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ドライブ・マイ・カー(女のいない男たち) 村上春樹

私にとって初めての村上春樹の作品だった。
初めてが短編集というのは普通ではないのかもしれないけれど、先入観で村上春樹は理解し難い、不思議な作風だと認識していたからこそ、短い話から読み、自分と合うかどうかを判断しようと思ったからだ。
もしも「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の上巻を買って読んでみてさっぱりわからなかったら、なんだか損した気分になる気がした。
高校生の私には、千数百円は気軽に冒険できる金額ではない。
でも今は、冒険しても良かったのかもしれないと思っている。
面白かった。
「僕らはそんな細かいピンポイントのレベルで行動しているわけじゃないから。」
主人公である家福(かふく)から、運転手であるみさきへ向けられた言葉だ。
私達は他人の行動や言葉に意味を見出し、何かと理由をつけようとするが、他人の行動に自分が納得できる理由が、いちいち無いといけないのだろうか。
他人の心は常に私に理解できるものではないと思う。
私達にできるのは、せいぜい自分の心と向き合うこと、そして他人がそうするのを見守ってやることだけなのではないか。
でも結局はその理解できないはずのないことを知ろうとする。相手と親しければ親しいだけ、理解しようとしてしまう。
けれど私達には、相手のことを知ろうとせず、相手も自分のことを知ろうとしない、そんな関係の人間が必ず必要になるときが来る。
作中で言う、「演技」をするのに疲れてしまったときだ。
そして演技をやめられる瞬間が、家福には必要だった。
家福にとってはそれが、みさきという存在だったのではないかと、私は思う。


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