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イエスタデイ(女のいない男たち) 村上春樹

「人生とはそんなつるっとした、ひっかかりのない、ここちの良いものであってもええのんか」
贅沢な悩みだと思う。
悩みとまではいかない、ぼんやりとした概念だっただけなのかもしれない。
けれど木樽はそんな思いを捨てきることができず、二年間かあるいはもっと長い時間を費やした早稲田の受験を蹴ってまで、(と言っても努力はしていなかったから、彼の中で大学受験というものがどれほど大きな位置を占めていたかはわからない)デンバーで寿司職人をしているのだろう。
普通に日本で生きていたときの木樽からすれば、確かに尖っているし、引っかかる所だらけの人生だろう。
けれどもし、好奇心と探究心と可能性が人間に年輪を残すというのなら、彼の人生には深い年輪が残るはずだ。
その年輪がただ年をとった証明になるか、そうでないかは、明日見る夢次第だけれど。

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