蝉時雨
「あっつー」
みーんみんみん。窓の外を見るとセミが至る所で鳴いている。
「みーんみんみんみんみんみん」
「夢うるさいー」
「てかコレ作んの疲れたわー」
夢は私に書きかけの。旅行計画を手にしている。
「仕方ないでしょー。先輩方は受験に向けて忙しいし、私だって予約入れてるんだよ?私と代わる?電話する?」
「……いい」
「でしょ?」
とはいえ、私だってこの暑い中わざわざ夢の家に来てまで作業してるのもなんだかな、と思う。
ミ-ンミンミンミンミンミン
「夢うるさいー」
「私じゃないって!」
「え?」
外を見ると家のすぐ横の木にミンミンゼミが止まって、私たちの家に騒音をお送りしていた。
そして、何故か窓が開いて外の熱気が部屋まで入ってきていた。
「ちょっと、夢!」
「なに?」
「なにって、なんで窓開けてんの!?閉めよ!」
「いや、今喚起中だから」
「うっそ!いらないって」
「はぁ?」
つんけんとした態度。どちらも譲る気はない。いっつもこうな気がする私達。根底の考え方から相入れないような。
……仕方無い。
「……一華、どこいくの」
「アイス買ってくる」
「それ、言ったら意味なくね?」
「……確かに」
「ふふっ」
「あはは!」
けれど、自然と笑える瞬間もある。以前と変わった証拠だ。夏は終わるけど、私たちの本番はこれからだ。
ライブと旅行が来る。
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