【読書録】心理学的経営 個をあるがままに生かす
□今回読んだ本
□ サマリ
大沢武志さんの一冊、1993年に発行されているが、30年がたつ今でも人間らしさを中心においた組織運営の名著。
□ Take home
しかしそもそも人間の行動はいわばノイズとしての無駄な情緒や感情を基底に持つところにその本質がある。効率性と合理性を優先させる組織論は人間存在の一方の重要な局面を無視しているのである
人がなぜ仕事に動機づけられるかというモティベーションの問題も、この情緒性を無視しては考えることができない。法規中心の組織論になじむ人間観はいわゆる「経済人」仮説である。つまり、人間が本来、成長や達成に向って内的に動機づけられるとみるよりも、経済的報酬などによって外的に刺激を与えられてはじめて仕事に動機づけられるという前提でマネジメントの仕組がつくられてしまうのである。この枠組のなかで考える限り、仕事は苦痛を伴う労役の範囲を超えることができず、組織のなかに経営者と労働者という二種類の人間が存在することになってしまう。しかも労使は対立するものという既成観念から脱けられず、組織において自らの価値の実現に向って目標を追求できるのは経営者だけであって、労働者は外的な報酬のためにもっぱら役務を提供するだけの存在になってしまう。このように組織のなかに二種類の人間の存在を仮定する「経済人」仮説けの存在になってしまう。
自らの主体的な意志で、仕事の主人公になりきることが、最も人間的な仕事への関わりのはずである
□ 考えたこと
かつての日本経済を支えた企業は高度経済成長期に効率性をあげるため、皆が等しく同じ成果をあげることにこだわった。
その結果、そこで働く人を労働力とみなし、滅私奉公的な考え方が根付いた企業文化が広く浸透していたが、一方で一労働力として人間を扱うことでないがしろにされてきた人間らしさに違和感を感じているところからこの思想が始まった(のではないか)
かつては仕事を通して社会的に成功を収めた上で、自分がなにをしたいのか人生の後半で考えるのが正だとされてきた時代であったが、近年はゆとり世代が社会に進出し始め、仕事や社会で地位・名誉を獲得することだけが道ではないことに気づいた人間たちが、自分の内面と向き合いながら仕事を人生の一部として共存している状態。
その上でも、リクルートでとられた所謂心理学的経営は、ある種先だった集団形成であり、中長期的に見れば形にはしにくい効率的な文化の形成がなされた組織かもしれない。
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