定例勉強会
・週一回の論文紹介と解説(たまに便利ツールの紹介)
・質問や疑問への回答

を主なコンテンツとしています。

定例勉強会はオンラインで実施し、その内容や日程はメンバーに毎回アンケートをとり、なるべく多くの方のニーズに沿う形で日時とテーマを決めています。また一方的なレクチャーだけでなく、座談会的に意見交換をする時間を設けたり、簡単なワークアウト(PubMedで文献を検索してみるなど)の時間も設けたりしています。やはり双方向性のコミュニケーションが大事だなと実感しています。

定例勉強会のスライド資料は毎回50枚程度のボリュームになり、1時間はたっぷりかけて解説をしています。また全てアーカイブ動画に残して参加メンバーには公開しているため、途中から参加した方も過去のアーカイブを全て視聴できますし、予定が合わず参加できなかった勉強会も後日に閲覧することができます。この辺はオンラインの良さであり、日本全国どこに住んでいても参加できると言う点も非常に便利だと感じています。


勉強会の一例
勉強会の一例


参加メンバーへのアンケート結果

次に、今年10月にサロンメンバーに対して行ったアンケートの結果をご紹介します(有効回答数10名)。
これまでのコンテンツや取り組みに対し、どの程度満足をしているかなどを聞いたアンケートになります。結果は以下の通りです。
*アンケートは5が最も満足度が高い、1が最も低い、です。


5が最も満足度が高い、1が最も低い

メンバーからのフリーコメント:
・先生の視点で論文の解説がされているのは、ちゃんと読めない自分には勉強になります。内容というよりは、どういう点で評価出来るのか、またどういう問題点があるのか、まで深く掘り下げられているので、今後の参考にさせて頂きたいです。


5が最も満足度が高い、1が最も低い

メンバーからのフリーコメント:
・毎回テーマ設定についてアンケートを取ってくださるのがありがたいと思っています。
・基礎的な疑問点もフランクに聞くことができる点がありがたいです。
・まだ一回だけですが、自分が今まで勉強してきた内容とは毛色の違う勉強会で、知らない事ばかりでしたが、先生の説明がわかりやすくとても楽しく参加できました。今はマニアックな内容より、浅く広く学べる今の内容が私には嬉しいです。ただ、この分野に造詣の深い先生方のマニアックな質問もちょっと気になったりするので、そういう内容が今後テーマになる事があっても嬉しいです。


5が最も満足度が高い、1が最も低い

メンバーからのフリーコメント:
・まだまだ参加しきれてませんが、先日定例会に初めて参加できて、すごく勉強になりました。やはり、自分から積極的に参加しないことには受身体質や、いつかやろう体質が抜けないな、と改めて思いました。そして、自分の基礎知識が無さすぎることを改めて感じました。
・いつも丁寧にコンテンツを作ってくださりありがとうございます!!


参加メンバーの世代や臨床研究の経験に幅があるため全員のニーズに沿う勉強会を継続する事は簡単ではありませんが、ほとんどのメンバーが学びを得られていると感じてくれており、実際にこのオンラインサロンを友人や知人に進めたいと全員が回答してくれました。これはこれまで丁寧にオンラインサロンを運営してきた結果だと思っており、非常にうれしいです。

一方で難しい点や悩ましい点があることも事実です。
例えば、双方向性のコミニケーションをどのように活発化するかと言うのは毎回悩まされています。適切な難易度のテーマを選ぶことや、少し質疑応答やディスカッションができるトピックを用意しておくことが有効だと感じていますがまだまだ手探りな状況です。
他にも、初期から参加してくれたメンバーと途中から参加してくれたメンバーのどちらも考慮しながらコンテンツ内容を決めていく必要があり、そこに難渋することもあります。
しかし、こうしてメンバーの意見を聞きながら継続していくことで全員に価値を提供し、サロンを徐々にブラッシュアップしていけると考えています。

今後の展望

最後に、今後の展望を少し書いて終わりにします。
2023年はゲストスピーカーを呼んでの勉強会も計画しています。私以外にも公衆衛生大学院等で臨床研究のスキルを身に付けた人はたくさんいますし、それぞれの病院や研究室での臨床研究の経験や知見は非常に価値のあるものだと思います。
また、前向き研究を実施する際の具体的な手順や苦労、コツなどを経験者に語っていただきたいですし、臨床業務と研究をどううまく両立するか、論文を効率よく読んだり整理したりする方法など、誰もが気になるテーマを様々な視点からシェアしていければとても面白い学びが得られると思っています。

オンラインサロンの開設・運営は私自身にとっても大きなチャレンジでした。まだ半年ちょっとですが、それでもこうして参加したい、継続したいと思ってくださるメンバーがいらっしゃることは大変嬉しいです。

そして、きっと日本全国に
「論文をもっときちんと読めるようになりたいけどどうすれば良い?」
「観察研究をやってみたいけど適当にデータを分析すればいいの?」
「上司に学会発表を指示されたけど正しい方法を教えてくれない」
「後輩にもっとしっかり論文読解や臨床研究を指導してあげたい」

と思っている医療者はたくさんいると思っています。

本サロンのように、誰でも、どこからでも、いつでも好きな時に参加できるオンラインコミュニティによる学びの場は、日本の臨床研究・論文読解のレベルアップにつながると確信しています。

本オンラインサロンに参加をしてみたいと言う方は、直接オンラインサロンページから登録していただいても良いですし、質問があれば重見までご連絡(TwitterやFacebookのDMにて)いただければと思います。
皆様からのご参加をお待ちしています!!

▼オンラインサロンページ
(いきなり登録には飛びませんのでご安心ください!)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?