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星野源さん×安倍晋三さんのコラボレーションに残るもう一つの疑問

政治家か否か

星野源さんの”うちで踊ろう”に安倍晋三さんがコラボした件 です。星野さんは、4月12日深夜にInstagramのストーリーで、次のコメントを出しました:

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※画像はスクリーンショットです

むろん、ご本人でなければ、発言の真意はわかりません。しかしながら、大変難しい対応であったと察します。というのも、安倍さんサイドでコラボを製作した行為に対する扱いが、”政治家” か ”私人” かで、大きく異なると考えられるためです。

何にでも自由に使え…ない-”著作人格権”のカベ

JASRAC は ”選挙活動や政治活動に音楽を使用する場合、事前に著作者の同意が必要になる” と明言しています。これは、著作権法第113条6項、著作者の名誉・声望を害するような方法で、著作物を利用してはならない旨の定めに基づきます。

確かに星野さんは、以下のようにコラボレーションを呼び掛ける趣旨の発言をしています:

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※画像は、星野源さん Instagram 4月3日投稿分からキャプチャーにて引用
赤枠は MotorWarpJapan が追加しました。

上記の画像、赤枠内を”額面通りに”解釈しましょう。星野さんは、”フリー素材である” とは言っていないし、”自由に使って良い” とも言っていません。ましてや著作権を放棄するとも言っていません。仮にフリー素材とみなされたとしても、著作権者は相応の保護を受けます。著作権を放棄していないフリー素材には、たいていは著作権者が定める”制限事項”があって、ここでは赤枠内のメッセージが、その制限事項にあたりそうです。誰かに使われることを止めるのは難しいかもしれませんが、”使われたことに対して、星野さんは文句を言ってはならない” のような批判は不適切であると考えます。

つまりここで安倍「さん」が私人だと主張すれば、他者の作品と同様に何も言えないということになるでしょう。”連絡がない” のは、そういう解釈を伺わせます。ところが、安倍内閣総理大臣によるメッセージ…となると、星野さんに同意を得ねばならないのでは?と疑義が出ます。

事実のみ、過不足無いコメント

星野さんのコメントは、一見、邪推を招く、隙間だらけのように見えます。ですが、私は適切な声明と解釈しました。不特定多数にコラボを呼び掛けた以上、特定の方に対してコラボされた気分を述べるのははばかるでしょう。ただし、コメントを出したということは、黙殺を意図したものではないと思われます。むろん交換条件も出さない、出したらそれこそ”密約”が疑われ、政治的立ち位置など、あらぬ誤解を受けることになりかねません。

あくまでも星野さんが著作者である以上、このスカスカなコメントでも ”言わねばならない状況にあった” のだと考えられます。

備考など

■一連のコラボにおいて、著作権に差し障ることが起こった場合、保護を求めることができるのは、現状は著作権者のみです。
■”制限事項” について。大泉洋さんが単なるボヤキを重ねたコラボを引き合いにして論じる向きがあるようです。しかしながら、件の動画は ”星野さんが紹介した” ものであり、著作権者が ”これについてはアリ” と仰っているので、何ら問題には当たらないことになります。
■4月15日、星野源さんのサイトで、”うちで踊ろう” の音源の無料ダウンロードが始まりました。ここでは ”もちろんお金はかかりません。ご自身のPCやスマートフォンでご自由にお楽しみください。” のコメントが確認できます。このコメントも額面通りに解釈すべきと存じます。
■なお、4月17日までに、JASRAC の作品データーベース ”J-WID” で ”うちで踊ろう” を検索したところ ”該当なし” とありましたので、JASRACの管理作品ではないようです。

※とびら絵は ”みんなのフォトギャラリー” から頂戴しました。有用な画像を公開してくださった”ごるちき”さんに感謝申し上げます。

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