備忘録代わりの入院日記


金曜日~全部ライチのせい

 夕食を取った後、食後ウォーキングしてる時に、何となく胃が重い気がした。普段から胃は丈夫で胃痛に縁がなく、賞味期限切れのものも気にせずに食べてよく友達に注意されたりするので、私もいよいよ何かに当たったか……? とは思ったのだけど、あいにくその日の夕食は特に変なものは食べていない。
 いつもと違うと言えば、八百屋さんで見かけて買ったライチを食べたくらいか。でもライチだって食べるのは初めてじゃない。ネットで調べたら13個以上食べたら食べ過ぎとか書いてるけど、そんなに食べてない。ちなみにライチってイメージに反して体を温める効果があるらしい。さっき何か暑い気がしたけど、なるほどライチのせいかーなんて思いながら、一万歩ウォーキング終了。

 帰宅したら、胃の不快感は徐々に腹痛に変化してきた。たまに来る程度の痛みでそれほどひどくはない。何に当たったのかなあ、ていうか当たるって何? 痛くなるのは何で? 虫とかが悪さするの? 腐ってた場合は? などと色々と考えを巡らせる。段々と身体が熱くなってくる。さっきのはライチのせいじゃなくて単に発熱だったらしい。
 就寝後、徐々にガスで腸が膨張して腸壁が引っ張られて痛いみたいな感じに変わってきた。その膨張が少しずつ下に動いていく。最終的にガスが出て膨満が解消する。けれどまたどこかでガスが発生して、それがまた下に移動して出て……というのを何度か繰り返して、ようやく落ち着いた。引っ張られた腸壁の痛みはまだ残っている。よく観察すると、全体ではなく右側腹部だけに残っている。腸の曲がり角でとりわけ負荷が高かったのか? 体も熱い。はっ、もしかしてコロナ? 地味にまた流行ってるって聞いてはいたけど最近は油断してたかも。明日は土曜日だから午前中に内科を受診しておいた方がいいのだろうか、日曜日に酷くなったら嫌だしなあ、などと考えながら切れ切れに眠る。

土曜日~病室で叫ぶべからず

 大抵の不調は寝たら良くなる主義(?)だけど、右腹部の痛みは多少落ち着いたものの治ってない。動くと痛い。もしかして内臓ではなく筋肉痛? などと考えるけど、素人には分からない。場所的に腎臓だったら、腎炎? 腎盂腎炎? 肝臓は痛くならないんだよね。肝臓の場所知らないけど。盲腸って左右どっち側だっけ? 筋肉図だったら最近ちょっと詳しいんだけど……などと考えつつ、まあ結局はプロに診断してもらうのが一番である。体温を測ると38.8度。

