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「空の村号」-札幌演劇シーズン2021冬 を観て考えたこと

どうして人は、忘れてはいけないことを、知らず知らずのうちに忘れていってしまうのだろう。

2011年3月11日14時46分、当時15歳のわたしは、中学校の卒業式の予行練習で体育館に居た。大きな揺れののち、東北地方を中心とした大規模な地震が起こったこと、最大震度は7であったことが教師から告げられた。動揺のあまり、よく理解はできなかったが、とにかく恐ろしいことが今この瞬間に起こっているということは想像に難くなかった。言葉を失った。
しかし、札幌市在住の中学生のわたしは至って無事で、まるで何事もなかったかのように、翌日には中学校を卒業し、その翌日には第一志望の高校から合格通知が来た。うれしかったけれど、心の底から喜ぶことができなかった。「大丈夫だよ、明けない夜はないから」みたいなことを家族に言われたが、「じゃあ、その夜が明けないまま朝を迎えられなかった人たちは一体どこへいくのだろう、それが明言できないのであれば、その『明けない夜はない』という言葉は非常に残酷な言葉だ」と思った。以来、「明けない夜はない」といったような言葉をよく言う人に対して警戒心を抱くようになった。夜明け前が一番暗いことは確かだが、誰しもが朝を必ず迎えられるとは限らない。それを肝に銘じて生きていこうと思った。

皮肉にも、この10年で日本は「地震に強い国」となった。これは多くの犠牲の上に成り立ったものだ。絶対に忘れてはいけない。忘却していくことで人は生きつづけることができることもまた真実ではあるが、最大の鎮魂はやはり「風化させない」ことだ。

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