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ビジネスセクターから転職した3人が素朴な4つの質問に答えてくれた

社会課題を解決するソーシャルセクターの仕事。「働きたい」と意欲が湧いたのはいいけれど、実際のところわからないことばかりという人も多いようです。

自分の経験やスキルは求められているのか役に立つのか、働き方や仕事の内容は?入社後のギャップは大きい?など、そんな素朴な疑問に転職を経験した3人の方が答えます。

ご協力いただいたのは、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン ファンドレイジングチームリーダーの高田 絵梨さん、株式会社KURKKU FIELDS 教育・体験事業担当の佐藤 剛さんと岩佐 直美さんです。

みなさん、営利企業→ソーシャルベンチャーへの転職を経験されています。DRIVEキャリアでも、同じキャリアチェンジでのご相談を受けることが多いので、今回、最も多い4つの質問をぶつけてみました!

Q1:ソーシャルセクターへの転職を考えたきっかけは?


高田さん:
新卒から入社した前職で、いつからか「このままでいいのだろうか」という思いをもつようになりました。一社のみのキャリアに不安を持っていたのと、「今までと違う手ごたえを感じたい」と思い始めたんです。それが、転職を考えるようになったきっかけです。

転職先を探そうとしたとき、営利企業で前職以上の環境や条件で働けるイメージができず、「非営利組織だとどうなんだろう」と調べ始めたことでソーシャルセクターの仕事に関心をもつようになりました。

教育系に絞ったのは、幼少期の思い出が大きく影響しています。小学生の頃、転校先でクラスになじめなかったときに始めた習い事をきっかけに学校でも楽しく過ごせるようになったんです。このことは、学校以外に居場所があることで自分の世界が広がった経験になりました。

また、教育系の団体のなかでも、チャンス・フォー・チルドレンは塾や習い事に活用できる教育クーポンが届けられる仕組みが確立されていることに魅力を感じました。団体の雰囲気も自分に合っていると感じてエントリーしました。

岩佐さん:
前職では、デジタルアートなど子ども向けの体験事業を立ち上げから担当していました。5年ほどイチからものづくりをする楽しさを実感していたなかで、大きな施設での運営をまかされるようになって。そこでは全体的に「失敗できない」というプレッシャーが大きく、クレームが出ないようにと保守的な体制に変わっていきました。

自分の働きかけだけでは以前のような積極的な運営は実現できないと思ったときに転職を考えました。KURKKU FIELDSは、エージェントからの紹介です。ベンチャーで、子どもたちに体験を届けるという軸は同じだったので違う世界に飛び込んだという感覚はあまりありませんでした。

Q2:前職とのギャップは?大きく違うと感じることはありますか?


高田さん:
違いを感じるかどうかは、営利企業か非営利団体かに限らず、自分が置かれている状況によっても変わってくると思います。私自身は、前職では顧客対応をしていましたが、今では寄付者の方の対応業務をしているなかで、マナーや気遣いなど基本的なスキルは活かされていると感じています。仕事のやり方や大事にしたいところは、自分で最初に基本形をつくっておくと様々な面で活かせると思います。

大きな違いでいうと、今の職場では自分が意志をもって周りに働きかけていくことが必要なので、最初は戸惑いを感じました。前職では、会社で決められたルールなどをもとに上司に意思決定を求めて稟議にあげることが当たり前だったんです。それが現職では、自分がまわりとどう動けば期待以上の成果につながるかを考えながら仕事を進めないといけません。その分、成果を出せたときの達成感は大きいと思います。

岩佐さん:
私は暮らしが大きく変わりました。KURKKU FIELDSは千葉県木更津市の大きな敷地を開拓してつくっているため、働く人たちは近辺に住むことが条件の一つになっているのですが、私も引っ越しをして車で通勤しています。とても暮らしやすい環境で気に入っています。

一緒に働く人たちも農業、食など専門性の高い人たちが集まって個性豊かです。社員数は30名ほどですが、パートタイムの方をあわせると50人以上いて、みなさん個性的な人たちばかりなのでコミュニケーションも面白くなりました。

佐藤さん:
やりがいについては、ソーシャルセクターの仕事は成果を実感しやすいかもしれません。大きな企業だとユーザーの方やお客様たちとの距離を感じる場合もありますが、KURKKU FIELDSでは、体験事業を通して、子どもたちが楽しんでくれているかどうかを間近に感じられるし反応も早いので、やりがいにつながっていると思います。