 とりあえず朝食もパスして近くの内科へ。
 歩くと汗をかいた。そのせいか、診察前の検温では37.7度くらいに下がっていた。昨日の経過を伝えると、お腹を数か所押さえられ、「虫垂炎の疑いがあります」と。
 ああやっぱり。盲腸って右側なのか。とりあえず重篤な病気でなくて良かった。などと思う。
 そのまま、消化器に強いという市内の総合病院へ紹介状を書いてもらい、そちらも今日は午前中しか開いていないということでタクシーに乗って急いで病院へ向かう。虫垂炎は外科だった。問診を受け、血液検査とCTを受けて再度診察。その頃には頭痛が来て、お腹よりそちらの方が辛かった。
 盲腸って切るほかにも薬で散らすとかも聞くし、できたらその方法で……となどと考えているその時は、まだ入院するなんて思っていなかった。(実は虫垂炎ではなかったエンディングまで考えていた)
「虫垂炎ですね。できれば入院で」
 診断確定。ちなみに先生はまだ若そうな、目のくりっとした30歳前後くらいの好青年だった。総合病院勤務で専門は外科かー、きっと子供の頃から頭良かったんだろうな、美容外科とかじゃないということはお金が仕事の主目的でもなく、医療について志があったりするんだろうな、などと頭の片隅で想像しつつ。
「入院ですか? ……今日ですか?」
「できれば」
 まずはしばらく絶食して腸を空にし、薬で炎症を抑えながら様子を見る、可能なら切らずに治療する、という方針を説明される。私の知識及び想像力不足のせいなのだけど、全く予想していなかった。だって歩いて内科に行ったし、ここにもタクシーで来はしたけどそれだって午前のみ診察だったからで、時間があったらきっと電車で来てたはずな私。
 何より来週はやらないといけない仕事があって、逆にそれさえ終われば少し予定が空く。
「あー……ちょっと仕事が……また後日でも大丈夫ですか」
「そうですか。なるべく早い方がいいんですが」
 先生は無理強いはしなかった。けれどその代わり、具合が悪くなったらすぐにまた受診すること、自分は今日は一日中いるから何かあれば対応すること、明日は日曜で病院はお休みだからどうしようもなければ救急車を呼ぶこと、など、私の持つイメージよりも深刻な状況を想定して注意をくれる。とりあえず来週水曜日にまた来ることになった。
「何か食べてもいいですか?」
「固形物はやめておいた方がいいです。ゼリーとか」
「果物はどうですか?」
「あー、果物もちょっと。繊維があるので。お粥などがいいです」
 その時点で、「私、水曜日まで生きていけるか?」と少し不安になる。私の朝食はほぼ果物だし、お粥は嫌いです。困った。
 その後、看護師さんから再度、注意点や受診予定、受診方法、万が一の場合の対応などを説明してもらう。徐々に不安の方が大きくなっていく。このまま帰宅したとしても、満足に仕事できない気もしてきたし、何より救急車を呼ぶほど痛みが悪化するとか考えたくない。
「……やっぱり今日入院した方がいいですかね……」
 そう言うと、来週受診という前提で予定を組みつつあった看護師さんはちょっと困った顔をした。それはそうだ。優柔不断で申し訳ない。「入院しない方向で手続きしてるから、先生にも聞いてみないと。もう診察時間は終わって奥に行かれているから、ちょっと連絡してみますね」
 内線を受けた先生はすぐに戻ってきてくれて、「その方がいいと思います」と言ってくれた。いい先生だ。
 午後はもう正面玄関は閉まっているので救急の方から入ってください、と言われ、入院のしおりみたいなのをいただいてから、準備のためにタクシーでいったん帰宅。
 しおりを開いて一番最初に確認したのは、病室にWi-Fiがあるかどうかだった。ある、と書いている。良かった。そしたら病室でもある程度仕事を進められそうだ。とりあえずノートPCを持参して、よしこれで夜のバレーボールネーションズリーグも観られる、あとせっかくだからこの機会に漫画の積読を解消したいのでタブレットも持参、あとずっと読み返したかった十二国記シリーズ全巻(ただし『魔性の子』を除く。あれは二度と読み返さない)を持っていこう、あー編み物も持っていこう、などと考えているが、おそらく熱と頭痛でちゃんとした判断はできていなかった。スーツケースとリュックサックと大型トートバックにぱんぱんの荷物を持って行ったが、いざ病室で広げてみると半分くらいは不要なもので、逆に必要な生活用品が足りていなかった。でも入院のしおりの各項目に再三「院内のコンビニで買えます」と書いているので大丈夫。とにかくPCさえあれば大丈夫!

