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「無意識の信念がもたらすストレスと体調不良:PCRTの視点から」

目に見えない体調不良の原因として、「ストレス」という心の信号が関与していることは広く知られています。このような心の「ストレス」と身体の不調の因果関係を長年研究していると、一般的に言われている「心のストレス」とは異なる、「モヤモヤした心の動き(隠れたストレス)」が脳内の複雑な神経信号として存在することが明らかになります。その無意識の心(脳)の神経信号が自律神経や運動神経などの神経信号(電気信号)と混線し、体調不良を引き起こします。

心のストレスは、同じような現象が起きても、人それぞれに感じ方が異なります。これは非常に重要なポイントです。例えば、ある職場で、1人の“問題のある人”との人間関係でストレスを感じている人がいるとします。その人の見解では、その職場にいるほとんどの人がその“問題のある人”に対してストレスを感じていると言います。しかし、厳密なアンケート調査などを行っているわけではないため、そこにいる一人一人がその“問題のある人”に対してどのように感じているかは定かではありません。

おそらく、“問題のある人”であるということにはある程度の共通認識があるかもしれませんが、直接的にストレスを受けているかどうかまでは明確ではないことが多いでしょう。なぜなら、一般的な「常識」とされる「思考の枠組み」は共通していても、それぞれが大切にしている深い信念や価値観は異なることが多いからです。これらの深い信念や価値観は、自分自身も知らない間に構築された「思考の枠組み」であり、PCRT(心身条件反射療法)で深掘りすることで、その深層の心理が明らかになります。

深層の心理とは、特定の人や事柄が原因でストレスを感じているというよりも、むしろ無意識的に構築された信念体系が存在しているために、ストレスを感じているということです。通常は、〇〇さんのせいでストレスを感じる、あるいは〇〇の出来事が原因でストレスを感じると考える傾向があります。確かにそれらのストレスは原因ですが、その背後には「〇〇は〇〇であるべき」という信念体系が存在しているのです。

例えば、職場で同僚の山田さんがいつも自分のアイデアを否定することでストレスを感じる田中さんがいるとします。田中さんは、山田さんの態度が原因で自分がストレスを感じていると考えます。しかし、PCRTを通じて深く掘り下げていくと、田中さんの中には「自分のアイデアは常に認められるべき」という無意識の信念があることが明らかになります。この信念があるために、山田さんの否定的な態度が強いストレスの前提原因となっているのです。山田さんの行動自体が直接的な原因であると同時に、その背景には田中さん自身の無意識の信念が大きく影響していることが分かります。

このように、ストレスの背後には個々の信念体系が存在し、それがストレスの本質的な原因となり、体調不良の原因となっていることが多いのです。多くの人々は、自分が信じている考え方(信念)が正しいと思っているため、それが原因で体調不良を引き起こしているとは認めたくない傾向があります。つまり、自分の心のせいにはしたくない人が多いのです。体調不良を身体のせいにしたり、ストレスの原因を他者や外部のせいにするよりも、原因は自分の心の奥の「信念」や「価値観」のフィルターのあるという視点に立つことで、本質的な改善につながります。

人間関係、様々な出来事や情報が脳にインプットされ、「信念や価値観のフィルター」を通って、ポジティブな解釈やネガティブな解釈に自動的にアウトプットされているのです。そのことを深く理解すると、「他責」ではなく「自責」へと変化します。「自責」と聞くと、何か責められた気持ちになるかもしれませんが、自分が主体となって物事の解釈を自由にコントロールできるという意味でもあります。「他責」の解釈で自分を縛り付けるのではなく、「自責」に向けて、心の底から自由で開放的な生き方を目指していきましょう。

信念と価値観の脳のフィルター

しかし、これはとても難しい課題です。通常、人は「自責」よりも「他責」にする傾向がありますので、まずはそのことを認識して、「もしも、自分の無意識の信念が自分を苦しめているとしたら…」という自問する思考の習慣を身につける訓練をしていきましょう。他責にするのは簡単ですが、その思考習慣では思考停止状態となり、自己成長が止まってしまいます。難しい課題だと感じるかもしれませんが、自己成長を望む人には最良の訓練になると思います。

現代医療では、本人がストレスと自覚して、そのことを申告しない限りは、体調不良の原因にはしない傾向があります。それが故に、治せない病気を分類して難病指定はできても、それを治す術がないのが現状です。また、何かしらの心の影響が関係している可能性があっても現代医療では根本的な治療法がないために、避けてしまう傾向があるようです。繰り返しになりますが、体調不良の原因の多くが、自分でも意識していない心の信号、すなわち隠れた信念であることが多いということをご理解いただき、健康の一助となれば幸いです。


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