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【元エンジニアが考える】「スカウトメッセージを個別カスタマイズすると返信率が上がる」は本当か?

こんにちは!株式会社ダイレクトソーシングの馬場です。

うだるような暑さも終わりの兆しが見え、一安心している今日この頃です。

突然ですが、ダイレクトリクルーティングにおいてスカウトのメッセージを作成している際、「メッセージを個別にカスタマイズしたら返信率は上がるのかな?」という疑問をお持ちになったことはありませんか?

ダイレクトリクルーティング関連の記事やホワイトペーパーを見ると、大抵の場合「個別にカスタマイズした方が返信を得られる」と書かれています。

私は

「本当に個別カスタマイズが効果的なのか?」

という点に疑問を持ちました。

弊社ではダイレクトリクルーティングにおける、60万件以上の採用データを保有しています。

この中で、「カスタマイズの有無」で「返信率(候補者から返信を得られる率)に差があるのか」を調査してみました。

今回はその結果を実際のデータを用いて紹介し、「本当に個別カスタマイズが効果的かどうか?」を紐解いていきます。


1.前提

スカウトに対する「返信率」については、前提として抑えておくべき点があります。
それは、返信率に影響を与える要因は多様にあるという点です。

要因の例として、一般的には「スカウトのターゲット」、「スカウトを送信する候補者にとってのタイミング」、そして「メッセージ内容」の3要素があり、特に大きな影響を及ぼすのは「スカウトのターゲット」であると言われています。

「スカウトのターゲット」とは、狙いたい候補者の経験やスキル面をセグメント化した「ペルソナ」に相当します。

例えば、「情報工学やコンピュータサイエンスを履修し、且つJavaを使用しているエンジニア」や「SIerでシステム導入プロジェクトのPMを経験したことのある人」などがこれにあたります。

この設計を誤ると、媒体上でアクティブな人を狙っても、スカウト文面のテコ入れをしても返信は得られにくいです。

細かい施策を検討する前に、自社の「スカウトのターゲット」が適切かどうかは都度見直すようにしましょう。

2.スカウトメッセージの個別カスタマイズとは

ここからは具体的なお話に入ります。

スカウトメッセージの個別カスタマイズとは、「候補者ひとりひとりに送信するメッセージ内容を変えること」です。

具体的には、同じメッセージテンプレートを全ての候補者に対して使用するのではなく、候補者各々の経歴から特筆すべき点を抜き出してお声掛けした理由を記載したり、自社にマッチしている点を書き出したりします。

3.個別カスタマイズの例

こちらが「個別カスタマイズ」したスカウトメッセージの例です。
このように、「お声掛けした理由」と「自社にマッチしている点」を書き出すことで、候補者にとって特別感のあるメッセージを作成することができます。

はじめまして!
株式会社xxxxの採用担当yyyyです。
zzzz社様での開発リーダーとして、開発にスクラムを取り入れ最適化を進められた点に魅力を感じ、お話しをしてみたくスカウトをお送りしました。
(会社紹介文)
弊社ではマネジメントとエンジニアの兼務も可能です。
そのため、プロフィールに記載されております「実現したいこと」を叶えることができるのではないかと感じております。
もしご興味があれば、カジュアルにお話ししませんか?
お返事お待ちしております!

この例を見ると、候補者一人ひとりに個別カスタマイズを行う場合、それなりの工数が発生することは想像に難くありません。

弊社メンバーの作業を測定したところ、1人の候補者にカスタマイズをしたスカウトメッセージを作成する場合、ダイレクトリクルーティングに慣れているメンバーでも1通につき最低10分を要しています。

例えば、ITに関して深い知識のない採用担当者がITエンジニアをスカウトする場合、スカウトメッセージのカスタマイズにはこの2倍、あるいはそれ以上の工数が必要となる場合もあるかもしれません。

4.自社データから見た定量的な個別カスタマイズの効果

いよいよ、本記事の核心でもある「個別カスタマイズの有無」で「返信率(候補者から返信を得られる率)に差があるのか」について紹介します。

今回紹介するデータは2022年度の弊社保有で運用した自社ソフトウェア開発企業様2社(A社・B社)の返信率をスカウト文の個別カスタマイズ前後で比較したものです。

B社(フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、スマートフォンアプリエンジニア)のように、「個別カスタマイズ」前後で比較すると返信率が上がるパターン・下がるパターンの双方があります。