 その後、荷物を持って実家に猫たちを連れていった。入院することを伝えるとともに数日の餌やりをお願いする。猫ふたりに「行ってくるねー」と挨拶したけど、もちろん分かってない。追いかけて来なかったのでスムーズに家を出ることはできた。飼い始めて以来旅行もしてないので、一日以上離れていたことがない。数日帰らないけど、私に捨てられたとか思わないでほしい。迎えに来た時に飛びついてきてくれるだろうか、それとも拗ねて無視されるだろうか。なんて考えながら、家族に病院まで車で送ってもらう。

 病院に着くと四人部屋の一角に案内され、いったん身長と体重を測った後、着替えて横になり、すぐに点滴をセットされた。頭痛と熱でふらふらだったので、タイミングを見てロキソニンを飲みたかったのだが、看護師さんが壁に貼った札には「水:〇 内服:✖」と書かれていて、絶望に襲われる。薬飲んじゃ駄目ですか……。
 とりあえず看護師さんに頭痛を訴えると、点滴の影響を考慮したのか「来る前から?」と聞かれ、頷く。すぐに鎮痛剤(カロナール)をくれた。あ、飲んでいいのか良かった。(今考えると『内服:✖』は多分「普段から飲んでいる内服薬はありません」の意味だったと思われる)
 点滴していない方の腕で測った血圧が低すぎたらしく、点滴している方の腕で測り直す。
「点滴している方はいつもと同じくらいなので、脱水症状かも。多めに水分摂ってくださいね」
「はい。ちなみにコーヒーとかは」
「駄目。水か、せいぜいお茶まで」
 ですよね。なお、水筒に麦茶を入れて持って来ていたのだけど、頭痛のせいであまり飲んでいなかったので、それ以降は飲むように努めた。

 同室の患者さんには夕食が運ばれてきたが、私には関係ない。薬を飲んでしばらくしたら頭痛も多少治まってきた。お昼に外来で診察してくれた先生が様子を見に来てくれた。この先生が私の主治医ということらしい。治療方針は変わらずで、問題なければ手術なしでいくとのこと。今日と明日は絶食し、様子を見ながら明後日くらいから食事を開始すると。「上司とも見解は一致してますので」と言われたけど、先生を信頼してるから大丈夫です。
 そして夜19時、楽しみにしていたバレーボールネーションズリーグをPCで観戦。入院のしおりに書いてあったイヤフォンもちゃんと持ってきた。対戦相手は今大会ここまで全勝で来ていて強敵と思われたが、結果は勝利。第3セットのセットポイントで高橋藍選手がスパイクを決めた時には思わず叫んでしまった。やばい、相部屋だった。同室の患者さんすみません。そういえば家でもたまに叫んでしまい、その度に猫がすごい勢いで逃げる。

 なお、夜には平熱に戻っており、右腹部の痛みも軽減していた。

日曜日~点滴の乱

 入院のしおりによると、病院の生活リズムは何と22時就寝の6時起床とのことだ。私はと言えば、深夜1~2時に寝て9時~10時に起きる毎日。昨日はあまり寝ていないから眠れるかとも思ったが、病院、しかも相部屋となると夜でもそれなりに音がして、あまり眠れなかった。
 絶食中で朝食も関係ないので、引き続き寝ようと努めたが、やっぱり色々と音がして眠れない。
 今日は主治医の先生じゃなくて外科部長が来てくれた。治療方針については既に聞いた内容。けれどその後に
「ここからは良くないお知らせです」
と言われたので、まさか何か別の重篤な病気でも見つかったかと一瞬どきりとする。違った。
「保存的治療の場合、二人に一人が再発します。その場合、また軽ければ再び保存的治療をしますし、状況によっては今度こそ手術をすることもあります」
 5割というのは結構な確率だなと思いつつ、であれば今回の痛みの感触を覚えておいて、次も軽いうちに受診しようと決意する。一昔前は盲腸は切っても大丈夫と思われていたけど、今はホルモン分泌だか何だか(詳しくは忘れた)それなりに大事な役目を果たしていることが分かったと何かで読んだので、できればずっと私の中で働いていてほしい。
「お通じはありましたか?」
「まだないです」
「炎症が治まってくると、腸が動き出してお通じがあると思いますので、もう少し様子を見ましょう」
 いつもは毎日快便で、大抵は朝食を食べて内臓が動いた後に便通がある。今は昨日から何も食べていないので、お通じはなくても不思議じゃない。むしろお通じがあるとその後で猛烈な空腹感に襲われると思うから、食事を再開できるまで来てほしくないな、と思うなど。