高田さん:
視野が広くなったり、視座が高くなったりするのを感じます。人との関わり方の違いからそう感じるのかもしれません。チャンス・フォー・チルドレンの常勤の職員は、仙台、東京、大阪をあわせて13名と小さな所帯ですが、「チームで仕事をする」と一言で言っても、関係性のつくり方が企業とは違うかもしれないですね。

例えば、全員が「多様な学びを すべての子どもに」というミッション実現に向かって、同じ方向を見ながら事業を創り運営していると実感できている感触がすごくあります自分も自然と前向きな考えや行動が身についているのを感じます

Q3:新卒でソーシャルセクターに就職することは勧めますか?


高田さん:
もしソーシャルセクターの世界に飛び込みたいと思う気持ちがあるなら、飛び込んでみてもいいのかなと思います。やりたいことがあるなら民間企業かソーシャルセクターかどうかは関係なく、納得できるように挑戦してみてもいいのではないでしょうか。

ただ、チャンス・フォー・チルドレンでは新卒採用は行っていないのが現状です。理由は、職員が13人と少ないなかで、新入社員をイチから育てる体制が整っているとはいいにくい面があるからです。このことは団体にとっても課題になっています。もし「ソーシャルセクターで働いてみたい」と思ったら、興味を持った団体に新卒採用者をしっかりと育てていく環境が整っているか確認したほうがいいと思います。

岩佐さん:
自分がどう仕事をしていきたいかだと思います。研修制度のしっかりとした大きな企業で仕事のやり方を学びながら着実にキャリアアップしていきたいのか、規模は小さくても裁量のある仕事を任せてもらいながら成長していきたいのか。私はどちらも魅力的だと思います。

佐藤さん:
「誰かに勧められたから」する選択はやめた方がいいかも。自分がやりたいと思った仕事で自分が納得したキャリアを重ねることができればそうしてほしいですね。

また、社会課題の解決については、営利企業でも会社の責任をまっとうする意味で本腰を入れて取り組むことが世の中から求められるようになっているのを感じます。営利企業とソーシャルセクターの垣根がなくなってきているようにも思うので、営利企業かソーシャルセクターかのどちらかではなく、興味のある仕事でどう社会貢献するかを考えるのもいいのかなと思います。

Q4:ソーシャルセクターは実力主義?キャリアは必要ですか?


高田さん:
お互いにとって、採用でミスマッチがあってはいけないという責任感を持って取り組んでいます。だから、お互いの考え方を確認しあえるように面接では対話を大事にしています。

佐藤さん:
これまでを振り返ると、採用を見送ったときは、「うちではなく別の団体や組織のほうがその人の良さが活きてくるかもしれない」といった理由が多いと思います。相性が良いかどうかは判断ポイントとして大きく、お互いが良い面を活かしあいながら働ける関係がつくれるといいなと思います。

<ご回答いただいた3名のプロフィール>
高田絵梨さん/公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン ファンドレイジングチームリーダー
大学卒業後、大手不動産会社に入社。営業や採用・研修、ダイバーシティ推進関係の業務を担当する。2020年4月より東京事務局にて現職。広報・ファンドレイジング担当として資金調達業務に従事している。

岩佐直美さん/株式会社KURKKU FIELDS 教育・体験事業担当
前職では、共創をコンセプトにしたデジタルアートの遊園地運営業務に約5年半従事。2021年、KURKKU FIELDS入社。主に中高生向け教育プログラムの運営、一般の来場者向けに食体験の提供を担当している。

佐藤 剛さん/株式会社KURKKU FIELDS 教育・体験事業担当
幼少期から家族でアウトドア活動に勤しみ、 19歳の時にカヌーポロで日本優勝。大学卒業後は奄美大島でのネイチャーガイドやパタゴニアでの勤務経験を経てKURKKU FIELDSへ。新施設コクーンの担当を予定しながら、場内の体験プログラムや各所のサポートを担当している。

(本記事は、NPO法人ETIC.主催のイベント「未来をつくる仕事に挑む」より一部抜粋しています)


行動するきっかけをつくる「DRIVEメディア」では、DRIVEキャリアのコーディネーターたちがキャリア相談でよくいただく質問やイベントをもとにした記事も公開しています。


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文・編集:高梨真紀

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