「カスタマイズ前」と「カスタマイズ後」を平均すると、

カスタマイズ前返信率:10.4%
カスタマイズ後返信率:9.8%

となりカスタマイズ前後でその差は0.6%と僅かでした。

※本データはあくまでもサンプルであり、前述した「スカウトのターゲット」、「スカウトを送信するタイミング(時期)」、そして「スカウトするメディア」によって変動します

このデータを踏まえた筆者個人の見解としては、

「スカウトメッセージをカスタマイズすることで、必ずしも返信率が高くなる訳ではない。ただし、候補者体験の視点ではカスタマイズすることが有効的である」です。

理由は次の3つです。

①:工数は掛かるものの候補者にとっては嬉しい(価値のある)メッセージとなる

②:候補者へ期待感を持たせることができる

③:①、②の理由から、将来の自社の候補者として良い印象を与えられる

①:工数は掛かるものの候補者にとっては嬉しい(価値のある)メッセージとなる

候補者がダイレクトリクルーティングメディアに登録する理由の一つとして「自分の市場価値を知りたい」という要素があります。

具体的には、「今すぐの転職を考えている訳ではないものの、スカウトが来る企業・ポジションから自分の市場価値を把握したい」というニーズです。

個別カスタマイズし、候補者各々の経歴から特筆すべき点を抜き出してお声掛けした理由を記載したり、自社にマッチしている点を書き出すことで受取った候補者は「自分の市場価値」を認識することができます。

候補者のニーズである「スカウトが来る企業・ポジションから自分の市場価値を把握したい」を満たすことから、候補者にとっては価値のあるメッセージになると考えられます。

②:候補者へ期待感を持たせることができる

個別カスタマイズされたメッセージを受け取ることで、候補者は「未来の仕事に対する期待感を高める」と考えられます。

理由は、自分のスキルや経験が評価され、期待されていると感じることができるためです。

特に、現在転職を考えている「転職顕在層」の候補者にとっては、スカウトへ返信しカジュアル面談への参加を考えるきっかけになるかもしれません。

③:①・②の理由から、将来の自社の候補者として良い印象を与えられる

ダイレクトリクルーティングメディアには「転職顕在層」に加え、今すぐの転職は考えていない「転職潜在層」も登録しています。

「転職潜在層」は、言い換えると「将来の自社の候補者になり得る層」とも言えます。

このような層に対しては、個別カスタマイズしたスカウトメッセージをお送りすることで、短期的な成果を見込むことは難しいです。

一方で、1通のスカウトメッセージで自社に良い印象を与えることができ、将来の自社の候補者となり得る可能性があります。

以上が「スカウトメッセージをカスタマイズすることで、必ずしも返信率が高くなる訳ではない。ただし、候補者体験の視点ではカスタマイズすることが有効的である」と判断した理由です。


5.効率的にスカウトメッセージを個別カスタマイズする方法

ここまでの文章を読み、

「そうは言っても、個別カスタマイズは手間が掛かる!」

と思われた方が大半ではないかと思います。

ここで、スカウトメッセージを効率的に個別カスタマイズする方法について紹介します。

その方法とは、「スカウトメッセージの中で、予めカスタマイズする箇所を決定し、カスタマイズする箇所以外は固定の文章を使用する」です。

前述した例では、会社紹介文は固定し、「お声掛けした背景」と「自社とマッチする部分」のみをカスタマイズしています。

はじめまして!
株式会社xxxxの採用担当yyyyです。
zzzz社様での開発リーダーとして、開発にスクラムを取り入れ最適化を進められた点に魅力を感じ、お話しをしてみたくスカウトをお送りしました。
(会社紹介文・固定) 
弊社ではマネジメントとエンジニアの兼務も可能です。
そのため、プロフィールに記載されております「実現したいこと」を叶えることができるのではないかと感じております。
もしご興味があれば、カジュアルにお話ししませんか?
お返事お待ちしております!

全文をカスタマイズすることはなかなか難しいので、このように「予めカスタマイズする箇所を決めること」で効率よく取り組むことができます。

さらに、これを繰り返していくといくつかのパターンが見出だせると思いますので、このタイミングでパターン分けするとより効率的になります。


6.まとめ

今回は『【元エンジニアが考える】「スカウトメッセージを個別カスタマイズすると返信率が上がる」は本当か?」と題し、実際のデータをサンプルとして紹介しました。

データ上では個別カスタマイズ前後で大きな差異がありませんが、ひと手間かけて個別カスタマイズすることで候補者体験を向上させることができます。

さまざまな手法を試行しながら、自社にとっての成功パターンを見つけて頂ければ幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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