 お昼頃に看護師さんが来て、来訪者から預かったという紙袋を渡された。来訪者欄には家族の名前。中身は贈答用の洋菓子っぽい。いや絶食中なんだけど……と思いつつよく見ると、妹からである旨が書かれているメモが入っていた。
 妹とは仲が悪い訳ではないけど良い訳でもなく、違う場所で暮らしていることもあってもう何年も会っていない。
 昨日のうちに親から妹に連絡があったとして、次の日すぐに菓子折りを持って来たのか? あるいは親が代理で買って持ってきた? どちらにしても、逆の立場だった場合に私は間違いなくそんなことはできない、思い付きもしないと思う。ていうかこういう対応が普通なのか? もしそうだとしたら、明らかに姉の方が社会性が低いんだが……。

 入院以来ずっと何かの液体の点滴を受け続けているが、その甲斐あってか右腹部も徐々に回復し、痛み未満の違和感程度に治まってきている。それとともに、午後になると急に気力が湧いてきた。よし、何かしよう。動きたい。
 とりあえず、昨日適当に置いた荷物を片付け、必要なものを出して不要なものをしまい、備え付け家具の位置を調整して動きやすくした。そうだ仕事をしよう、と思ってしばらくノートPCで作業。
 それから自販機にお茶を買いに行くついでに共用スペースに置いてある体重計に乗ってみた。一日以上絶食してるのに、ほとんど体重が減ってない。まあ点滴してるし仕方ないか。
 夜は昨日のバレーボールの試合を再び流しながら編み物。編み物の道具やら編みかけの作品やらもリュックサック一杯に入れてきたけど、そんなにいらなかったな。などと反省。
 それから二日ぶりに体を拭いて着替えをした。点滴をしているので上は替えられず下だけだったが、それでも心なしかすっきりした。
 ただ、もともと粗忽なうえに動きすぎたのか、点滴の辺りが痛くなってきた。

 22時に消灯の後、うとうとしていたが、24時くらいに点滴を替えに看護師さんが来てくれて目を覚ました。
 それから再び眠ろうとしたが、どうしても点滴の辺りが痛い。点滴を受けるのは人生初なので今回初めて知ったのだけど、速すぎると痛いみたい。
 あと、何だか廊下からずっと音がしている。無意識にBGMかと思っていたが、もちろん病院にBGMなんかない。もしかして何かのアラームなのかなと気付く。部屋の入口を見ると、さっきの看護師さんがカートを置いたままどこかに行っているみたいだったので、戻ってきたら点滴を遅くしてもらおうとしばし待つ。30分くらい待ったが戻ってこない。どうしても痛い。ナースステーションに行くか、廊下を歩いてる他の看護師さんがいたらお願いしてみようかと思い、ちらっと廊下を覗いてみると、隣の部屋で内線電話で話している男性の声が聞こえる。多分ドクター。「はい、心肺停止で……お願いしたいんですが……」
 どうも大変な状況みたいだ。看護師さんみんなそちらの対応に追われているんだろう。お願いしたいということは病室から処置室の方に移動するのかな。それさえ終わったら声を掛けても大丈夫だろうか。
 そう思いながら更に30分くらい待ったけど、やっぱり誰もこちらには来ない。ストレッチャーがエレベーターの方に移動した気配はあった。点滴を緩めてもわらないと眠れそうにないので、部屋を出て看護師さんを探す。廊下で会った看護師さんに痛みを伝えると、漏れていないことを確認してから遅くしてくれた。
 ベッドに戻って横になってもなかなか眠れそうになかったけど、とりあえず寝た。

月曜日~病室って寝るところじゃないよ

 起床時刻の6時早々に看護師さんに採血される。更に主治医の先生も来てくれる。血液検査の結果で今日お昼からの食事再開の可否が決まるけれど、昨日の数値も良かったので多分大丈夫でしょうとのこと。
 その後はとりあえず睡眠時間が圧倒的に足りていないので転寝を試みるが、病院は眠れる場所ではないとの認識が強くなったのみだった。しかも昨日までは土日だったからまだましだったのだ。平日の今日は、今までなかった清掃の人が来てくれたり、看護師さんの人数が増えたり面会の人が来たりと、とにかくしょっちゅう誰かの声がしている。誰かがどこかで痰を吐く音がしたり咳が聞こえてきたり、同室の人も定期的に咳払いしたり音を立てて物を食べたりと、苦手な類の音もたくさん聞こえてきてイライラも募る。このままでは余計に健康を損なう気がする。看護師長が挨拶に来てくれたので、個室が空いているか聞いてみたが、今は空いていないとのこと。相部屋を舐めていた。次に入院することがあれば最大限の努力で個室を確保したい。

 血液検査の結果は聞かされていないが、その前に昼食が運ばれてきた。つまり数値が良かったのだな、ということで、久し振りの食事に少しの感動を覚える。しかしふと見るとカトラリーがない。そういえば入院のしおりに書いてあったのに持ってくるのを忘れていた。コンビニにお箸を買いに行く。動けること自体は嬉しいが、行って帰ってきたらまた点滴の辺りが痛くなってきた。
 さて、とお膳の前に座ると、添えられているメモに「低残渣・1600・軟菜」とある。え、1600kcalってこと? 普段週2回ジム+毎日一万歩ウォーキングしつつ、ダイエット中の今は摂取エネルギーも1400kcalくらいに抑えているのですが。今は基礎代謝に毛の生えた程度しか消費してないと思うんですが。まあ病院がそう言うなら仕方ない。でも食べているうちにお腹がいっぱいになってきて、お粥は半分残したのでセーフ(?)。
 そして無性にコーヒーが飲みたい。甘いものも食べたい。看護師さんに「食事が再開になったから、コーヒーも飲んでもいいですか?」と聞いてみたが、「いやー刺激物なので……先生に聞いてみないと……」と困った顔をされた。大丈夫カフェインレスです、と言おうと思ったがやめておいた。カトラリーを忘れているのにカフェインレスコーヒーを持って来ている私。
 今日は体を拭く日らしく、看護師さんに「点滴してるので、手伝いが必要だったら声を掛けてください」と言われた。ふむ、つまり着替えの時も点滴はそのままということか。ということは点滴を点滴台から外して袖を通せばいいのか。温かいタオルが3枚届いたので、今回は上も脱いで全身を拭き、また全身着替えた。すっきり。

 夕方にトイレに行った時にこめかみに脈動を感じた。やばい、と思ったが、あっという間に頭痛で動けなくなった。何しろ3日連続で睡眠不足だからなあ。あと病室の枕は高すぎる。さっきご飯を食べたからおそらく空腹頭痛ではない。逆にいきなり急激に血糖値が上がったからとか? カフェイン離脱症状も考えたが、もう3日目だからこれも違うか。
(余談だが、数年前の夏、麦茶代わりにコーヒーで水分補給をしていたら明らかに片頭痛の回数が増え、原因をあれこれ検討した上で試しにコーヒーを1日1杯にしてみたら覿面に頭痛の回数が減ったことがある。ただし急激に減らしたせいでひどい離脱症状が来て、10日くらい続いた。頭痛以上に全身の筋肉の強張りがすごくて、ひどい時は夜も眠れないくらいだった。ジムでも思うように体が動かなかった。それだけ体中がカフェインありきの状態で動いていたのだろう。
 これ、将来もし不慮の事故とかで入院することになってまた急にコーヒーを断つことになったら、怪我の上にこの離脱症状って辛過ぎない? と思うとカフェイン量を元に戻す気にならず、それ以来コーヒーは1日1杯、あとはカフェインレス、を続けているのだけど、今回のことを考えると実に正しい判断だった。過去の私GJ)

 看護師さんが夕食を運んできてくれたので、頭が痛いと伝えて再びカロナールを貰う。飲んでしばらく横になっていると楽になったので、それから食事。またお腹いっぱいになってお粥は半分残した。
 病院は朝食もご飯なんだろうな、パン食べたいなー、と思ったところで、入院前夜にホームベーカリーでパンを焼いていたのに翌朝取り出す暇もなく入院になったことを思い出した。帰宅してももう食べられないだろう。カビてるかもしれない。ホームベーカリーが汚染されたらいやだな、でもまたパンを焼く時は結構な高温になるだろうから、まあ大丈夫か。と自分を慰める。
 点滴を替えに来てくれた看護師さんに、どうしても点滴部分が痛いことを訴えてみる。周辺が硬くなっていると伝えたら、触って確認した後「硬いですね。やり直しましょうか」と言って、反対の腕にセットし直してくれた。液を入れ始めても痛みもない。これでかなりQOLが向上した。ありがたい。
 そしてこの夜、ようやくまとまった睡眠を取ることができた。

火曜日~運なら仕方ない

 さて火曜日。これを書いている今日である。
 朝食はまたお粥だったが、果物とヨーグルトがついていた。家では毎朝食べていたものなので少し嬉しい。点滴も今のが最後。
 それからまた主治医の先生が来てくれ、調子を聞かれた後、「お昼からは普通のご飯にしましょうか。それで問題なければ明日退院で」と言われた。更に嬉しい。
 再び再発についての注意を受けたので、「何か食生活で気を付けることはありますか?」と聞いたところ、苦笑交じりに首を振られ「運」と言われた。運かー。だったら仕方ない。
 そして先生に会えたら聞こう聞こうと思っていたことを聞いてみる。
「コーヒー飲んでもいいですか?」
「あ、はい」
 全然OK、という感じだったけど、念の為か「少しずつ」と言い添えてくれた。了解です。

 点滴も外れるので、シャワーを浴びることができるみたいで、午後の予約を取ってもらった。ウキウキでコンビニにシャンプーセットを買いに行く。十二国記全巻を持ってきたのにシャンプーを忘れた私。(そして結局1冊も読んでない……)
 ちなみにブラシも化粧水も忘れたのだけど、手櫛とニベアで何とかしている。
 あと、ついでにまた体重を量ってみたら昨日より増えていた。せっかく2日絶食したけどあんまり変わらなかったね。残念。

 ちょうどコンビニから帰ってきた時に看護師さんが来てくれて、いつものバイタル計測。
 何故かまた頭痛の前兆が来ている。「また頭が痛くなりそうです」と一応伝えると、「片頭痛持ちですか?」と聞かれた。昨日はよく眠れたから、睡眠不足のせいでもないはず。
「多分、ここに来てからお風呂にも浸かってないし、運動もしてないからかも」
「じゃあ、シャワーで温まってくださいね」
「ありがとうございます」
 しかし、もしかしたら病院の枕が高すぎるせいかもしれない。とりあえずベッドの柵に頭をのせ、後頭部の付け根をぐりぐりと念入りに解してみたら、明らかに軽快した。やっぱり枕のせいっぽい。昔に比べて融通の利かない体になってきたなあ。

 そして、念願の缶コーヒー微糖を買って飲んだ。美味しい。嬉しい。幸せ。

 この楽しい気分で何かしよう、と思い、ふと「noteに書いておこうか」と思い付く。前回の投稿も友人の勧めで単発で書いてみただけだったのだけど、せっかくアカウント作ったし。
 昼食までつらつら書き、途中で最後の点滴を終えてチューブと点滴台から解放され、昼食にはお粥ではない通常のご飯をいただき、またシャワーの時間まで書き続けた。シャワーで数日振りに頭を洗ってすっきり。例によってヘアオイルを忘れてきたから乾いたらぼさぼさだろうけど、明日帰るから問題ない。点滴台から解放されたので数日振りに階段も上り下りした。問題なく動けることが幸せだ。
 ジムには毎週水曜日と土曜日に行っている。両方とも少人数の有料クラスに入っているので、インストラクターさんとも顔馴染みだ。この前の土曜日はいつも皆勤の私が突然休んだから、あれっと思われたかもしれない。水曜日も休まないといけないかなと思っていたけど、明日は午前中のうちに退院みたいだから、もしかしたら行けるかもしれない。体が鈍り切らないうちに運動を再開せねば。土曜日にイントラさんに会ったら「実は入院してて……」などと話すんだろうな。
 明日退院したら、猫を迎えに行って、ホームベーカリーのパンを捨てて、間に合えば午後にジムに行く!
 考えただけで幸せ。
 当たり前のものになってはいたけど、自分で選んだものだけで構成されている私の日常はとても幸せなものだ。
 明日その幸せな日常に帰れる!
 普段の生活が充分に幸せ。健康な自分であることが幸せ。
 この当たり前の幸せを大事にせねば。

余談~若者天国

 入院初日、救急用入口から入ったら守衛さんに声を掛けてください、と事前に言われていた。
 案内のとおりに入ると守衛室があったので覗いてみると、いかにも守衛さんというおじさんの他に、おそらく20代の若者も一緒に座っていた。名前を伝えると若者がコンピュータを触りながら確認してくれ、おじさんの守衛さんがこちらに出てきてエレベーターまで案内してくれた。この若者男子、どういう経緯でどういう志望理由で守衛という職業に就いたのかな、などとちょっと興味が沸く。
 病棟に行くと、会う看護師さんもみんな若かった。そう言えば私の主治医のドクターもまだ若そうだったし。看護師さんだけじゃなく作業療法士さん的な人も、女性も男性も若い。技能実習生らしき人が部屋の掃除をしてくれたけど、当然若かった。もちろん若くないスタッフさんだっているけど。
 普段ニュースなどを聞いていると、日本はもう一億総50代以上のディストピア、みたいなイメージが膨らんでしまっていたけど、若者っているところにはいるんだー、と変に安心感を覚えた。どこかのタイミングで進路を医療関係に定めて色々な勉強をして今ここにいるんだろうし、この前の心肺停止のことを思い出しても大変なお仕事だろうけど、毎日遣り甲斐を持ってお勤めしてるんだろう。なんか良い。あと若い人ってやっぱり肌がめちゃくちゃきれいだな。私たちの頃よりスキンケアについての意識や情報量も違ってきてるだろうし、みんなつやつやぴかぴかしてる。とても良い。
 対する入院患者さんは、やはり高齢者の方が多い。私でもまだまだ若いと言えるほどだろう。同室のお一人は90歳だと言っていた。他の方も多分70代か80代。ずっと寝ているから腰が痛いと独り言のように言ってみたり、血圧が高いから薬を飲み忘れたんじゃないですか、飲んでね、と看護師さんが声掛けしていたり。
 もう少し前の自分だったら他人事だと思っていただろうけど、今は、いつか自分もそうなるんだろうなと勉強のつもりで見聞させてもらっている。
 入院のしおりに「室内履き(スリッパ不可)」と書かれていたので、とりあえずジム用シューズを持ってきた。けれど靴ベラがないから履くのが面倒で、トイレくらいなら踵まで履かずに爪先立ちで歩いていた。別にスリッパで良かったなと思ったのだけど、これだっておそらくある程度以上の年齢の人を想定しての注意書きだろう。どうしても歳を取ったら足元がおぼつかなくなったり滑って転んだりする危険性がある。
 今は毎日歩くようにしているけど、それでもいつか加齢の影響が運動の効果を上回る時が来るんだろうか。70代はぎりぎり大丈夫だとしても、80代くらいになったらしんどいのだろうか。私自身はいつまでジムに通い続けることができるだろうか。というよりジムの方が経営悪化などを理由に撤退する可能性だってある。この前ジムの月会費値上げの連絡が来ていたけど、ちゃんと払うから少しでも長く存在していてほしい。

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